前回の内容はコチラ

ビジネスのスタートアップとB.Grove

ざっくりと言うと、多分、僕と同じくらいの年代で、そういった事業開発系をやっている人たちは、外資系に多かったんですよ。元々PCの事業を立ち上げないといけない訳ですから。MicrosoftもAppleもそうですし、Googleとかは後から来ましたが、結局日本市場を立ち上げないといけないという思いでやってきた訳です。その時、日本の大手メーカー企業は、すでに先行者としていくつも大きな市場を抱えており、ゆるぎない状態でした。

一方、我々は必死になって市場を作ろうとしていた訳ですが、大手メーカーからすれば、それは全体の売り上げの中でほんの小さな割合でしかない訳です。多分そうした事業の立ち上げに関しての経験値の有無が効いているのかな? という思いに至った。

ITバブルの崩壊や、リーマンショックなどの影響が国内の大手メーカーにも影を落とすようになり、事業部の閉鎖などもあり、そうした経験を社内で有していた人たちの多くがトップにならずに野に下ったため、社内で、そうしたことのやり方がわからなかったり、経験値が不足するようになってきてるかな? という気がしているんです。

逆に僕らはそれしかやって来なかった。ですから、スタートアップの企業などを見ると「それって俺らが20年前、30年前にやってた事だよね」という感じがあって、共感できるのですが、そういうスタートアップ企業と大手企業のギャップがすごくあるな、と思います。

たまたま僕はIntelの中でそういう事をやらせて頂きましたし、後半には学生の勉強会を企画したりとか、大手の企業からも相談を受けたりしていた。「事業を始めたいのだけど、人材が社内で育てられない。どうしたらいいんだ?」みたいなことですね。

こういう場合、まずは新規事業を担う人材を育てないといけないんですが、そもそも会社の立て付けが新規事業ができるようになっていない。事業部が縦割りになってますし。本来はビジネスプロデューサーが1人で営業もやり、開発もやり、マーケティングもやり、製造もやり、と全部自分で仕切るようなドライバーとして動き、縦割りの事業部に横串を刺して、旗振って牽引しない限り、ビジネスなんて興らないんですよ。営業はマーケティングが悪いだの企画が悪いだの製品が悪いだのと言って、一方の製造は営業が悪いのだの何だのと言い合っているのが大手メーカー企業です。そういう縦割りの中で新規事業をやっていこうとすると、永遠に出口が無いわけです。

ただそうは言っても、大手メーカー企業は内部留保がたっぷりありますし、人もたくさんいるし、サプライチェーンや顧客もきちんと確保しておられる。つまりインフラはあるんです。問題はそのインフラの価値を最大限に利用できていない事です。片やスタートアップ企業は、ものすごく熱量が高いし、アイディアはあるんですが、それをスケールするためのインフラがまだ弱い。

折角こちらにインフラを持った会社があり、あちらにアイディアを持った会社があるのなら、2つあわせて共同で新しい事業を興せば、アメリカとか他の国にやられっぱなしではなく、日本型のイノベーションのスキームが出来るんじゃないか、と。そういうことでB.Groveという会社を始めました。

B.Groveは一応会社にはしているのですが、僕の中ではB.Groveと言うのはプロジェクトだと思っています。一件一件のプロジェクトにそれぞれの人たちが集まってきて、プロジェクトベースでビジネスを興して行くという、そういうイメージですね。元々B.GroveはAndy Groveにあやかってつけたのですが、ただA.GroveとつけるときっとIntelのOBから文句がでるので(笑)。まぁAndy Groveは偉大な経営者だったので、尊敬はしておりますが、多分Groveのやっている環境と今はマーケットが違うので、次のステージのやり方があるんじゃないか、ということで、Aの次でBにしました。まあ、Beyond Groveという事で、B.Groveです。

あとGroveって小さな森の意味もあるんですね。マングローブとか言いますよね。僕の中では世界や日本の経済、大きな産業が大きな森だとしたら、小さな森をたくさん作ることで森が元気になってゆくんじゃないか、と。そんなイメージもあって、それで「Grove作ろうぜ」という意味で"Be Grove"としました。小さなプロジェクトベースで小さな森をたくさん作ってゆけば、それが繋がって最終的には日本経済全体が活性化されるようになるんじゃないか、という思いがあって、まぁそういうビジョンを持ってこういう名前の活動を始めました、ということです。

(次回は5月11日に掲載します)