2026年9月17日、eスポーツチーム「ZETA DIVISION」と株式会社バンタン、韓国のeスポーツチーム「T1」が運営するeスポーツ教育機関「T1 Esports Academy」が、eスポーツ人材の育成領域における事業連携の基本合意を発表しました。
3社はこの事業連携を、幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ 2026」内の「ZETA DIVISION」ステージにて発表。2027年4月に開校予定のeスポーツ専門スクール「ZETA DIVISION GAMING ACADEMY POWERED BY VANTAN」(以下、ZGA)に、「T1 Esports Academy」の育成ノウハウを取り入れていくことが語られました。
記事では、発表された事業連携の概要とともに、発表直後に行った「T1 Esports Academy」事業リードChief氏への単独インタビューをお届けします。
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(左から)株式会社バンタン 執行役員 佐藤裕則氏、GANYMEDE株式会社 執行役員 事業開発部 部長 千葉哲郎氏、「ZGA」特別顧問 crow氏、「T1 Esports Academy」事業リード Chief氏、「T1」戦略成長担当 JIN氏
「ZGA」在校生を対象とした特別集中講座を実施
「ZETA DIVISION」(以下、ZETA)とバンタンが手がける「ZGA」は、東京・大阪・名古屋の3拠点で、2027年4月に開校予定のeスポーツ専門スクール。通学形式には、4年制の大学部、2~3年制の専門部、3年制の高等部があり、プロゲーマーやクリエイターを目指すコース、eスポーツ業界で働くために必要なスキルを学べるコースなどが設けられます。
今回、事業連携を発表した「T1 Esports Academy」は、韓国の名門eスポーツチーム「T1」が運営するeスポーツ教育機関。数々の世界的な実績を持つ「T1」が培ってきた育成ノウハウを、日本のカリキュラムへローカライズし、「ZGA」で提供していくことが明らかになりました。
ステージでは、提携第1弾の取り組みとして、「ZGA」の在校生を対象とした「T1」による特別集中講座を行うことを発表。「プレイヤーとしての強さだけではなく、eスポーツ業界のビジネスを牽引するグローバル人材の育成を、3社で力を合わせて行っていく」という展望が語られました。
グローバルに標準化できるeスポーツ教育事業モデルをつくる
ステージでの発表後に、「T1 Esports Academy」で事業リードを務めるChief氏にインタビューを実施。「ZGA」との取り組みにおける事業的な狙いや、「T1 Esports Academy」の教育におけるこだわり、そして日韓のeスポーツ人材育成の違いなどについて聞きました。
―― 最初に、簡単な自己紹介をお願いします。
Chief:「T1」の教育事業チームである「T1 Esports Academy」にて、責任者を務めております、パク・サンボム(Chief)と申します。
―― 今回「ZGA」との取り組みを発表されましたが、こうした展開にあたり、まずは日本のeスポーツシーンをどうご覧になっているかお聞きしたいです。韓国と比べて、どのような特徴があると感じますか?
Chief:まず韓国と比べたときに、日本のeスポーツシーンでは、さまざまなゲームタイトルが同時に盛り上がっていることが最大の違いだと思います(※韓国では『League of Legends』が圧倒的人気)。それから、単なるゲームにとどまらず、文化コンテンツへと拡張されていることも違いの1つだと思います。
―― 文化コンテンツとは、どういったものを指していますか?
Chief:例えば、ストリーミングやファッションなどといった、エンターテインメント的な部分ですね。韓国の場合は、ゲーム領域のファンと、そういったカルチャー領域のファンが少し分かれている部分があるのですが、日本ではそれらが合わさっているように感じます。
―― 「ZETA」というチームを、どのように評価されているか気になります。「ZETA」ならではの強みは、どんな部分だと感じられていますか?
Chief:「ZETA」は、ブランド戦略がとても巧みなチームだという印象を強く持っています。このブランド戦略という点に関しては、韓国のeスポーツチームの場合、チームごとの差が大きく、市場全体で見ると物足りなさを感じることが多いんです。
「ZETA」は巧みなブランド戦略をもとに、eスポーツチームとしてのアイデンティティや事業のアイデンティティを、「ZETA」という1つのIPに結び付けているところが非常に大きな強みだと思います。
―― 「T1」にとって、「ZGA」との協業にどのような戦略的価値がありますか?
Chief:私たち「T1 Esports Academy」には、約5~6年積み重ねてきたeスポーツにおける教育ノウハウがあります。ですから、「ZGA」をはじめとして、そうした教育ノウハウを標準化していくという試みを考えています。
私たちとしては、こうした協業を通じて、グローバルに標準化できるeスポーツ教育事業モデルをつくりたいという、戦略的な目標を持っています。もちろん「ZGA」との協業が、日本におけるeスポーツ人材の育成にも寄与できると考えています。
また、「T1」としては、これまでアメリカやヨーロッパなどで、さまざまな協業を行ってきました。ですが、「T1」にとって日本での協業はこれが初めてですので、そういった側面での価値もあります。
心理学と教育学の専門知識をもとにカリキュラムを設計
―― 韓国には「T1 Esports Academy」のほかにも、eスポーツアカデミーがたくさんあるのでしょうか?
