2025年1月15日、パシフィコ横浜国立大ホールにて、eスポーツ関係者を表彰する「JAPAN eSPORTS AWARDS 2024(eスポーツアワード)」が開催されました。このアワードは、2024年のeスポーツシーンで活躍・貢献をした選手やチームを表彰するもので、今回で2回目となります。前回の会場は、有楽町の東京国際フォーラムでしたが、今回は横浜市が共催しており、パシフィコ横浜で実施されました。
前回は、ノミネートされた選手やチームが登壇し、その中から受賞者を発表する方式でしたが、今回からはノミネート者全員が受賞する形式に変更されました。特に前回はスケジュールの関係上、ノミネート者のほとんどが欠席し、唯一来場した選手が受賞できないケースもあり、アワードに出席してもらう意味を問われていました。その点、今回は改善されたと言えます。
また、前回は授賞式のみの実施でした。そのため、ファンにとってはチケットを購入してまで来場する意味を見いだすのが難しかったのですが、今回は授賞式の前にイベントや展示ブースを用意していました。
オープニングと同時に行われたのは、受賞者の会場入りです。レッドカーペットが敷かれたエントランスからインタビュースペースまで練り歩き、ファンはそのレッドカーペットの真横から選手の様子を見ることができます。普段、見慣れた選手が正装を纏い、目の前を通過する機会はめったにないことなので、ファンにとってはうれしい演出だったのではないでしょうか。
会場ホワイエには協賛企業の展示ブースを展開。ソニーブースでは「INZONEラウンジ」と「NURO光ラウンジ」の2つが用意され、各eスポーツタイトルを体験できるように試遊台を設置していました。
日本郵政ブースは、ファンに手書きのメッセージを送れるラウンジを展開。ゆるキャラのぽすくまも来ていました。
ベルクブースでは、ベルクオリジナルのエナドリとタブレットを販売。ベルクがスポンサーを務めるゲーミングチーム「FAV gaming」ストリートファイター部門の選手も来場しており、プロ選手との対戦や写真撮影などが行われました。
日本eスポーツアワードブースでは、eスポーツチームのグッズ販売と、選手とのミート&グリーティングを実施。開場は13時で授賞式は17時からでしたが、それらのブースを見て回っていたら、あっという間に授賞式の時間になりました。
11時からは、関係者向けにeスポーツビジネスフォーラムを開催。配信技研の中村鮎葉氏やREJECTの野山嶺氏などが登壇したほか、最後は登壇者によるパネルディスカッションも行われ、今後のeスポーツ展望と課題について話し合われました。
年間最優秀eスポーツプレイヤー賞はときど選手
では、いよいよ授賞式です。受賞者は以下の通りです(敬称略)。
【eスポーツ大会賞】
ストリートファイターリーグ:Pro-JP
Identity V Japan League
Overwatch Champions Series Japan
VALORANT Challengers Japan
-
Overwatch Champions Series Japanで受賞したWDG JAPAN 支社長 權純弘氏(写真左)とACTIVISION BLIZZARD JAPAN代表 アレキサンダー・デジョルジョ氏(写真右)
【eスポーツゲーム賞】
Overwatch2
ストリートファイター6
VALORANT
【eスポーツチーム賞】
FENNEL
REJECT
ZETA DIVISION
【eスポーツ功労賞】
犬飼博士
梅原大吾
スイニャン
【eスポーツキャスター賞】
アール
平岩康佑
OooDa
【ストリーマー賞】
ドンピシャ
ハイタニ
k4sen
SHAKA
【Vtuber賞】
天鬼ぷるる
獅白ぼたん
渋谷ハル
橘ひなの
柊ツルギ
【ベストバウト賞】
VALORANT Radiant Asia Invitational DetonatioN FocusMe VS. EDG
VALORANT Challengers Japan 2024 Split 2 RIDDLE VS. FENNEL
ストリートファイターリーグ:Pro-JP DivisionS 第9節 Saitshunkan Sol 熊本 ウメハラ VS. 忍ism Gaming ヤマグチ
【Under18eスポーツプレイヤー賞】
あcola(ZETA DIVISION/大乱闘スマッシュブラザーズスペシャル)
ま・しお(FENNEL/ポケモンユナイト)
absol(MURASH GAMING/VALORANT)
【eモータースポーツゲームプレイヤー賞】
岡田衛(グランツーリスモ7、アセットコルサほか)
TakuAn(SCARZ/グランツーリスモ7)
