「〇〇界隈」という言い回しがある。

何の界隈かは置いといて、この言い回しをする奴の大半は「インターネット界隈」なので「たまには画面の外の話をしろよ」というキレ方をしたくない人はこの界隈から距離を置くことをお勧めする。

共通点や特定の趣味、話題を持つコミュニティを差す言葉だが、「みかん界隈」だと範囲が広すぎて、みかん好きが集まる界隈だと思って参加したら、自分以外全員みかんだったという事故も起こり得る。

よって最近は「みかん食べ界隈」など、ラノベのタイトルのように界隈名だけで内容がわかる親切界隈が増えている印象だ。

風呂に入れ、歯も磨いてあったかくして寝ろ

去年とある界隈が注目を集めた、それが「風呂キャンセル界隈」だ。

簡単に言えば「風呂に入らない人たち」のことである。

しかし「キャンセル」というからには、入る予定はあったということだ。それを面倒くさい、など諸般の理由により入らず終いなのが風呂キャンセル界隈であり、最初から鉄の意志で入らない人は違うのではないかと思われる。

この言い回しが流行したことによりネット上で、実は風呂キャン界隈の住人であることや、スポット風呂キャン報告をする人が以前より増えたよう見える。

だが「風呂キャンセル界隈」という言葉が流行ったことで、空前の風呂入らないブームが来たというわけではないと思う。

おそらく以前から風呂に入らない層は存在したのだ。

しかし、それをカミングアウトして良いことなど何もなかった。

コロナ全盛期であればそう宣言することにより、周囲からのソーシャルディスタンスが1.5割増になり感染率低下を期待できたが今はそれほどでもない。

それが「風呂キャンセル界隈」という、マイルドな、何だったら小粋な言い方が生まれたことにより、風呂に入っていないことをカジュアルに報告する人が増えたのではないかと思う。

実際、これだけ潜伏風呂キャン勢がいたのに、連日異臭騒ぎや、犬が吠えだして止まらない現象が起きてないことを見ると、季節や行動にもよるが、1日キャンセルした程度では自他とも害を及ぼすレベルにはならないのだと思う。

窃盗を「万引き」と言わないで

しかし、言い方をカジュアルにすることにより、問題を矮小化するムーブを危険視する声もある。

「パパ活」も、ヌン活と同レベルの言葉を使うから午後の紅茶感覚で手を出す女子が増えるのであり、これが「売春」だったらもっと躊躇するだろうし、いただき女子りりちゃんも罪状に基づき「詐欺ほう女子りりちゃん」と名乗っていたら、マニュアルを買おうとする人間も激減しただろう。

また「いじめ」もかなり前から「暴行」や「恐喝」などの正しい表現をして、犯罪であることを周知しないから、遊び半分でやる奴が減らないと指摘されている。

同じように「風呂キャンセル界隈」という言葉に対しても「ただの『不潔』をライフスタイル風に堂々と言うな、恥ずかしくないのか」という怒られが発生していた。

ちなみに「怒られが発生した」に対しても「お前がしでかしたことで怒られているのに、何もしてないのに怒りが勝手に生えてきたみたいな言い方をするな」という怒られが発生するので使用には注意した方がいい。

確かに、脱税疑惑議員たちのことを「納税キャンセル界隈の人たちなら仕方がない」と思える国民は少数派だろう。言い方を変えれば受け入れられるというわけでもない。

納税キャンセル界隈も実は病気の前兆かもしれない

また、界隈を名乗る者が増えたことにより「その程度で界隈の者を名乗らないで欲しい」という界隈警察界隈も形成される。

  • 「実は俺、睡眠5時間のショートスリーパーなんだよね」『僕は毎日3時間しか寝てないなぁ』「いや俺本当は最近は1時間睡眠だし」

    「実は俺、睡眠5時間のショートスリーパーなんだよね」『僕は毎日3時間しか寝てないなぁ』「いや俺本当は最近は1時間睡眠だし」

不潔レベルで争ってどうすると思うかもしれないが、日本は謙遜の国なので「下を競い合う文化」が存在し、ある意味上を取り合うマウントよりも熾烈な戦いが繰り広げられている。

実際この連載の担当編集も、朝晩普通に食って、昼食だけおにぎり1個という奴が『食事キャンセル界隈』を名乗っていたことに謎の怒りを発生させていたので、風呂キャンセル界隈でもすでに「何を勘違いしたのか、シャワー派の奴が風呂キャンを自称している」「風呂が機能している内は風呂キャンではない、完全に物置化してから言ってくれ」などの選民が行われているのかもしれない。

基本的にネタとして使われているキャンセル界隈ではあるが、風呂に入らない、はみがきをしないなどのセルフネグレクトは、うつなどの前兆でもある、それをキャンセル界隈として深刻に捉えないことにより重大な病(ビョウ)を見逃すという恐れもあるので軽く見すぎも禁物だ。

ただし、比較対象がないゆえに自分の異常性に気づかないということもある。

みんなが風呂状況を明かしたことにより、自分が界隈の中でもレべチだとわかり病(ビョウ)に気づいた人もいるかもしれない。

どちらにしても「意外と風呂入ってない奴がいる」ということが可視化された風呂キャンブームだが、周囲の「全然勉強してない」を信じた結果、マジで全然勉強してないのは自分だけだったということもある

ネット上の「風呂全然入ってないわ」を鵜呑みにし過ぎるのも危険なのだ。