アップルが、独自に設計するAppleシリコンの最新チップ「Apple M5」を発表。今年も、先陣を切ってiPad Proが最新鋭のチップを搭載しました。今回、10月22日の発売前に、13インチのM5搭載iPad Proを試す機会を得ました。2024年モデルのM4搭載iPad Proとの違いや、Appleシリコン以前のiPad Proとの比較も行いながら、最新のM5搭載iPad Proの魅力に迫ります。
Apple独自設計のM5・C1X・N1チップを一気に搭載
iPadシリーズの頂点に君臨するiPad Proは、今年も13インチと11インチの2サイズで展開。それぞれ、カラーバリエーションにはスペースブラックとシルバーがあり、5G対応のWi-Fi+CellurarモデルとWi-Fi単体モデルも選択できます。内蔵ストレージは256GB/512GB/1TB/2TBの4種類。さらに、ストレージ容量の大きな1TBと2TBのモデルは、低反射のNano-textureガラスをオプションとして用意しています。
ベースラインの価格は、11インチモデルが168,800円から、13インチのモデルは218,800円から。2024年のM4搭載iPad Proから価格は変わっていません。おそらく、アップルが自社でAppleシリコンを設計できることと、今回はC1XモデムやN1ワイヤレスネットワークも自社設計によるチップとしたことで、利益率を確保しながら据え置き価格を達成できたのだと考えられます。そろそろiPadを買い替えたり、上位モデルにアップグレードしたいけれど、価格がグンと上がったら嫌だな…と心配していた方々は安堵したのではないでしょうか。
M5搭載iPad Proは、安定感のある通信性能を確保したC1XモデムチップとN1ネットワークチップを載せたことと、USB-Cケーブルによる高速充電に対応したことも、ハードウェア面で進化したポイントです。でも、やはりM5チップにより、Apple Intelligenceをはじめ、さまざまなAI関連の機能やサービスへの対応力が拡大したことが最も大きな特徴です。
M5チップのAIに関わるところでは、3つの大きな改良点があります。10コアGPUは、各コアにAI処理を加速するためのNeural Acceleratorをハードウェアとして追加しています。もうひとつは、16コア構成のNeural Engineをチューンアップして高速化したこと。そしてもう一つがSoCを構成するCPU、GPU、Neural Engineなどの演算ブロックとユニファイドメモリをつなぐデータ伝送経路を、M4チップよりも約30%ほど広げて最大153GBpsにまで帯域幅を持たせたことです。M4チップから、CPUにもNeural Acceleratorが搭載されています。以上をまとめると、新しいApple M5は今後の将来も見据えて、さまざまなAI体験に対応するためのパフォーマンスを底上げしたチップであると言えます。
Apple IntelligenceのAI機能が快適だった
その差は、すぐに実感を伴うレベルなのでしょうか? 新しいM5搭載iPad Proのパフォーマンスを、筆者が使っている11インチのM4搭載iPad Proと比較してみました。
今回は、iPad Proの先行レビュー期間にベンチマークソフトを使った計測が行えなかったので、代わりにApple IntelligenceのAIモデルを使うメモアプリによる画像生成のスピードを実測しました。
iPadOSのメモアプリには、Apple Pencil Proで描いたラフなスケッチとひとことテキストから、きれいなイラストを生成してくれる「画像マジックワンド」というAI機能があります。筆者が投げやりに描いた「UFOに乗ったエイリアン」のスケッチから、Apple Intelligenceのモデルが一瞬で気の利いたイラストを4パターンも仕上げてくれました。
データの生成にかかった時間をストップウォッチで計測すると、わずかながらも違いがありました。M5搭載機は約13秒、M4搭載機は約26秒という結果でした。
続けてiPadOSの写真アプリで、写真の中の不要な被写体を選択・消去してくれる「クリーンアップ」の精度とスピードも比較しました。その結果、やはりM5搭載機の方がわずかな差ではあるものの、M4搭載機よりもオブジェクト選択が1秒から2秒ほど速く処理を完了しました。
Appleシリコン以前のiPad Proと比べてみた
確かにM5搭載機は優秀ですが、2024年モデルのiPad Proからすぐに買い替えるべき選択肢ではないかもしれません。M4搭載機も利便性が向上したApple Pencil Proに対応しているし、13インチは5.1mm、11インチも5.3mmというスリムで軽いサイズ感も一緒です。映像のHDR表示に対応する高精細なUltra Retina XDRディスプレイは、滑らかなスクロール表示とApple Pencil Proによる遅延のない書き心地を実現するProMotionテクノロジーにも対応しています。
ならば、Appleシリコン以前のiPad Proに比べると、飛躍的な進化を実感できるのでしょうか?
筆者の家族は、iPad Proでイラストを描く仕事をしています。2018年から使い込んできた第3世代12.9インチのiPad Proと、イラスト制作アプリの使い勝手を比べてもらいました。ちなみに、本機が搭載するチップはA12X Bionicです。
家族が仕事に使っているイラスト制作アプリは、セルシスの「CLIP STUDIO PAINT」です。2018年モデルのiPad Proでも快適に動作しますが、最新のiPad Proで同じファイルを初めて開いた瞬間、家族は思わず「速い!」と感嘆の声を上げていました。
新旧iPad Proのローカルストレージに保存した120MB前後の画像ファイルを、CLIP STUDIO PAINTアプリで開いてみると、スピードの違いは明らかです。
M5搭載iPad Proでは、Apple Pencilでファイルを選択した瞬間にズバッと開きます。
【動画】最新のiPad Proはファイルを選択してから一瞬で展開します。アプリケーションはCLIP STUDIO PAINT
2018年モデルのiPad Proも頑張ってはいるのですが、もっさりとした印象を受けてしまいます。
【動画】2018年モデルの第3世代12.9インチiPad Pro。最新モデルに比べるとファイルを開くスピードがだいぶ遅く感じられます
購入時のオプション選択について注意すべきこと
次に、同じくiPad Proのローカルストレージに保存した44MB前後の画像ファイルを開き、イラストの一部を構成する複数のレイヤーを同時に選択して、「メッシュ変形」の機能でオブジェクトのシェイプを修正する作業を想定してみました。
M5搭載iPad ProはApple Pencilによる操作に素速く応答します。
【動画】複数のレイヤーに分かれているイラストの画像を変形。最新のiPad Proは操作の結果が素速く反映されます
一方、旧モデルのiPad Proはペンによる操作からかなり遅れて対象のオブジェクトが変形するので、思い通りの形に整えるのが困難です。
【動画】旧モデルのiPad Proで同じことをすると動きが緩慢に感じられてしまいます
iPadでイラストを描いたり、デジタルグラフィックスを制作している方は、特にAppleシリコンになる前のiPadから買い換えると、Apple M5チップの高いパフォーマンスを実感できると思います。Ultra Retina XDRディスプレイは明るく自然な発色が得られます。
購入を本格検討される場合、ひとつ気をつけたいポイントがあります。1TB/2TBの大容量ストレージと一緒に選択できるNano-textureガラスは光の反射と映り込みを抑える効果を備えていますが、保護フィルムやスクリーンプロテクターとの相性が良くありません。iPadでイラストを描く方が多く愛用している「ペーパーライクフィルム」のような、ペンによる書き味に変化を加える特殊フィルムが使えなくなるので、筆者は標準ガラスを選択して、好みのフィルムを組み合わせて書き味を調整する方法をおすすめします。
iPad Proは高価なデバイスですが、これから本格的にAIコンピューティングの時代が訪れた時にも、最新のM5チップを搭載するiPad Proはきっと最前線で存分に活躍してくれるはずです。