【スポーツゲームプレイヤー賞】
Mayageka(eFootball/ゲキサカFCeスポーツ)
【マインドゲームプレイヤー賞】
たすく(遊戯王マスターデュエル)
title(ZETA DIVISION/チームファイトタクティクス)
【審査員特別賞】
宮園拓真(SCARZ/グランツーリスモ7)
Rangchu(VARREL/鉄拳8)
ReijiOcO(REJECT/PUBG Mobile)
【MOBAプレイヤー賞】
Evi(福岡ソフトバンクホークス ゲーミング/League of Legends)
TON・GG(FENNEL/ポケモンユナイト)
【ノンセクションゲームプレイヤー賞】
AKa(REJECT/第五人格)
alf(ZETA DIVISION/第五人格)
KKM(Taito Station Tradz/ビートマニア IIDX)
【シューティングゲーム賞】
ゆきお(RIDDLE/APEX LEGENDS)
Laz(ZETA DIVISION/VALORANT)
Meiy(DetonatioN FocusMe/VALORANT)
suzu(ZETA DIVISION/VALORANT)
【格闘ゲームプレイヤー賞】
カワノ(Good 8 Squad/ストリートファイター6)
ときど(REJECT/ストリートファイター6)
ミーヤー(FENNEL/大乱闘スマッシュブラザーズスペシャル)
double(ZETA DIVISION/鉄拳8)
【年間最優秀eスポーツプレイヤー賞】
ときど(REJECT/ストリートファイター6)
年間最優秀eスポーツプレイヤー賞は、発表されるまでわかりませんでしたが、ときど選手が獲得しました。2024年はREJECTでチームを率いて、「ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2024(SFL)」のDIVISION優勝に貢献。リーダーとしてのチーム作りはもちろん、選手としてもチームを牽引するだけの成績を残しました。
また、個人の競技活動としては、eスポーツワールドカップ出場権を獲得するオーストラリア メルボルン大会や日本で5年ぶりに開催された「CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER JAPAN」で優勝。さらに、これまでの功績も考えると、最優秀eスポーツ選手としてふさわしい存在だと言えます。
功績と言えば、eスポーツへの貢献度を賞する「功労賞」は梅原大吾(ウメハラ)選手、スイニャンさん、犬飼博士さんが受賞しました。ウメハラ選手は受賞のスピーチで「もっと早く功労賞はもらってもよかったかなぁ。評価されるには時間がかかるってことでしょうね」と回答。また、表彰前のVTRで「お金にならない時代にあれだけやっていたことが真の功労だと思う」と言っていたことから、eスポーツ界を支え続けてきたことが伝わりました。格ゲー界の王が王たる所以と言えるでしょう。
スイニャンさんは、仕事柄よく現場で会うことがあり、年を追うごとにeスポーツ、特に、韓国がらみの大会にとって欠かせない存在になっていくのを見てきました。まさに功労賞にふさわしい人物の受賞です。
eスポーツアワードは、LINEによるファン投票が2024年9月から開始されたこともあり、年末に活躍した選手やチームが投票に間に合わないシステムとなっていました。そこを補填するために審査員特別賞を新たに設けたことはよかったと思います。年末には大きな大会も多いですし、実績のみで判断されるので、ある種もっとも納得のいく賞だと言えます。
また、授賞式の合間に、eスポーツ流行語大賞のランキング発表もありました。某流行語大賞とは違って、実際にeスポーツ界隈で使用された言葉しかなく、納得のいくランキングでした。括りがeスポーツとなっていたので範囲が広く、ファンにとっては興味のあるタイトルの流行語しかわからなかったと思いますが、どういった状況でその言葉が生まれ、どういった状況で使われるようになったのかを懇切丁寧に解説してくれたので、流行語となった言葉の意味や重みが理解でき、使いたくなった人もいるのではないでしょうか。
今回のアワードで気になった3つのこと
今回の受賞で気になったのは3点。1つは『ポケモンユナイト』の扱いです。eスポーツゲーム賞に入っていたはずですが、発表時に急遽ラインアップから消えており、ま・しお選手とTON・GG選手の紹介VTRがカットされていました。おそらく、直前でゲーム画面使用ができなくなったのではないかと思います。