Chief:5つほどあります。
―― 最も有名なのは、やはり「T1 Esports Academy」ですか?
Chief:はい、そうです。
―― 「T1 Esports Academy」が、教育において重視している要素を教えてください。
Chief:選手の教育においても、eスポーツ業界で働く人材の教育においても、すべてに共通して言えるのは、教わった内容がただの教育で終わらないこと。つまり、選手になったり、eスポーツ業界に就職したりしたときに、実際にその現場で求められるノウハウを教えることに重きを置いています。
―― 選手の育成において、ゲーム内のスキル以外にも重視している教育的要素はありますか?
Chief:まずは誠実であることと、ストレスに負けない強靭な精神力を持つこと。そして、自分を客観的に認識できているか。これらの要素が重要だと考えています。
―― そういった内容を指導できる、専門の先生方がいらっしゃるのでしょうか?
Chief:私自身が心理学と教育学を専攻してきたので、そうした知識をもとにカリキュラムを設計しています。講師には、実際に選手やコーチを経験してきた人のみを招いています。
―― 選手以外には、どんな人材の育成を行っていますか?
Chief:先ほど挙げたeスポーツ業界で働く人材はもちろん、指導者の育成も行っています。学生たちが選手として成長するためには、当然ながら教え方も重要ですから、指導者の育成も大切だと考えています。学生たちにどのように教えるべきかという部分にも、心理学や教育学の知識を取り入れた方法論を伝えています。
韓国と日本、双方の教育方法のメリットとデメリット
―― eスポーツ人材の育成において、韓国と日本でどのような違いがありますか?
Chief:韓国では、明確に目的に向かっていく傾向があると思います。eスポーツ選手を目指すのならば、一般的な学業などは置いておいて、選手になるためにオールインする。そういった姿が多く見られます。
まだ始まったばかりの段階ではありますが、私たちが日本での教育を見て感じるのは、学生たちにさまざまなことを経験させ、そのなかから自分が好きなこと、得意なことを見出していく傾向が強いということです。
―― それは双方にメリットとデメリットがありますよね。もしゲームだけに集中して、それが成功しなかったら……。
Chief:大きな問題ですよね。実際に私たちもそういった懸念から、進学プログラムを設けています。韓国のeスポーツ学科を持つ大学や、eスポーツクラブチームがあるアメリカの大学などに、特技生として進学できるというものです。
―― 一方で、ゲームに集中するからこそ、世界的な結果を残せるという側面もありますよね。日本の場合は、韓国チームのように良い成績を残せないタイトルも多いです。
Chief:短期的に見れば、韓国式のやり方が良く見えることもあると思います。でも今、私たちはむしろ逆に、日本式のやり方を取り入れようとしている部分があるんですよ。
日本でいろいろな教育企業の方々にお会いして、日本式のやり方は長期的に、学生たちにポジティブな影響を与えていることがわかりました。長期的に見れば、日本式のやり方のほうが、教育的にはより適切なのではないかと考えています。ただ、それには忍耐強さが必要でしょうね。
―― 今回の協業が、日本のeスポーツシーンにどのような影響を与えることを期待していますか?
Chief:eスポーツシーンにおいては、より多くのチームが競い合うことが望ましいと思っています。しかし、地域や国によって盛り上がるゲームタイトルが違ったり、競技のレベルに差が生じたりしますよね。それがこの業界における、最も難しい点だと思っています。
だからこそ、お互いにシーンを発展させ、さまざまなゲームタイトルで競い合えるような、グローバルな活性化につながることを願っています。その最初の一歩として、日本と一緒にそれを進めていけることに期待しています。
―― 最後に、「ZGA」に興味を持つ方々へのメッセージをお願いします。
Chief:eスポーツ業界に対して、「どうやったら自分はそこで仕事ができるんだろう?」と疑問を持ったとき、その答えを見つけるのが難しいことがあります。ですが、私たちは明確な答えをお伝えします。「ZGA」に来てくだされば、実際にeスポーツ業界で自分にどのような仕事ができるのか、どのようなスキルが必要なのかを知り、学んでいただけます。
非常に強力なパートナーの方々と一緒に進めることになったプログラムですから、ぜひ皆さまからの関心と応援をお願いいたします。良い結果につながるよう、「T1」も尽力してまいります。
―― ありがとうございました!




