2025年1月19日、esports Style UENOにて対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6(スト6)』の公式大会「CAPCOM Pro Tour 2024 World Warrior JAPAN(WW) Regional Finals」のパブリックビューイング」が開催されました。
WWは3月に開催される世界大会「CAPCOM CUP 11(CC11)」への出場権を賭けた大会です。全5回のレギュラー大会とポイント上位者のみが出場できるファイナルの計6回で構成されています。
WWでは、2名の選手がCC11への出場資格を得ることができるのですが、その1つがレギュラー大会の5回分の合計ポイントが1位の選手。これは、合計130ポイントを獲得した翔選手に決まりました。
もう1つは、レギュラー大会、5回のうち、ポイントの上位3回分の合計ポイント上位8名が進出する「ファイナル」のトーナメントを勝ち抜いた1人に与えられます。
もちろん、ポイント抜けした翔選手や、そのほかのCPTなどでCC11への出場権を得た選手は除外されます。また、合計ポイントの上位4名はファイナルのトーナメントのウイナーズサイドに、下位4名がルーザーズサイドに振り分けられます。トーナメントの組み合わせは1位対4位、2位対3位、5位対8位、6位対7位です。
ファイナルに出場した選手は以下の通り。()内は3大会分のポイント/5大会分のポイントです。
1位:ひぐち選手(120/120)
2位:ももち選手(105/125)
3位:ふ~ど選手(95/95)
4位:おらりん選手(70/70)
5位:ひかる選手(65/65)
6位:GO1選手(60/60)
7位:もけ選手(60/60)
8位:カワノ選手(50/50)
順位としては、ひかる選手の次にShuto選手(60/60)、もけ選手の次に板橋ザンギエフ選手(55/55)がいたのですが、Shuto選手はCPTスーパープレミア シンガポールで優勝し、板橋ザンギエフ選手はEast Coast Thorwdownで優勝し、CC11への出場資格を得ていたため、辞退しています。
さて、ウイナーズサイドの初戦は、ひぐち選手対おらりん選手との対決です。ファイナルに残った選手はもはやお馴染みの顔ぶれで、そのほとんどが「ストリートファイターリーグ: Pro-JP(SFL)」の選手、いわゆるリーガーです。
その中で唯一、リーガーでないおらりん選手がウイナーズで残っています。しかも、対戦相手のひぐち選手とは同い年。すでにトップランナーとして活躍しているひぐち選手に、2024年に大躍進したおらりん選手が対峙する展開です。
試合が始まると、ひぐち選手は、遠距離でソニックブームを連打するもパリィで受けるおらりんケンからなかなかダメージが取れません。アグレッシブな動きに画面端を作るおらりんケンに対し、起き上がりに行動を読まれ、裏目に出ることになります。最後もDリバーサルをジャンプで避けられ、おらりん選手が勝利しました。
ウイナーズ2試合目は、ももち選手対ふ~ど選手のEDミラー対決。そしてウイナーズ1回戦と同じく同い年対決です。今大会では、EDが2人、春麗が2人と、キャラかぶりの少ない大会でしたが、トーナメントの妙でいきなりミラーが発生します。ちなみに、ルーザーズ2試合目も春麗ミラー。これだけでも今大会に魔物が潜んでいるような様相です。
ももち選手とふ~ど選手は、「SFL」では同じ「DIVISION S」で2度の対戦が行われています。結果は1勝1敗のイーブンで、現時点でもどちらが優位と言えない組み合わせです。
試合は取ったり取られたりの攻防が続き、最終的にはフルセット、フルラウンドまで持ち込まれます。最後はほぼ同時に中キックを出した結果、わずかにふ~ど選手の技が先に当たり、そこから倒しきりました。
ここからはルーザーズサイドです。負ければ即敗退。初戦はひかる選手対カワノ選手の若手対決でしたが、カワノ選手が勝利します。ひかる選手は「SFL」に大抜擢され、いきなりエース級の活躍をみせました。もっとも躍進したプレイヤーの1人ではないでしょうか。もはやその強さは一過性のものではなく、定着したと言えるでしょう。
ルーザーズ2試合目はGO1選手対もけ選手の春麗ミラー。「SFL」では同じ「DIVISION F」でしたが、直接対決はありませんでした。GO1選手といえば、SA2を使った弾抜けの精度の高さが大きな武器となっています。そのため、GO1選手にSA2が溜まると、対戦相手は圧倒的に飛び道具が撃てなくなってしまいます。
そのSA2ですが、コマンドの性質上、しゃがみと立ちを繰り返す、膝ガクガク状態になるのですが、GO1選手はあからさまに膝をガクガクさせ、SA2を仕込んでくることをアピールするので、会場は笑いに包まれていました。
試合は、いきなり2セット連取するもけ選手でしたが、ここからGO1選手が粘り逆3タテで逆転勝利となりました。もけ選手は個人戦での活躍がめざましい1年でした。配信やSFLのコメントでももけ節が炸裂し、プロ選手として大きく成長できたシーズンを過ごせたと感じます。
ルーザーズ2回戦は、ももち選手対カワノ選手、GO1選手対ひぐち選手です。ここはももち選手とGO1選手が勝利しました。
カワノ選手はキャラクター変更に手こずった印象ですが、それでもシーズン終盤には形にしてくるところはさすがです。ひぐち選手は数ある大会で優勝を重ね、最強の一角の1人でした。残念ながら大きな大会では結果を残せなかったので、来シーズンに期待したいところです。
