2025年1月10日から12日(10日はビジネスデイ)まで、東京ビッグサイト南1・2ホールにて「東京eスポーツフェスタ2025(eフェス)」が開催されました。一般公開日初日(イベント会期2日目)に現地を取材したので、その様子をお伝えします。
eフェスは、東京都、JeSU、コンピュータエンターテインメント協会、日本オンラインゲーム協会、東京ビッグサイトによる主催のゲーム、eスポーツのイベントで、今回で6回目を数えます。
東京のeスポーツに関する製品やサービスの産業振興を目的とした関連産業展示会をはじめ、eスポーツ大会、セミナー・学習企画などを展開。関連産業展示会では、ビジネスデイに多くの企業との交流をはかれます。また、eスポーツ大会には、子どもや親子を中心にさまざまな層が参加できます。優勝者、優勝チームには東京都知事杯が授与されました。
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ビジネスデイに行われた「ACCSパネルディスカッション ゲーム業界における知的財産権の重要性について」では、カプコン、任天堂、コーエーテクモホールディングス、セガ、コナミデジタルエンタテインメントと、日本のトップメーカーの法務関連担当者が登壇。多くの来場者の興味をひき、ほぼ満席となりました(撮影:東京eスポーツフェスタ実行委員会)
通信切断多発の『モンスト』はレギュレーションの見直しが必要か
まずは、eスポーツ大会について紹介します。一般公開日初日となるイベント2日目は『太鼓の達人』と『パズドラ』と『モンスターストライク(モンスト)』の3タイトルの大会が行われました。
『太鼓の達人』は、小学生以上が参加できる一般部門と小中学生とその保護者による親子部門の2つが用意されています。
『太鼓の達人』は小学生やフレイル予防などの高齢者向けに扱われることもあるタイトル。誰でも簡単にプレイできるのが特徴ですが、難易度をアップさせると、それに見合う技術と練度が必要です。
今大会でも決勝戦は高いスキルを持った選手が残っていました。優勝したのは、昨年の優勝者であるkazemiyaび選手を倒して決勝に上がったゆうと選手。決勝戦でははる~~ん選手との激戦を繰り広げ、可の数や連打数といったわずかな差で勝利しました。親子大会は逆転でくー?親子が優勝をもぎ取りました。
『パズドラ』部門は「4人でガチ【対戦】」で戦います。決勝は3本勝負を行い、もっともポイントが高かった選手が優勝です。
優勝者がプロ選手でなかった場合は、JeSUのプロライセンス認定権利が得られます。『パズドラ』はプロライセンスを取得する機会が少ないタイトルなので、eフェスは『パズドラ』プレイヤーにとって貴重な大会の1つであることがわかります。
決勝戦に進出したのは、SK選手となたぱ選手とひろNa選手の3名。ひろNa選手のみプロライセンス保持者で、ほかの2名が優勝すればライセンス取得です。
決勝戦では、予選1位だったSK選手が初戦でいきなりゲームオーバーとなりピンチに陥ります。しかし、2戦目で一気に追い上げ、1位に返り咲きます。そして3戦目もしっかり取り切り、優勝を決めました。昨年に引き続き、eフェスでプロ選手が誕生しました。
『モンスト』部門は、2人1組でチームを組んで対戦します。スイスドロー方式の当日予選を行って32組を選出してから、BO1のシングルエリミネーションのトーナメントを行います。
ベスト4、準決勝以降はステージ上での対戦となり、ここからBO3形式になります。大会はプロ選手も参加していましたが、ベスト4に残ったプロは、「どんどんススムンガ」のぴよまる選手と「きまぐれクリティカル」のらせつ選手が組む「白子町代表」の1チームのみでした。
決勝戦は、プロチームを下した「友クリもちスピア」が先手を取りますが、ここから2本連取した「魔境」が逆転優勝しました。
なお今回、準決勝第2試合と決勝戦で通信の切断があり、やり直しが発生しました。ルール上、故意の切断でないかぎり、状況にかかわらず、やり直しとなるのですが、準決勝の通信切断は、最終局面に発生したこともあり、やり直すにしては厳しい状況にあったと言えます。
「白子町代表」が大きくリードし、1周回すくらいの余裕があったにもかかわらず、切断でやり直しとなり、再試合は「友クリもちスピア」が勝利しました。
勝ち確とまでは言いませんが、逆転は難しい盤面だっただけに、勝利した「友クリもちスピア」も心から喜べない勝利となりました。
