なんとNokiaの名前の駅がある

Nokiaの社名発祥の町である「ノキア」。市内にはフィンランド国鉄が東西に路線を通しているが、このノキアに位置する駅としてその名もずばりの「ノキア駅」が存在するのだ。駅そのものはNokiaとは直接関係無いのだが、Nokiaという名前のついた駅は携帯電話ファン、Nokiaファンならぜひ一度は訪れてみたいもの。今回のタンペレ訪問の最後のお楽しみはこのノキア駅訪問なのである。 ノキア駅はタンペレ駅の次の駅。列車で向かうのが簡単そうだった。フィンランド国鉄はインターネットで時刻表検索や切符の予約ができるので、さっそくタンペレからノキアへの列車を調べてみたのだが、ノキア駅へ向かう列車は1日わずか6本だけだった……。しかもノキア駅へ列車で向かい、折り返すには朝の列車を除いて約1時間待たないと戻りの列車がやってこない。

フィンランド国鉄Webページ。英語にも対応している

列車での訪問を断念し、車でノキア駅へ向かう

「世界最大の携帯電話メーカー、Nokiaの名前を冠するくらいだからさぞかし立派な駅なのだろう」と期待に胸を膨らませていたノキア駅は、実はローカル駅だったのだ。これが夏の訪問ならば北欧の小駅でのんびりと列車を待つのもいいだろうが、今日はマイナス20度以下の極寒の真冬。駅で列車を待つことはおそらく無理だろう。ということでノキア駅の訪問も車を利用することにした。

ノキア駅は前回の記事で訪問したNokiaの工場跡から車で10分も走れば到着する。ローカル駅ということもあり、道路に「ノキア駅入り口」といった看板は見当たらない。駅のある場所へ訪れると、駐車場のようなスペースがあるものの大雪に覆われてどこが駅の入り口かよくわからない。フィンランド国鉄の駅はターミナルのヘルシンキ中央駅を含め出入りは自由なので、車を降りて線路のある方向へ向かってみることにした。

建物の横を通って開けた土地に出ると、そこはすでにノキア駅のホームだった。本当に小さな駅で、ホームは長いものの1面のみ。列車本数が少ないせいか、線路の間も雪が積もっていた。そしてホームの上の建物を見ると、そこには「Nokia」とここがノキア駅であることを表す看板が取り付けられていた。「この建物が駅舎なのだろうか? 」日曜日に訪れたこともあって建物の入り口は閉まっており、中を見ても駅のような感じではない。どこかの事務所がこの建物を使っているような感じである。

これがノキア駅だ!! 筆者と同行のM氏以外だれもいない

駅の建物には「Nokia」の表示がある

Nokiaファン的にはノキア駅の切符など買いたいところだが、1日の列車が6往復では駅では発券せず、おそらく車内精算なのだろう。また列車に乗っていても、ノキア駅の手前で「次はー、ノキアー、ノキアー」といった車内放送もヨーロッパだけに無さそうだ……。いずれにせよ真冬の列車の来ないノキア駅は、周りに動くものも何も無い静かな駅であった。

さて駅のホームを端まで歩いてみると、今度は青い下地に白い文字で「Nokia」と書かれた駅名表示板を発見した!! この色の組み合わせ、これはやはりNokiaに合わせてなのだろうか? だがあとで調べてみたところフィンランド国鉄の駅はみなこの色を使っているのであった。まぁNokiaのコーポレートカラーとフィンランド国鉄の駅名票の色が同じブルーというのも、同じフィンランドの企業として自然のものなのかもしれない。

駅の先のほうへ進んでみよう

青地に白文字の「Nokia」の駅名票があった

ホームは1面だけなので、駅名票は左右両方に向けて取り付けてある

ノキア駅の時刻表。1日わずか6往復しか列車が来ない

何も無いノキア駅。写真を撮ったり動画を撮影したりと一通り楽しんだら、他にやることがなくなってしまった……。何もせずホームに立っていると5分も経たないうちに身体の芯から冷えてきた。上半身は下着やコートを入れて5枚、下も2枚重ね、靴下を2重にして手袋をしているのにだ。「このまま待っていては身体が凍ってしまう、限界なのでもう戻ろう!」と思っていると、いつのまにかホームには数名の乗客が現れているではないか。そろそろ列車が到着する時間のようだ。そこでノキア駅に入ってくる列車の動画でも撮影しようとそのままそこで待ってみることにした。

ところが朝からの列車ダイヤの乱れもあってか、時間になっても列車が現れない。だが、ホームで列車を待っているフィンランド人の方々はじっとうつむいたまま列車を待っている。真冬の屋外の吹きさらしの中、数十分以上も立っていられるとは我々と寒さへの耐久力が違うのだろう。

乗客が集まってきた。右側の女性はかなり着込んでいる

ホームにあるのは待合室ではなく、降雪を避けるだけの場所だ

だが、我慢は限界に達してしまった……。寒さに耐えられず、後ろ髪を引かれる思いでノキア駅を後にすることにしたのだ。車の中に戻っても、身体の震えは全く止まらず手袋をはめた指先が思い通りに動くまで数分かかった。

指先がうまく動かないこんな状況で携帯に電話がかかってきたらどうしよう? そう思うとNokiaのシンプルなストレート型端末ならば手袋をはめた手でもすぐに取り出せ、しかも余計な操作もなくすぐに電話に出られるような気がしてきた。Nokiaは頑なに端末スタイルのメインストリームをストレート型にしているが、過酷な自然環境の下ではこの形状が一番適しているのかもしれない。

ノキアの工場跡地、研究所、そしてノキア駅――タンペレにはNokiaにちなんだ訪問先がいくつもあった。次回はいよいよNokiaの本社に訪問する。