次に行われたのはウイナーズファイナル。ふ~ど選手対おらりん選手の一戦です。WWのレギュラー大会やファイナルで大躍進のおらりん選手でしたが、その前に立ちはだかったのは大きな壁、ふ~ど選手。苦し紛れの無敵技もしっかりガードされるなど、思うようにいきません。そのままふ~ど選手が、落ち着いた老獪な戦い方で1ラウンドも取らせずに完勝しました。
ルーザーズセミファイナルでGO1春麗を倒したももち選手は、ふ~ど選手への挑戦権をかけ、おらりん選手と対峙します。ここはももち選手が3-0の完勝でベテランの力を見せつけました。
GO1選手は先述した通り、弾抜けSA2など、ほかのプレイヤーがあまりしないことをあたかも当然のようにやってのけ、唯一無二の存在感を出していました。リーグも含め、来シーズンも暴れそうな予感です。
おらりん選手は2024年に頭角を現し、唯一の非リーガーとしてファイナル進出でしたが、ベテラン勢2人に、0-3の洗礼を受けてシーズンが終了となりました。自分への自信とトップ勢の厚みを感じ取れた良い1年だったのではないでしょうか。来シーズンも期待ができそうです。
これで、グランドファイナルはももち選手対ふ~ど選手に決まりました。ウイナーズ2試合目と同じカードです。
グランドファイナルは、ふ~ど選手のドライブゲージが枯渇しがちな展開。バーンアウトすると、有利を活かし、ももち選手が猛攻をしかけます。これが功を奏し、リセットに成功。ウイナーズ1回戦はギリギリの展開で勝敗が決まっているので、どちらが優勢か、勢いがあるかは分からない状況です。
グランドファイナルリセット後1セット目はももち選手が勝利し、先行しますが、ここから修正したふ~ど選手が3セット連取。ももち選手の追い上げをみごとに止め、優勝しました。ふ~ど選手は昨年のWWでも優勝しており、そのときの相手が「忍ism Gaming」のヤマグチ選手だったので、2年連続でふ~ど選手が「忍ism Gaming」を撃破しての優勝になりました。
ももち選手はポイントレースにおいても、1位の翔選手とは5ポイント差の2位で、ファイナルのトーナメントでも2位となる、おそらくWWに参加したプレイヤーの中で、もっとも悔しい思いをしたのではないでしょうか。
昨シーズンはキャラクター選びに難航するも、今シーズンはEDを発掘。ドリームコンボなど一大ムーブメントを作り、強いももち選手が帰ってきました。ドリームコンボは勝利のためのものだけでなく、観戦者の歓喜を促すものとしても存在していました。今回の会場でもドリームコンボが完走するたび、拍手が巻き起こるほどです。『スト6』のプロ競技シーンを沸かせた1人であることは間違いないので、それだけに無冠で終わったのは残念です。
試合後、WWを制し、最後の48人目となるCC11出場者となったふ~ど選手に話を聞いてきました。
――おめでとうございます。試合を終えて、感想をお聞かせください。
ふ~ど選手:今日のトーナメントだけをみれば、組み合わせの良さもあり、勝ってもおかしくないとは思っていました。ただ、1年を通じて考えると、今年のCC11に出場できる自信はまったくありませんでした。
結果としては3-0の試合とかあったので、圧倒的な勝利をみせたところもありますが、ちょっと噛み合わせが悪かったらやばかったかもしれません。正直、ルーザーズサイドに落ちたら、勝てるとは思えなかったので、そういう気持ちでやりました。
――CC11まで時間が空くのですが、どうやって過ごしていく予定でしょうか。
ふ~ど選手:多分、CC11に出場できなくなってしまうと、その間、練習しなくなってしまう気がするんですよね。なので、CC11に出場できることで、高いモチベーションを維持できると思います。そのまま強さを保てそうです。練習しなくなると、絶対弱くなるので。
――CC11は初の日本開催、それも『ストリートファイターII』時代の伝説の会場です。そこに対する思い入れはありますでしょうか。
ふ~ど選手:WWEとかDDTとかで両国国技館には行ったことがあります。なので、ああ、あの場所に立てるんだなって気持ちですね。あとは、ちゃんこ屋がたくさんありますよね。今日もちゃんこ鍋食べに行っちゃおうかな。
地元開催で日本の方が多く応援に来てくれると思います。海外遠征が多いので、あまりホームとかアウェイとか感じることはないですけど、盛り上げることができたらいいなと思っています。世界からいろいろなプレイヤーがやってくるので、それを楽しんでもらえればいいかな。あとは日本で練習ができるのは大きなアドバンテージですね。
――今大会に向けてLeShar選手と練習をしていたとのことですが、どの点が役に立ちましたでしょうか。
ふ~ど選手:そうですね、キャラクター対策をすると、実はリスクのある行動って結構あるんですよ。例えば、サイコフリッカーに対してジャストパリィラッシュをするとか。そういうのはすごく有効なんですけど、どこまでやってくるのかが気になるポイントでした。
あとは中キックの差し替えしが全然なかったので、こちらからの中キックは相手に触れることができ、相手の中キックは差し替えしでダメージ取れるような感じでやれたのは大きいですね。
――ありがとうございました。
CC11は、当日予選のLCQがないので、これで出場選手が全員確定しました。日本からは今回出場を確定したふ~ど選手をはじめ、板橋ザンギエフ選手、Shuto選手、ときど選手、翔選手の5名が出場します。
あとは2月11日開催されるSFLグランドファイナルで、日本代表チームが決まれば、すべての選手がそろいます。CC11は3月5日から9日に両国国技館で開催。次回以降で、いつ日本で開催されるかはわからないので、会場に訪れることをオススメします。
【撮影/志田彩香】