切断はほかの試合でも起きてしまうことなので、仕方ないとはいえ、ゲームの進行率が、例えば、切断されたときの状況が、試合進行率70%以上あり、相手チームとの差が大きければ、その時点で優勢だったチームが勝利するように判断してもいいのかもしれません。
このままのレギュレーションを続けるのであれば、優勢のチームは切断が起きる前にできるだけ速くクリアする、安全策は悪といった状況になりかねません。これは運営も望むことではないでしょう。
以前、eモータースポーツのピットイン禁止の大会で、最終周でピットインしたために全員が失格になるケースを目撃したことがあります。やり直しを含めて検討されましたが、結局、そのままの順位で試合は終了しました。
すでに20分以上時間をかけ、さらに20分以上のレースを行うのは、大会としても難しいと判断したのでしょう。やり直しは大会の長時間化にもつながりますし、MIXIには新しいレギュレーションで大会を運営してくれることを期待します。
また、切断に関してですが、今回は選手所有のスマホを使い、モバイル通信で行っていたとのことでした。以前、プロツアーなどでは、運営が用意した端末に有線接続で行っていました。その当時と比べるとかなり緩いレギュレーションになっています。この辺りも切断が頻発する原因となりかねないので、もう一度、見直してみる必要がありそうです。
盛況のゲーミングチームと一般層へのアピールが難しいBtoB企業ブース
関連産業展示会では、eスポーツチームやゲーミングデバイスメーカー、大学、専門学校、eスポーツ施設など、さまざまな産業のブースが展開されていました。
そのなかでも突出して人を集めていたのは「ZETA DIVISION(ZETA)」と「RIALIZE」のブース。「ZETA」は『第五人格』のプレイヤーが常駐しており、ファンミーティングを行っていました。「REALIZE」は『APEX LEGENDS』のともろう選手、ストリーマーのざわ氏と煌輝さんが滞在していました。
前回は、京王電鉄のブースで『ストリートファイター6』の大会である「京王カップ」を開催し、集客していましたが、やはりeスポーツ選手やストリーマーが来場すると、イベントが一気に華やぎます。
個人的に気になったのは「東京スポーツドック2024」です。いわゆる体力測定で、身体の健康状態を知ることができます。
ブースでは、体組成計や心拍数を計り、現在の健康状態を判断。さらに、握力測定、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、立ち幅跳び、ステップ台運動で、体力状況も判断します。
筆者が挑戦してみたところ、体力年齢が実年齢より15歳以上も高いという惨憺たる結果でしたが、血管年齢が12歳ほど若かったのが救いでした。
ただ、ステップ台運動(いわゆる踏み台昇降)を6分間も続けなくてはならず、それだけでしばらく動けなくなる状態に。ここ数年はアケコン以上に重い物を持たない生活をしているのがたたり、運動不足を極めてしまったことが露呈しました。とりあえず、明日から『ポケモンGO』をがんばります。
昨年に比べ、ブースの数は減った印象でしたが、来場者は増えた模様。これも一重に「ZETA」などプロゲーミングチームのおかげではないでしょうか。
ただ、ビジネスデイと一般公開日のあるイベントの宿命と言えることですが、客層がまったく違ってしまうことが、出展社にとって、ターゲティングやブースのコンセプト作りを難しくさせる要因になるでしょう。
eスポーツチームであれば、ビジネスデイも一般公開日も、両方の来場者とのエンゲージメントがあると思いますが、BtoBの企業などは一般公開日の来場者にどうアピールすべきか悩んだのではないでしょうか。その辺りをもう少し詰めて行かないと「出展しにくさ」が出てしまう気がします。
また、会場には多くのキッチンカーが並びましたが、その数に対して来場者が少なく感じます。「ZETA」のファンがこぞって、キッチンカーの食事を取っていたことで、ある程度の売り上げにつながったと思いますが、これも「ZETA」頼みとなったのはeフェスとしては課題を残したと言えるでしょう。
イベントとしては、今年は滞りなく開催されており、その点においては、ひと安心でした。その分、規模感がシュリンクした印象ではあり、現状ではこれがマックスなのかもしれないとも感じました。
都のイベントとして、もう少し規模感をあげるのであれば、人的にもコスト的にも拡大する必要があると言えるでしょう。