同じく画面使用許可が下りていないであろう『大乱闘スマッシュブラザーズスペシャル』では、選手紹介VTRでゲーム画面を映さず、大会の様子で構成されていたので、『ポケモンユナイト』は最初許諾されていたにもかかわらず、直前でNGが出たのではないかと推測しました。代替のVTRを作る猶予がないほどの直前だったのかもしれません。
せっかく、eスポーツやゲームを盛り立てるイベントだけに、もし許諾を覆した行為が本当であれば、残念です。この件は現場で何人かの関係者に話を聞きましたが、明確な理由は得られませんでした。なので、いくつかの推測によるものなので、事実を知る人がいれば、ご教授いただければ助かります。
2つめは各賞の基準についてです。受賞者に関しては、ファンによる投票と審査員による厳選な結果によるものなので、とやかく言うつもりはありませんが、選定基準が曖昧な点は昨年と同様で、こちらは基準をもっと定めて欲しいと感じました。日本国内のeスポーツの表彰とするのであれば、海外の大会や海外で活動する選手は除外するべきだと思います。
逆に、世界全体を対象とするのであれば、もっと世界の選手やチームを対象とする選定にすべきではないでしょうか。例えば、『鉄拳8』のdouble選手はeWCで世界3位となり、フランスのThe MIXUPで優勝するなど輝かしい成績を残しています。しかし、国内大会に限れば、チクリン選手はEVO Japanで優勝しており、double選手よりも好成績を残したと言えます。ベストバウト賞の「VALORANT Radiant Asia Invitational」は中国の大会での試合です。
審査員特別賞を受賞したRangchu選手は韓国人ですが、日本を拠点としており、受賞の後押しとなった鉄拳ワールドツアーグローバルファイナルは日本で開催していながらも国際大会であることから、どのように判断すべきかは難しいところだと思います。
基準があやふやになると、選びたい選手に合わせた基準に変更することになりがちで、それは厳選な選定であるとは言えなくなってしまいます。
3つめは受賞選定が、タイトルそのものの人気に依存しているところです。eスポーツタイトルや選手、チームがファンの投票をベースとしており、人気投票になりがちなのも否めません。
例えば、マインドゲームプレイヤー賞としては、『ぷよぷよeスポーツ』のともくん選手は最たるものと言えるでしょう。ともくん選手は、「東京eスポーツフェスタ2024」で2年連続3度目の優勝、「全国都道府県eスポーツ選手権 2024 SAGA」で大会4連覇を達成。公式大会の「ぷよぷよグランプリ2025 2nd」でも優勝し、八面六臂の活躍をしています。
アンダー18においても、ゆうき選手は「全国都道府県eスポーツ選手権」ぷよぷよeスポーツ 小学生の部で2連覇を達成。小学生ながらプロ選手が参加する大会でも好成績を残しています。すでに半分以上のプロ選手がゆうき選手に負けたという実績もあり、天才小学生として唯一言えるeスポーツプレイヤーです。
この2人が、まったくかすりもしなかったのは、『ぷよぷよeスポーツ』がeスポーツタイトルとして、ほかの受賞タイトルよりも認知度が低かったからなのではないでしょうか。
ちなみに、途中経過ではマインドゲームプレイヤー賞に『ぷよぷよeスポーツ』のぴぽにあ選手、SAKI選手がエントリーされていました(あめみやたいよう選手は『ぷよぷよテトリス』など複合したタイトルにより選定かと)。この2人の実績も十分なものではありますが、先述した2人を押しのけてエントリーされていることに、諸手を挙げて賛成はしかねると言ったところです。
マイナータイトルだからといって、めざましい成績を残した選手やチームが受賞できない状況は、もともとeスポーツ自体がマイナーな存在だったことを考えると、自己否定にすらなりかねません。
逆にマイナーだからこそ、スポットを当てて、より多くの人に知ってもらい、eスポーツ業界全体をさらに活性化させられるのではないでしょうか。タクティカルシューティングであれば『VALORANT』以外に『Rainbow 6 Siege』や『Counter-Strike2』などの選手が、対戦格闘ゲームであれば『スト6』や『鉄拳8』『スマブラ』以外に、『グランブルーファンタジーヴァーサス』や『ギルティギア ストライヴ』『メルティブラッド』の選手が注目できるような賞になることを願います。
個人的には海外の大会も評価するという現状の基準に則った場合、EVOの『ストリートファイターIII 3rd Strike』で優勝したMOV選手と『アンダーナイトインヴァース2』で優勝したせなる選手も十分な実績だったのではないかと思います。
と、まあ、思うところはありますが、第2回にして大きく飛躍し、クオリティが格段にアップしたイベントになったのは間違いありません。第3回日本eスポーツアワードに期待できる内容でした。