アップルが、M3チップを載せた新しいiPad Airを発売します。今回は、11インチのモデルを発売に先駆けてレポートします。新しいMagic Keyboardと組み合わせればMacBook Airにも負けない使い勝手の良さを発揮する「iPadの集大成」でした。
高パフォーマンスなM3チップ。Apple Intelligenceに準備万端
アップルは、2024年5月にM2搭載iPad Airを発売しました。あれから1年も経っていないこのタイミングでのアップデートには、筆者も意表を突かれました。
おもなアップデートは、2023年に誕生したAppleシリコン「M3」を載せたことと、これに伴うハードウェアコーデックであるメディアエンジンの強化。より多くのビデオファイルが扱えるようになり、処理も高速化します。
とはいえ、M3とM2はチップの性能差が大きく開いているわけではなく、iPad Airが搭載する機能とデザインは変更されていません。どちらもApple Intelligenceに対応するiPadです。昨年M2搭載iPad Airを買った方は、今年のM3搭載モデルに無理して買い替える必要はなく、手もとのM2搭載iPad Airを大切に使い込むことをおすすめします。
M3搭載iPad Airは、11インチと13インチの2サイズ展開。カラーバリエーションやストレージ容量のオプションはM2搭載iPad Airと変わりません。価格も「変更なし」としたところには、昨年M2搭載モデルを購入したユーザーに対するアップルのリスペクトが垣間見られます。
アップルによると、2022年に発売したM1搭載iPad Airに対して、M3チップが搭載する8コアCPUのマルチスレッド処理性能は、M1比で最大35%高速化しています。M3の9コアGPUもまた、グラフィックスの処理性能がM1との比較で最大40%速くなりました。Neural EngineによるAIベースのタスク処理は60%、M1よりもM3が高速化します。同じApple Intelligence対応のiPad Airではあるものの、「M1からM3への買い替え」はまったくもってアリだと言えます。ほかのAppleシリコンを搭載していないiPadからの買い替えも言わずもがな。決断あるのみです。
このあと使用感について触れますが、iPad Air専用のMagic Keyboardがリニューアルされました。価格は、従来モデルから11インチ用は3,000円、13インチ用は1万円も値下げしました。ファンクションキーを付けて、トラックパッドを少し大きくしています。キーの操作感も快適です。iPad Airシリーズであれば、現在のオールスクリーンデザインになった2020年9月発売のA14 Bionicチップ搭載iPad Air(第4世代)以降から互換性を確保しました。反対に言えば、すでにiPad Airに対応するケース一体型のMagic Keyboardを持っている人は、M3搭載iPad Airでも使えます。
Apple Pencil Proは必携アクセサリー
M3搭載iPad Airは、今までの「iPad Airのいいところ」を数多く継承しています。
ひとつは、M2搭載モデルから引き続き搭載する、横向きの12MPセンターフレームカメラです。iPadをMagic Keyboardに装着して、本体を横向きに構えた時にフロントカメラが上部中央の位置になるように配置されています。ビデオ通話の時には、カメラが左右どちらかの側にあるよりも目線を合わせやすくなります。機械学習により、一定範囲の中であれば、カメラの前で動き回るユーザーを画面の中心から外れないように表示する「センターフレーム」の機能にも対応します。
M3搭載iPad Airは、アップルが2024年に発売したApple Pencil Proに対応します。より安価なUSB-C充電のApple Pencilにも対応しますが、触覚フィードバックを確かめながらスムーズに筆記できる「Pro」を筆者は断然おすすめします。
4月から日本語にも対応するApple Intelligenceには、Apple Pencil Proで描いた手書きのラフなイラストから洗練されたイラストを自動生成してくれる「画像マジックワンド」というツールがあります。画像マジックワンドは、iPadOSの「メモ」アプリにも統合されています。例えば、メモアプリで作ったスーパーでの買い出しリストに、ちょっと気の利いた野菜の絵を添えてあげれば、家族が目当ての食材を楽しく探せるかもしれません。
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iPadOSのシステムとApple Intelligenceの両方の言語環境を米国英語に設定して、Apple Intelligenceを試しました。パレットツールに新しく追加される「画像マジックワンド」(赤丸のペン)。メモアプリに書き込んだラフな王冠のイラストもキレイに整えてくれました
アドビのiPad版Photoshopによる写真の加工編集も、Apple Pencil Proを使えば細かな作業が楽になります。iPadOSの「写真」アプリに組み込まれるApple Intelligenceの「クリーンアップ」ツールで、写真に写り込んでしまった不要な被写体を選択・消去する時にも、Apple Pencil Proがあれば作業の効率がグンと上がります。
iPad Airは、トップボタンにTouch IDを搭載しています。花粉が飛び交う春の季節に、マスクをしたまま画面のロック解除が素速くできるTouch IDは重宝します。
今回のレビューでは、11インチのiPad Airを紹介していますが、13インチのiPad Airはイラスト制作のためのデジタルボードとして、あるいは映画や電子書籍を楽しむためのコンテンツビュワーとしても絶好のタブレットです。
新しいMagic Keyboardも買い足したい
新しいiPad Air専用のMagic Keyboardも使い心地を報告します。11インチiPad Air向けのキーボードは46,800円、13インチは49,800円です。
カラーバリエーションはブラックとホワイトの2色があります。ホワイトはエレガントでよいのですが、特にケースの表側は使い込むほどにヨゴレが目立ちやすくなるので、筆者はiPad Airのカラバリに依らずブラックを選ぶ方が正解だと思います。
Magic Keyboardは、堅牢なiPad Airのカバーでもあります。11インチのiPad Airは畳んだ状態で本体の厚さは約1.5cm、iPad Air込みの質量は約1.08kgです。13インチのM1搭載MacBook Airの約1.29kgよりも軽く、最厚部の1.61cmよりもスリムです。画面はMacBook Airよりも小さくなりますが、外出時にバッグからさっと取り出してメールを作成したり、送られてきたドキュメントにApple Pencilでチェックを入れたり、Webや動画の視聴にも最適なコンビだと思います。
キーボードのタイピング感は人それぞれに好みがあるので、できれば実機を試してほしいと思いますが、Magic Keyboardは新設された14のファンクションキーも含めて、1mmのキーストロークながらしっかりとした打鍵感があります。前世代のキーボードが搭載していたバックライトキーが省かれましたが、ガラス製トラックパッドが少し大きくなってマルチタッチジェスチャーの入力操作が安定しました。
パススルー充電ができるUSB-Cコネクターは、キーボードにiPad Airを装着した状態で左側を向きます。iPad AirのUSB-Cコネクターは右側に向くので、短い電源ケーブルでも電源タップからの引き回しが簡単にできます。
完全体となったiPad AirはMacBookにも負けない
iPad Airは、単体でももちろん優秀なタブレットですが、Magic KeyboardとApple Pencil Proを伴うことによって、最強のモバイルワークステーションになります。
Apple Intelligenceは、ChatGPTを選択してWeb検索を行う時など、計算負荷のかかる複雑なリクエストは、セキュアなAppleシリコンによる大規模サーバーベースのAIモデルにつながり、プライベートクラウドコンピューティングで処理を行います。外出しながら仕事などにiPad Airを多用する方は、できれば5Gの常時接続に対応するWi-Fi+セルラーモデルを選ぶ方がよさそうです。
iPad Airは、M2搭載モデルから物理SIMカードが使えなくなりました。物理SIMからeSIMへの変更サービスを実施していない通信事業者もあります。セルラーモデルのiPad Airを購入する際にはeSIMの準備をお忘なく。