2025年2月11日、対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6(スト6)』の国内プロリーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024(SFL)」のグランドファイナルが開催されました。

グランドファイナルの会場は、パシフィコ横浜のホールD。約3,000人の観客が訪れました。会場内の壁際には「Crazy Raccoon」を除いた11チームのSFLチームのブースやスポンサー企業の物販ブース、公式物販ブースが並び、お祭り感が溢れます。毎年、規模が大きくなるSFLグランドファイナルですが、今年もさらに大きくなった印象です。

「SFL2024」には、全12チームが参加。「DIVISION S」と「DIVISION F」の2つのディビジョンに分かれてリーグ戦を行いました。それぞれ上位3チームがプレイオフに進出。そこでそれぞれのディビジョンの優勝チームが決まります。「DIVISION S」では「GOOD 8 SQUAD(G8S)」が、「DIVISION F」では「Yogibo REJECT(RC)」が優勝し、グランドファイナルに進出しました。

ディビジョン優勝チーム同士がグランドファイナルで戦うため、リーグ本節やプレイオフでは一度も対戦したことのない相手です。もちろん、個人戦の大会や普段の練習、各種イベントで対戦経験はあるかもしれませんが、チームとしての対戦は今シーズン初です。

結果は、90-40で「G8S」が勝利。3月9日に開催される「SFL World Championship 2024」への切符を手にし、「SFL Pro-US」、「SFL Pro-EU」の優勝チームと世界一を争います。ちなみに、EUは「NIP」が優勝。USはカリフォルニアの山火事の影響で2月22日に優勝チームが決定します。

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    「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2024(SFL)」のグランドファイナルの様子をレポートします

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    約3,000人が訪れたパシフィコ横浜の試合会場

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    各チームのブースでは選手が滞在しており、グリーティングも行われていました

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    トップパートナーである太陽ホールディングスのブース

グランドファイナルはプレイオフと同様に先に規定のポイントに到達したチームが勝利。本節の対戦のように、先鋒・中堅・大将の3人を一巡とする団体戦を行い、BO3で行われる先鋒・中堅戦で勝利すると10ポイント、BO5で行われる大将戦で勝利すると20ポイント獲得できます。

規定ポイントに到達しなかった場合は次の巡目に突入します。本節と同様にホーム&アウェイ方式を採用しており、その巡目でアウェイとなったチームは先に3人分のオーダーを発表し、ホーム側は対戦前に誰が出場するかを発表します。

本節でポイントが20対20になった場合はBO1の延長戦に入り、勝利チームに5ポイントが加算されますが、グランドファイナルの場合は延長戦がなく次の巡目に移行します。

なお、グランドファイナルでは本節でのポイント獲得数が多いチームがホームスタート。「RC」が305ポイント、「G8S」が245ポイントだったので、RCがホームになりました。

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    SFLグランドファイナルといえば、実況解説陣のタキシード。サポーターの「NOモーション。」の2人も正装であるケンとE.本田の扮装で登場です

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    優勝チームに贈呈される「昇龍拳トロフィー」

試合開始前には客席中央の花道を選手が一人ひとり順番に登場。客席間近で選手を見られるのはうれしい限りです。あきら選手は観客にハイタッチしながらの入場で、会場を沸かせていました。

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一巡目は、アウェイの「G8S」が先にオーダーを発表。先鋒・カワノ豪鬼、中堅・ガチくんラシード、大将・ぷげらDeeJayで挑みます。

本節ではベガを使い5勝を挙げたぷげら選手ですが、プレイオフではジュリを出してくるサプライズを用意。さらに、グランドファイナルでは昨シーズン使用していたDeeJayを出してくるサプライズを準備していました。

しかも、大将を任せられていたことを考えると、LeShar選手対策として、DeeJayを選択したと思われます。これに対して「RC」は、先鋒にときど選手のケンを、中堅にあきら選手のキャミィをぶつけてきます。

しかし、どちらもアウェイ側の「G8S」が勝利し、ホームの優位性が失われた結果になりました。大将戦では予想通りLeShar選手が登場。対LeShar選手として用意してきたDeeJayが思ったように機能せず、3セット連続で取られて敗退します。

