2025年2月20日より発売が開始されるNVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 5070 Ti」。今回はGainwardの「GeForce RTX 5070 Ti Phoenix GS」を試用する機会を得たので、RTX 5080 / 4080 / 4070 Tiを比較対象に実力を確かめていく。前世代のRTX 4080 / 4070 Tiに対してどこまで性能が変わったのか、注目したい。
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Gainwardの「GeForce RTX 5070 Ti Phoenix GS」。この製品の日本での価格は原稿執筆時点では明らかになっていないが、RTX 5070 Tiの価格目安は148,800円前後となっている
GeForce RTX 5070 Tiは、AI性能を強化したBlackwellアーキテクチャを採用する「GeForce RTX 50シリーズ」のアッパーミドルモデルだ。その下にはミドルレンジのRTX 5070が存在するが、スペックの差はかなり大きく、CUDAコア数やビデオメモリの容量、メモリバス幅を見てもRTX 5080寄りと言える。
それでカード電力は300W、システム電力要件は750Wとかなり扱いやすくなっており、価格の目安は148,800円からとRTX 4070 Tiの発売時に近い価格設定。前世代のRTX 40シリーズからどこまで性能が伸びているのか気になるところだ。前世代とのスペック比較と、レビュー記事を下にまとめた。
GPU名 | RTX 5080 | RTX 4080 | RTX 5070 Ti | RTX 4070 Ti | RTX 5070 |
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CUDAコア数 | 10,752 | 9,728 | 8,960 | 7,680 | 6,144 |
AI TOPS | 1,801 | 780 | 1,406 | 641 | 988 |
ベースクロック | 2.3GHz | 2.21GHz | 2.3GHz | 2.31GHz | 2.16GHz |
ブーストクロック | 2.62GHz | 2.51GHz | 2.45GHz | 2.61GHz | 2.51GHz |
メモリサイズ | GDDR7 16GB | GDDR6X 16GB | GDDR7 16GB | GDDR6X 12GB | GDDR7 12GB |
メモリバス幅 | 256bit | 256bit | 256bit | 192bit | 192bit |
RTコア | 第4世代 | 第3世代 | 第4世代 | 第3世代 | 第4世代 |
Tensorコア | 第5世代 | 第4世代 | 第5世代 | 第4世代 | 第5世代 |
アーキテクチャ | Blackwell | Ada Lovelace | Blackwell | Ada Lovelace | Blackwell |
DLSS | DLSS 4 | DLSS 3 | DLSS 4 | DLSS 3 | DLSS 4 |
NVENC | 第9世代×2 | 第8世代×2 | 第9世代×2 | 第8世代×2 | 第9世代×1 |
NVDEC | 第6世代×2 | 第5世代×1 | 第6世代×1 | 第5世代×1 | 第6世代×1 |
カード電力 (W) | 360 | 320 | 300 | 285 | 250 |
システム電力要件 (W) | 850 | 750 | 750 | 700 | 650 |
価格目安(発表時) | 198,800円 | 219,800円 | 148,800円 | 149,800円 | 108,800円 |
DLSS 4のマルチフレーム生成の威力を見よ! ゲームとAIが融合する「NVIDIA GeForce RTX 5090」レビュー
https://news.mynavi.jp/article/20250123-3113960/
「NVIDIA GeForce RTX 5080」レビュー! 素の性能でもRTX 4080 SUPERを若干凌駕、DLSS 4でRTX 4090すら圧倒
https://news.mynavi.jp/article/20250129-3118252/
Blackwellアーキテクチャについて詳しくは上記レビュー記事で触れているが、やはり注目は「DLSS 4」だ。
DLSS 3のフレーム生成(Frame Generation)は、フレームとフレームの間に1フレームだけAIによって生成されるが、DLSS 4のマルチフレーム生成(Multi Frame Generation)では最大3フレームの生成を可能にした。1フレーム分のレンダリングで合計4フレームが生み出されることから、DLSS 4に対応したゲームではマルチフレーム生成として「x4」が用意される。
ゲームにもよるが、「x2」や「x3」の設定も可能で、どこまでAIによってフレームを作るかはユーザーが調整可能だ。なお、現在のところマルチフレーム生成に対応するのはRTX 50シリーズだけとなっている。
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DLSS 4では1フレームに対して最大3フレームの生成を可能にするマルチフレーム生成が加わった
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DLSS 4の恩恵はRTX 40/30/20シリーズでも受けられる。ただ、利用できる機能はシリーズによって異なる
マウスやキーボードの入力から画面への反映ラグを、従来よりもさらに軽減する「NVIDIA Reflex 2」、RTX 50シリーズの第9世代NVENC/第6世代NVDECがH.264/H.265コーデックの4:2:2フォーマットに対応、高速で低消費電力のGDDR7メモリの採用なども注目ポイントだ。
性能テスト前にGainwardの「GeForce RTX 5070 Ti Phoenix GS」を紹介しておこう。RTX 5070 TiにはNVIDIAのリファレンスモデルと言えるFounders Editionは用意されていない。これは前世代のRTX 4070 Tiでも同様だった。ミドルレンジのRTX 5070には、Founders Editionが存在するようだ。
GeForce RTX 5070 Ti Phoenix GSはトリプルファンを搭載する大型モデルだ。カード長は331.9mmで3スロット厚となっている。上部のPhoenixロゴにはLEDを内蔵。
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3スロット厚で3連ファンの大型冷却システムが採用されている
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パフォーマンスモードと静音モードを切り換えるスイッチも搭載
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GeForce RTX 5070 Ti Phoenix GSのブーストクロックは2452MHzと定格仕様だ
DLSS 4に頼らずともRTX 4080超え! 消費電力はRTX 4070 Ti同等
さっそく、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。比較対象としてGeForce RTX 5080/4080/4070 Tiを用意した。3DMarkのみ参考としてGeForce RTX 3070を加えている。ドライバに関しては、レビュワー用に配布された「Game Ready 572.43」を使用した。
- CPU:AMD Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド)
