凸版印刷は1月21日、約5万人の従業員とその家族を対象とした社内“e”運動会「TOPPAN eSPORTS FESTIVAL2021」を開催しました。はたして、どんなイベントなのでしょう。取材に行ってきました。

  • 「TOPPAN eSPORTS FESTIVAL2021」の様子

従来同社では、社員やその家族が一堂に介する社内運動会「TOPPAN SPORTS FESTIVAL」を2年に一度開催していました。しかし、今のコロナ禍では社員を集めるのが難しいため、家庭や事業所、支店から参加可能なeスポーツを中心としたオンラインイベントとして開催。「TOPPAN SPORTS FESTIVAL」は2010年から開催されていますが、2019年が台風で中止になったため、今回は4年ぶりです。

凸版印刷は全国のみならず、世界に支社や営業所、工場があります。そのため、オフラインの「TOPPAN SPORTS FESTIVAL」の場合、全社員の参加はなかなか難しいものがありました。しかし、オンラインになったことで、例年以上の数の従業員やその家族の参加に期待できます。

  • 「TOPPAN eSPORTS FESTIVAL」を推進した奥村英雄氏と原田香織氏による記者会見も行われました。凸版印刷は、社会人eスポーツリーグ「AFTER 6 LEAGUE」を運営していたり、企業向けeスポーツ交流イベント「eSPORTS TRINITY」を主催したりと、eスポーツの取り組みにも力を入れている企業でもあります。今回のイベント運営ノウハウを活かし、さまざまな企業のイベント運営や社内コミュニケーション施策なども積極的に支援していくとのことです

「TOPPAN eSPORTS FESTIVAL2021」では、3つのイベントが用意されていました。それぞれをYouTubeのクローズチャンネルで従業員やその家族が視聴します。

YouTubeに用意されていたのは『ストリートファイターV CE』のトーナメントを配信する「SFチャンネル」、『eFootball ウイニングイレブン 2021 SEASON UPDATE(ウイニングイレブン 2021)』のトーナメントを配信する「WEチャンネル」、アートギャラリーやTOPPANクイズ王決定戦、シャベリ場トークライブなどを配信する「エンタメチャンネル」の3つ。eスポーツやゲームに興味がない人でも楽しめるようなコンテンツも配信していました。

  • 開会の挨拶にリモートで登壇する代表取締役社長麿秀晴氏

『ストリートファイターV CE』では、事前に行われた予選にて各地区48チームから勝ち抜いた16チームが本大会へ出場しています。チーム編成は各事業部の役員もしくは幹部1名を含む3名1チーム。星取り形式の団体戦を行い、2勝したチームの勝利となります。先鋒・中堅で連勝し、勝敗が決した場合でも大将戦は行われます。

また、社内イベントではあるものの、実況にキャスターのコーリー氏、解説にプロゲーマーのふ~ど選手、アシスタントにグラビアアイドルの倉持由香さんを招くという豪華なキャストで進行されました。

  • 実況のコーリー氏

  • 解説のふ~ど選手

  • アシスタントの倉持由香さん

勝ち抜いたチームには、思わぬ大物の姿も。朝霞チームに、ウメハラ選手が憧れたといわれる『ストリートファイターII』のレジェンドプレイヤー太刀川選手が参加していたのです。

太刀川選手は『ストII’』の全国大会で優勝した経験のある実力者。『スーパーストリートファイターII X』を最後に『ストリートファイター』シリーズはほとんどプレイしていないそうですが、今大会に向け、1カ月間特訓しての参加です。

朝霞チームは、その太刀川選手の活躍もあり、本戦では決勝まで進出。しかし、3年みっちりプレイしていたエース池田選手のアビゲイルが太刀川選手のリュウを退け、小石川Bチームが優勝しました。

役員や幹部のプレイヤーは、この大会のために『ストリートファイターV CE』をプレイしはじめた人ばかりなのか、チームメイトの部下に支えられながらプレイしているのが印象的でした。

  • 試合前に練習をする鈴木本部長(写真左)と小城事業部長(写真右)

  • 事業部長が対戦しているときは、池田選手がつきっきりでアドバイスを送っていました。立場が逆転して教える様子は、『釣りバカ日誌』のスーさん、ハマちゃんのよう

『ウイニングイレブン 2021』では、実況に田口尚平アナウンサー、解説にプロゲーマーのらんこむ選手が登壇します。

『ストリートファイターV CE』部門もそうでしたが、プロシーンで活躍するキャスターやプロ選手に実況解説をしてもらえるのは、滅多にない機会。それだけでも気持ちが上がるのではないでしょうか。草野球の解説に現役トッププレイヤーが来てくれるようなものです。