これでポイントは20-20のイーブン。優位なホーム側で差を付けられなかったことで、「RC」が若干不利な印象を受けます。本節やプレイオフ同様に絶対的な存在のLeShar選手に頼る展開になりそうな気配です。

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    本節同様の強さをみせるLeShar選手

二巡目は、「RC」が先にオーダーを発表。先鋒・あきらキャミィ、中堅・ときどケン、大将・LeSharEDの布陣です。

これに対して、「G8S」は作戦を変更してきます。LeShar選手要員だと思われたぷげら選手を先鋒にもってきて、中堅はガチくん選手。対LeShar第二の矢としてカワノ選手に交代するための措置であることはわかりますが、一巡目であきら選手に勝利したガチくん選手を当てずにオーダーを変えているところをみると、ぷげら選手の勝ちやすさを重視したオーダーなのではないでしょうか。

しかし、今度は、先鋒・中堅で「RC」が返り討ち。20ポイントを稼ぎます。結果として「G8S」の先鋒と中堅のオーダー組み替えはうまくいきませんでした。

大将戦はフルセットフルラウンドになる激戦。しかも、すべてのセットがフルラウンドで決着ついています。最終ラウンドは最後のLeShar選手のコンボミスでカワノ選手が勝利。その前のコンボでもおそらくミスでコンボが伸びなかった場面もあり、高いコンボ性能とコマンドテクニックを誇るLeShar選手がミスをしたことに、会場が響めきました。コンボが決まっていればLeShar選手の勝ち確だっただけに、完全にLeShar選手を封じ込めたとは言い難い結果になりました。「G8S」としてはまだまだ安心できないところです。

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    思わぬ勝利に喜びをあらわにするカワノ選手

三巡目は「G8S」が再びアウェイに。オーダーは先鋒・ぷげらDeeJay、中堅・ガチくんラシード、大将・カワノ豪鬼です。

相手のミスから拾った勝利とはいえ、勝ちは勝ち。カワノ選手が大将としてLeShar選手を迎え撃ちます。先鋒・中堅戦はぷげら選手対あきら選手、ガチくん選手対ときど選手と二巡目と同じカードです。

「RC」としてはここで勝利し、LeShar選手の負担を軽くしたいところです。しかし、どちらも「G8S」がリベンジを果たし、20ポイントを先行します。ぷげら選手が勝利したことで、試合に出ている選手6人がすべて勝利したことになります。

大将戦はカワノ選手対LeShar選手再び。LeShar選手は短時間ながら前回のミスを修正するだけの力がある選手なので、どのような戦いを見せるかが注目でした。最初のセットは、精度の高いジャストパリィ、差し返しのうまさ、削りKOを狙うコンボ選択の正確さなど、LeShar選手の強みが存分に出て、勝利します。

しかし、ここからカワノ選手の本領である逆択が見事に決まります。逆択とはダウン状態や不利なガード状態から有利な攻撃側に二択の攻撃をしかけること。本来であれば、攻撃側が二択を迫る場面でありながら、逆に二択をかけるわけです。

例えば、起き上がりに投げや打撃を重ねられた場合、ガードするか投げ抜けをするかが守り側の常套手段ですが、無敵技を出すことによって反撃をします。こうなると攻撃側は無敵技の切り返しを警戒し、密着でガードやパリィをすることを余儀なくされます。それをさらに予測して、投げる選択肢で追い詰めます。攻撃側が二択を迫るはずが、逆に投げと無敵技を警戒する状態にさせられてしまいます。

カワノ選手の逆択がおもしろいように決まり、LeShar選手の逆択は読まれてしまいます。逆択で使う無敵技はガードされると手痛い反撃を喰らうので、当てなければただの無謀なぶっ放しになってしまいます。キャラクターの攻撃手段の定石や相手選手の行動パターン、そして相手選手の心境を読み取り、ことごとく逆択を当てていきました。結果、二巡目の時点ではLeShar選手に分がありそうな気配でしたが、3-1でカワノ選手が勝利しました。

ポイントはこれで80-40となり、「G8S」があと10ポイント獲得すると勝利が確定します。先鋒、中堅でも10ポイントは稼げるので、RCは残りの試合をすべて勝たないと逆転できない状況に追い込まれました。