- マザーボード:ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO(AMD X670E)
- メモリ:Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G60C36U5B(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)
- システムSSD:Micon Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB)
- CPUクーラー:Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
- 電源:Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
- OS:Windows 11 Pro(24H2)
まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。
RTX 5080に対しては10~25%の差だ。Fire Strike UltraやSteal Nomadなど負荷の高いテストほど差は大きくなっている。その一方で、前世代とは言え上位グレードになるRTX 4080に対してはStell Nomad以外はすべてスコアが上回った。これはかなり健闘していると言ってよいだろう。
続いて、実際のゲームに移ろう。まずは、2月28日に発売を控えた注目のハンティングアクション「モンスターハンターワイルズ」の公式ベンチマークを試そう。このゲームはDLSS 3までの対応。フレーム生成は可能だが、マルチフレーム生成は行えない。
なお、今回は今回はDLSS SRという表記はSuper Resolutionの略ですべてモンスターハンターワイルズは画質ウルトラのプリセットに従って「クオリティ」設定を採用しているが、それ以外のゲームではすべて「パフォーマンス」設定にしている。FGはFrame Generationの略でDLSS 3のフレーム生成だ。MFGはMulti Frame Generationの略でDLSS 4のマルチフレーム生成を指し、1フレームに対して3枚の生成をMFG x4と表記している。
続いて、定番FPS「オーバーウォッチ2」、描画負荷が高いゲームとして「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl」、「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」を用意した。オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレート、S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobylはザリシアの一定コースを移動した際のフレームレート、インディ・ジョーンズ/大いなる円環はバチカンの一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。
なお、S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl、インディ・ジョーンズ/大いなる円環ともDLSS 4対応に含まれているため、RTX 50シリーズではよりフレームレートを伸ばせる可能性がある。
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『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』4K実行時の性能
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『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』WQHD実行時の性能
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『S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chornobyl』フルHD実行時の性能
ここでのテストではマルチフレーム生成を含めていないので、RTX 4080/4070 Tiは同条件になるが、ほとんどのテストでRTX 5070 Tiが上回った。いわゆる“素”の性能でRTX 4080に勝てていると言ってもよいのではないだろうか。S.T.A.L.K.E.R. 2やインディ・ジョーンズのような描画負荷が極めて高いゲームでも4Kで平均60fpsを上回っており、RTX 5070 Tiは余裕で4Kゲーミングに対応できているのが分かる。
続いて、DLSS 4に対応するタイトルを試そう。「マーベル・ライバルズ」、「サイバーパンク2077」を用意した。マーベル・ライバルズは訓練場の一定コースを移動した際のフレームレート、ホグワーツ・レガシーは寮内の一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。
マルチフレーム生成が加わると、RTX 4080を1.5~1.7倍も上回るフレームレートを叩き出す。今後DLSS 4対応のタイトルが増えることを考えると、マルチフレーム対応は非常に心強いところだ。
CGレンダリングや画像生成も試そう
続いて、3DCGアプリの「Blender」を使ってGPUによるレンダリング性能を測定する「Blender Open Data Benchmark」を実行しよう。
一定時間内にどれほどレンダリングできるかとスコア化するテストだ。ここではCUDAコア数の多さがシンプルに効くようで、RTX 4080が5%~15%上回った。
RTX 50シリーズはAIモデルの演算精度として、FP4(4ビット浮動小数点演算)が新たに加わった。ここでは、高品質な画像生成AIのFLUX.1を使って、1,024×1,024ドットの画像を4枚生成するのにかかる時間を「Procyon FLUX.1 AI Image Generation Demo for NVIDIA」を使って測定した。
FP4に正式対応するRTX 50シリーズの強さが発揮される場面だ。今後FP4を活用するAIアプリが増えることを期待したくなる性能と言える。
消費電力は控えめになってより使いやすく
ここからはRTX 5070 Tiカード単体とシステム全体の消費電力をチェックしよう。カード単体はビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を使用した。システム全体はOS起動10分後をアイドル時とし、サイバーパンク2077実行時、Blender実行時の最大値を計測している。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用した。
カード電力はRTX 5070 Tiが300W、RTX 4080が320W、RTX 4070 Tiが285Wとなっている。やはり注目すべきは、ベンチマークではRTX 4080を上回ることが多いRTX 5070 Tiの消費電力が、RTX 4070 Tiとほとんど変わらないという点だ。RTX 40シリーズは電力効率の高さがウリだったが、RTX 5070 Tiはそれを上回っている。
と、ここまでがGeForce RTX 5070 Ti Phoenix GSのテスト結果だ。性能と消費電力のバランスが非常によいGPUという印象だ。マルチフレーム生成に頼らなくても4Kゲーミングに対応できる性能を十分に持っているのは心強い。モンスターハンターワイルズも4K&高画質で楽しめるだけに、RTX 40シリーズの上位モデルがほとんど市場から消えている今、人気になるのは間違いないだろう。
価格は製品によって異なり、148,800円から200,0000円で登場する模様。十分な数が供給されることを願う限りだ。なお、RTX 5070の発売も3月5日に迫っており、近々レビューをお届けすることができるはずだ。