2026年9月4日から6日にかけて、タクティカルFPSゲーム『VALORANT』の国際リーグ「VALORANT Champions Tour Pacific 2026」(以下、VCT Pacific)のStage 2 Finalsが、韓国の釜山(プサン)にて開催されました。
今シーズンのVCT Pacificを締めくくるStage 2 Finalsでは、現行の体制におけるPacific最後の王座と、世界大会「VALORANT Champions」(以下、Champions)への出場権をかけて、トップ4チームが激突。熱戦の末に、「Global Esports」が優勝を手にしました。
『VALORANT』の公式大会であるVCTは、2023年よりリーグ形式で開催されてきましたが、来シーズンより大会形式が大きく変わることが発表されています。4年にわたるVCT Pacificの集大成となった、最終3日間の現地の模様をお届けします。
ソウルから舞台を移し、釜山の開放感あふれる会場へ
VCT Pacificの試合は主に、ソウルにある「Sangam SOOP Colosseum」を会場として開催されてきました。韓国の配信プラットフォーム「SOOP」が運営する常設eスポーツ専用スタジアムで、ビル内にある約300席のコンパクトな会場です。今回は、そこから釜山へと舞台を移し、Stage 2のグランドファイナルを含む最終3日間の試合が開催されました。
釜山は韓国の南部にあり、ソウルに次いで2番目に大きな都市。日本からはソウルよりも近く、福岡からであればたった1時間のフライトで着いてしまう距離です。海が近い釜山は、韓国最大の貿易都市でもあり、海辺に高層ビルが立ち並ぶ光景が印象的です。
そんな釜山で会場に選ばれたのは、野球場をはじめとする競技場が多数集まったエリアにある「社稷(サジク)室内体育館」。韓国のプロバスケットボールチームの本拠地になっている、多目的体育館です。2025年には『League of Legends』の韓国リーグにおける、国際大会への出場権をかけたトーナメント「Road to MSI」の会場にもなっていました。
会場に到着すると、周辺の屋外にさまざまなコンテンツが用意されています。試合開始は17時と遅めでしたが、屋外のイベントゾーンは昼12時からオープン。参加型のアクティビティや特典がもらえるブース、スポンサー企業ブースなどが開放的な屋外に立ち並び、試合前に多くのファンが楽しんでいました。
選手トレカが大人気、交換で生まれるファン交流も
屋外に並んだブースのなかでも、特に初日から人だかりができていたのは、VCT Pacific公式トレーディングカードを販売する「Bault」のブース。今回の釜山会場で販売開始とあって、大きな注目を集めていました。10枚入り1パックが9,000ウォン(約1,030円)、20パック入りボックスが180,000ウォン(約20,600円)です。
この公式トレカは、VCT Pacificに出場する選手たちがカード化されており、全部で約1600種類。特別なデザインのレアカードのほか、直筆サイン入りのスペシャルカードまで封入されています。「Bault」のブースでは、お目当てのチームや選手のカードを求めるファンたちが、交換のために声をかけあっていました。
私もパックを購入してメディアルームで開封してみたところ、一緒に開封していたRiot Games Japanの担当者が「Nongshim RedForce」Xross選手のサイン入りカードをゲット。「Bault」のブースに戻ると、中国語を話す女性の方がXross選手のファンだということで、彼女が持っていた「DetonatioN FocusMe」Vorzコーチのサイン入りカードと交換することになりました。
その後、SNSでこの話題について投稿したところ、カードを交換した女性にも届き、「大切にします!」とポストしてくれました。個人的には、ランダム商品にあまり良いイメージを持っていなかったのですが、交換をきっかけに国を越えたファン同士の交流が生まれていて、こうした側面の魅力もあるのだなと実感しました。
豪華で凝ったステージ演出と破格な安さのチケット
会場は、もともと360度に客席があるアリーナですが、それを半分に区切ってステージと客席が設けられていました。ステージには、これまで戦ってきた「Sangam SOOP Colosseum」の舞台を再現するように、両チームが向かい合う円形の選手席が配置されています。
モニターをふんだんに使った横長のステージは、どの客席からも近く、かなり見やすさを意識してつくられていると感じました。それだけでなく、入場のための花道やセンターステージが設けられ、入場やインタビューなどのタイミングで、より間近に選手の姿を見ることができるように工夫されています。
花道の両サイドにはファンが待機しており、選手たちがハイタッチしながら入場。Tier 1チケット(1階フロア席)の一部区画に座っているファンが、これに参加することができました。このTier 1チケットは、なんと35,000ウォン(約4,000円)という安さ。最終日のグランドファイナルのみ値段が上がりますが、それでも45,000ウォン(約5,200円)です。
この価格を実現している大きな理由として、ソウルではなく釜山で開催することで、会場費を大幅に抑えていることが考えられます。特に今回は釜山市がスポンサーに入っており、地方開催の誘致という背景もありそうです。日本で考えれば、3年連続で札幌にて開催されている『Apex Legends』の世界大会が近い事例だといえるでしょう。
ゲーム中はスパイクと連動した緊張感のある照明、タイムアウト中は残り時間とともに減っていく照明など、とても凝った細やかな演出が行われます。会場内をドローンカメラが飛びまわり、配信にも動きのある映像が届けられました。これらの多様な演出には相当な機材が投入されているわけですが、韓国では機材費が日本よりかなり抑えられる事情もあるようです。