しかも、四巡目は「RC」がアウェイ。悩んで出したオーダーは、先鋒・あきらキャミィ、中堅・LeSharED、大将・ときどケンです。どこで負けても終わってしまう状況では、オーダーも何もないのかもしれません。これに対して「G8S」はぷげらDeeJayを選択。尻上がりに調子を出してきたぷげら選手はあきら選手を倒し、「G8S」が優勝となりました。

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    四巡目先鋒戦はマシンチェックによる調整時間が発生。待っている間、祈るように心を落ち着かせようとするあきら選手

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    勝利を確定したあと、ファンにアピールするぷげら選手

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    うなだれるLeShar選手。最後のコメントでは「弱くてすいません」と話していましたが、誰もがLeShar選手あってこそここまで来られたことを知っています

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    優勝した「G8S」

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    プレイオフで個人賞の発表が行われていましたが、唯一残っていたMVPはカワノ選手に決まりました

今回のグランドファイナルは、初の「2DIVISION制」により、これまでずっと戦ってこなかったチームとの対戦でした。本節の戦いぶりを見ると、「RC」のチーム力が勝っているように思いましたが、やはり直接対決をしていない、本節で対戦するチーム編成が違うということもあり、そんな単純にはかれるものではありませんでした。

また、「SFL」に出場している選手、いわゆるリーガーたちはいずれも百戦錬磨の猛者であることは間違いありませんが、その人たちでも「SFL」グランドファイナルの大舞台では、実力が発揮しきれない緊張やプレッシャーがあるのだと実感しました。

精密機械のように高い精度で戦うLeShar選手があれだけのミスをし、ぷげら選手も序盤は思うように動けず、SA2が最後まで完走できずに終わってしまう場面もありました。おそらく、ガチくん選手やあきら選手、ときど選手も思った以上のプレッシャーを受けていたのではないでしょうか。

試合後の囲みインタビューでも、二巡目の最後にLeShar選手がミスをしたところについて、カワノ選手が「頭が真っ白になっていた。本来であれば、あれがつながらないってこちらも分かっているハズなのに、そのときはわからなかったです」と言うほどです。

「SFL」は回を重ねるごとに、会場も大きくなり、観客も増え、見る目も肥えてきています。「SFL」の戦いを経験してきた選手でさえ、より重圧を感じるほどの大会となっているのでしょう。来年はさらなる大きな会場でより多くの人にこの感動と臨場感を味わってほしいものです。

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    トロフィーを掲げる「G8S」

試合後の表彰式では辻本春弘社長が登壇し、2025年シーズンの「SFL」の開催を発表。今回と同じく2DIVISION制です。

さらに先日、忍ism Gamingがチーム活動の終了を発表しており、「忍ism Gaming」に代わり「ZETA DIVISION(ZETA)」が参加することが発表されました。

「SFL」の最初のシーズンから参加し、「SFL」および『ストリートファイターシリーズ』の大会に大きく貢献したことに感謝し、忍ismの百地祐輔代表取締役(ももち選手)が登壇し、お別れの挨拶をしました。

また、後日のももち選手の配信や「ZETA」のニュースリリースにより、「ZETA」が「忍ism Gaming」の事業継承をすることも発表されています。

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    「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2025」の開催を発表。先日活動終了を発表した「忍ism Gaming」に代わり、「ZETA DIVISION」が新たに参加します

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    あいさつをする百地祐輔氏

国内リーグとしてはこれで終了ですが、世界一のチームを決める「SFL World Championship」が残っています。世界一のチームのメンバーは、来シーズンの「CAPCOM CUP(CC)」の出場権を得られるとてつもない権利を得ることができます。

4人も同時に「CC」の出場権が決定するので、優勝すれば日本人選手の出場枠が大きく増えるだけでなく、その4人は出場権レースに参加しないことから、それ以外の選手にいつも以上のチャンスが増えることになります。

ファンとしても、「G8S」の選手本人たちとしても、そして日本で活動するプロゲーマーとしても、是が非でも「G8S」の優勝を熱望していることでしょう。

今回のグランドファイナルはこれ以上のない好試合が続き、現場は熱狂に包まれました。この熱狂を直に感じるためにも、ぜひとも「World Championship」は両国へ行くことをオススメします。