  • 実況の田口尚平アナウンサー

  • 解説のらんこむ選手

『ウイニングイレブン 2021』も、事前に行われた予選にて各地区48チームから勝ち残った16チームが本戦に参加します。3v3のチーム戦で試合を行い、1勝先取のトーナメント戦を行いました。

決勝はトッパンエレクトロニクスプロダクツ滋賀工場の滋賀チームと生活・産業事業本部の秋葉原チームの一戦。2-0で秋葉原チームを下した滋賀チームが優勝を飾りました。

  • 『ウイニングイレブン 2021』の本会場には、試合の様子を配信するプロジェクターを設置

  • 3人のプレイヤーで11人のキャラクターを操作するため、個人の腕前以上にチームワークがカギとなりました

エンタメチャンネルでは、世界中の従業員とその家族が参加できるクイズ大会などを実施。また、トッパンのグループ会社である芸術造形研究所が実施したオンラインアートセッションの作品などを映像化した「HAND IN HAND」、自宅から親子で参加できる実験教室「サイエンスアカデミー」、初代バチェロレッテを務めた福田萌子さんのトークライブ「おうち時間を有意義に過ごそう」、2021年卒内定者による動画メッセージ「つながろう」なども配信しました。

  • 凸版印刷に関するクイズの正答数とその速さを競い合ったクイズ大会

  • オンラインアートセッションの作品を発表した「HAND IN HAND」

今回の「TOPPAN eSPORTS FESTIVAL 2021」は、初のオンライン開催で、ある意味イレギュラーでしたが、代替案で終わらないほどの成果を残したのではないでしょうか。

オンライン化したことにより、開催地から離れたところに住んでいる社員も参加できました。実際、上海の社員とのエキシビションマッチが行えたのは、オンラインならではの試みです。

2017年に開催した「TOPPAN SPORTS FESTIVAL」は4000人が参加したそうですが、今回の配信の視聴回数は、SFチャンネルが8000回超え、WEチャンネルが6500回超え、エンタメチャンネルが3800回超えを記録。2017年の参加者数をはるかに超えているでしょう。

  • 上海凸版の精鋭を集めた海外代表と国内の凸版選抜である国内代表による『ストリートファイターV CE』のエキシビションマッチも行われました

また、全国の従業員が視聴したことにより、参加した従業員の同期や元上司などから連絡がひっきりなし入り、ちょっとした同窓会的な様相を見せていたようです。

これもオンラインで対戦できるeスポーツならではの特徴。各営業所や支店、工場と映像がつながるようにした効果と言えるでしょう。

なお、今回はイベント運営において、eスポーツ大会などを手がけるウェルプレイドの技術協力を受けています。そのため、営業所や支店のゲーム環境、通信環境などもしっかり整備されており、画面の切り替えはテレビ中継のようにスムーズ。メイン会場の東京・小石川と各地方との会話も、通信ラグをほとんど感じさせませんでした。

  • 15拠点(小石川のみ2チーム)と中継がつながっており、数年ぶりに顔を合わせる従業員も。視聴のみで参加した人も久々の同期の姿を懐かしんでいました

今回はいち企業の運動会、eスポーツイベントとしての開催でしたが、このノウハウを用いることで、地方都市をつなぎ、それぞれが地元にいながら、オフラインのように対戦できるようになるでしょう。それにより、選手やチームが都市部に集まらなくてもeスポーツイベントを開催できるようになるため、ゆくゆくは地元密着のチームも登場するかもしれません。スポーツでいえば、「ホーム&アウェイ方式」を「ホーム&ホーム方式」のように対戦できるわけです。

もちろん、全国に営業所や支店を設けている企業がこういったイベントをすることは、エポックメイキングとしての意義もあります。一方的な配信ではなく、各所と双方向でつながることで、オフラインで開催しているような感覚でイベントを開催できるでしょう。eスポーツのみならず、カラオケ大会でもなんでも、すべてリモートで行えるようになるのではないでしょうか。

いつもの「TOPPAN SPORTS FESTIVAL」は数千人規模の大きな会場を借りる必要があり、そこに一番のコストがかかっていたそうです。今回の「TOPPAN eSPORTS FESTIVAL2021」は会場コストがかからない代わりに、通信環境に同程度のコストをかけたという話でした。

なので、オンラインになったからといってコストダウンをはかれたわけではありませんが、その分、リアルで開催するのとは別の利点が多くあったのも事実。オンラインでの開催には十分な価値があったように感じます。

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