スパイクと連動したステージ演出
— 綾本ゆかり / Yukari Ayamoto (@ayayuka99) September 5, 2026
設置から起爆まで pic.twitter.com/74bHBIxdVh
世界大会への出場チームが決定、決勝の前夜祭も
Finalsに出場したのは、「Nongshim RedForce」、「Global Esports」、「VARREL」、「T1」の4チーム。日本チームは、「DetonatioN FocusMe」と「ZETA DIVISION」、そして国内大会の「VALORANT Challengers Japan」で優勝した「QT DIG∞」がStage 2に挑みましたが、残念ながらプレイオフ進出は叶いませんでした。
Finals出場チームのうち、「Global Esports」はインドを拠点とする多国籍チームですが、それ以外の3チームはすべて韓国人チーム。「Global Esports」には、韓国人のUdoTan選手が所属していることを考えれば、実にトップ4チームの出場選手20人のうち、16人が韓国人となっていました。
「VARREL」は選手やコーチがすべて韓国人で構成されるチームですが、日本が運営するチームです。そのため、「VARREL」に所属するストリーマーの象先輩や、最近加入を発表したマスコットキャラの「ちぃたん☆」などが、日本から応援に駆けつけていました。
上海で開催されるChampionsへの出場権争いは、シーズンを通して獲得できるチャンピオンシップポイントによって、すでに「Paper Rex」と「Nongshim RedForce」が確定。残り2枠をかけた戦いになっていました。「VARREL」は、グランドファイナルまで勝ち進めば出場権獲得という状況でしたが、初日にロワーで「T1」に0-2で敗れて敗退。これにより、「T1」と「Global Esports」が出場権を獲得しました。
なお、2日目の試合終了後には、グランドファイナルに向けた前夜祭として「VALORANT SOUND」という音楽イベントも別会場にて行われました。3名のアーティストが出演し、トリを飾ったDJのStainsは、『VALORANT』の象徴的なテーマ曲をリミックスした楽曲をパフォーマンス。各エージェントにフォーカスした多彩なビジュアル演出もあり、小規模な会場で披露するにはもったいないほどのクオリティでした。
劇的な逆転勝利で「Global Esports」が優勝に輝く
いよいよ迎えたグランドファイナルでは、「Nongshim RedForce」と「Global Esports」が対決。オープニングを待っていると、後ろの席から韓国ファン同士の「もともとGEはこんなチームじゃなかったのに……」という会話が聞こえてきました。
「Global Esports」は昨年、最下位に沈むなど成績の低迷に苦しんでいたチーム。そうしたチームが、今年は並みいる強豪チームを次々に倒し、グランドファイナルまでのし上がってきました。
最終日は満員の会場がペンライトの光に包まれ、より一層の盛り上がりを見せます。オープニングでは、歌手のオードリー・ヌナが大会公式アンセム「superHuman」を披露。そして、両チームの選手が1名ずつ交互に花道を歩く、グランドファイナルならではの演出で選手が入場しました。
試合は、「Nongshim RedForce」が2マップを先取し、3マップ目も勢いのままに勝ってしまうかと思われたところ、接戦の末に「Global Esports」が勝利。ここから「Global Esports」が2マップを取り返す劇的なリバーススイープを見せ、優勝を手にしました。
優勝した「Global Esports」のPatMen選手は、ステージ上で「誰もが僕たちを疑い、見下していました。でも、今の僕たちを見てください。こうしてトロフィーを掲げることができました。スーパースターチームも、スーパースター選手も要りません。僕たちは勝てるんです!」と語りました。
来シーズンからは、トーナメント形式での大会に
VCT Pacificの4年間を振り返ると、日本チームとしては苦しい成績が続きました。「ZETA DIVISION」が世界3位に輝き、大きな盛り上がりを見せたのは2022年のこと。2023年にVCT Pacificがスタートしてからは、初年度に「ZETA DIVISION」がLCQを突破してChampionsに出場したのみで、以降はMastersを含む世界大会への出場は叶っていません。
来シーズンからは大きく大会形式が変更され、リーグ形式からトーナメント形式に変わることが明らかになっています。これにより、Tier 1とTier 2の区切りがなくなり、日本国内で勝ち抜いたチームが、Pacificでの戦いに挑むというシンプルな構造になります。
一見すると、VCT Pacific以前の大会形式に戻るようにも思えますが、2022年までは日本から世界大会への直通枠が存在していました。しかし、来シーズン以降、国内で勝ち抜いたチームが世界大会に挑むためには、Pacificでその出場権を勝ち取る必要があり、これはVCT Pacificと変わりません。グループステージで一定の試合数が保証されていたリーグに比べ、トーナメントになる今後は、よりシビアになるともいえます。
今回、もとはアンダードッグ的な存在と見られていた「Global Esports」が、現行のVCT Pacific最後に華々しい優勝を飾りました。低迷した苦しい時期を乗り越え、下馬評を鮮やかに覆した彼らの快進撃は、多くの人に勇気を与えました。来シーズン以降、ここまでの悔しさと経験を糧に、日本チームが勝ち進む姿に期待したいところです。




































