ASUS JAPANは2月4日、同社のノートPC「ZenBookシリーズ」の新モデル「ASUS ZenBook SORA UX3407シリーズ(以下、ZenBook SORA)」を発表しました。1月に米ラスベガスで開催されたCES 2025に合わせ実施された、オンラインローンチイベント「Always Incredible」で発表済みの、「ZenBook A14 UX3407シリーズ」の日本国内向けモデルです。

今回、ASUS JAPANより日本国内での発表、発売に先駆けZenBook SORAの実機をお借りすることができたので、レビューをお送りします。

「こういうのを待っていた」と言いたくなる、Snapdragon X搭載の新モデル

まずはZenBook SORAの基本仕様から確認していきます。今回お借りしたZenBook SORAのボディカラーは、「アイスランドグレー」。独自開発のハイテクセラミックハイブリッド素材「セラルミナム加工」も施されおり、マットな質感ながら樹脂とも違う、さらっとした表面仕上げです。

  • ボディカラーはアイスランドグレー。ハイテクセラミックハイブリッド素材の使用で独特のサラっとした質感は派手さはないものの高級感があります。

  • 約14インチ、発色豊かな有機ELディスプレイを搭載。ディスプレイベゼルも細く、本体カラーもあわせ非常にミニマルでスマートな印象です。

プロセッサにはQualcommの「Snapdragon Xシリーズ」を搭載しています。今回の試用機は上位モデルの構成で、「Snapdragon X Elite X1E-78-100」を採用していました。Snapdragon X Elite X1E-78-100は12コアのCPUコアを持ち、GPUに「Adreno X1-85」も内蔵するなど、非常に高速なプロセッサです。

また、AI処理に特化した「NPU」も搭載し、その性能は最大45TOPSと、Microsoftの定める「Copilot+ PC」の要件も満たしています。

なお、「Snapdragon Xシリーズ」は従来のIntel製CPUとは違う「ARM」アーキテクチャを採用しているため、ZenBook SORAにインストールされるWindowsも「Windows on ARM」とも呼ばれる別バージョンです。ARMに対応しないアプリケーションは「Prism」というエミュレーターを利用し動作させるため、動作が一部緩慢になったり全く動かないものがあることに注意が必要です。

メインメモリ容量は32GB。下位モデルでもメモリ容量は16GBとなるため、ZenBook SORAはCopilot+ PCとしてAI利用も十分に行えるスペックがあると言えます。

SSDはPCI-Express 4.0 x4接続のM.2 NVMe SSDで、容量は1TB。読み書き、どちらも高速に行えるSSDを搭載しているため、持ち運んで使いたいときにサッと立ち上げて使うような用途でもストレスなく利用することが可能です。

外部接続端子も充実しており、本体側面には転送速度が最大40GbpsのUSB Type-Cポートが2つ。さらにHDMIポートとステレオイヤホン・マイク端子もあります。

  • 本体左側面にはHDMIとUSB Type-C×2、オーディオ入出力ポートがあります。

  • 右側面にはUSB Type-Aが1つ。レガシーデバイスとの接続も変換なしに行えるのは利便性が高く好印象です。

USB Type-Cポートは充電にも利用できますが、ACアダプタを繋ぐことで外部接続端子が1つ埋まってしまうことを考えると、複数台使う場合はUSBハブなどを繋いで使うと便利でしょう。意外と嬉しいのはHDMIポートで。プロジェクターや外部モニターを使う際に変換アダプタなしで繋ぐことはできるのは利便性が高いといえます。

また、右側面にはUSB Type-A端子も1つ設けられています。マウスやUSBフラッシュメモリなどの外部記憶装置を繋ぐ際にも直接挿すことができます。

ディスプレイは約14インチ、解像度は2880×1800ピクセルと高解像度の有機ELパネルを採用しています。最大輝度は通常時で400int、HDRでは最大600nitと明るく、リフレッシュレートも最大120Hzと高速なので、写真だけでなく動画でも美しくなめらかに表示することが可能です。

なお、一点気になる点を挙げるとすればディスプレイの表面仕上げが光沢なことでしょう。映像が鮮やかに見られるメリットもありますが、使用者や周りの風景が映り込んでしまうデメリットもあるため、オフィスユースを想定するユーザーには好みが分かれる箇所かもしれません。

ディスプレイ上部には解像度フルHDのWebカメラと、Windows Helloでの顔認証ログオンに対応するIRカメラが備わっています。ディスプレイは180度までは開かないのは少々残念ですが、最大で140度くらいまで開くため、デスク上はもちろん、膝上などに置いて使っても画面が見づらいということはありませんでした。

  • ディスプレイ上部にはビデオ会議などで活躍する高解像度のWebカメラと、顔認証に対応したIRカメラが備わっています。

  • ディスプレイは約140度まで開くことが可能です。膝上での使用でもストレスなく使うことができます。

キーボードは日本語配列で、ホワイトLEDのキーボードバックライトも備わっています。エンターキーなど右側のキーに少々窮屈さは感じますが、変則的なキー配置になっているわけではないですし、キーピッチやキーストロークも十分にあるため、打鍵感は良好です。

トラックパッドも大きく、マウス操作や2本以上の指を使ってのジェスチャー操作もスムーズに行うことができます。

  • キーボードは変則的な配列もなく打鍵感も良好です。キーボードバックライトも備わっています。

付属する充電器はUSB Type-C出力で、最大出力は90Wとモバイルノートとしてはかなりの高出力です。重量は電源コード部も含めると400グラム弱となるため、持ち運びの際はサードパーティ製のコンパクトかつ軽量なものと組み合わせると、より機動性を高められるでしょう。

  • ACアダプタは小型ながら出力は最大90Wとハイパワー。

  • 電源コードも込みにするとそこそこ重量があるため、持ち運ぶ場合はサードパーティ製のACアダプタの導入も検討すると良さそうです。

ワイヤレス通信はWi-Fi 7とBluetooth 5.4に対応しているため、ワイヤレスでも高速な通信や多数の周辺機器との接続が可能です。

バッテリー容量は70Whと大容量なので、元々アイドル時の消費電力の低いSnapdragon X Elite X1E-78-100との組み合わせで長時間のバッテリー稼動が可能になっています。

本体重量は構成にもよりますが、約900g~980g。今回お借りした実機では988gとなり、Snapdragon Xシリーズを搭載するWindowsノートPCとしては、最軽量クラスです。本体サイズも310.7×213.9×13.4~15.9mmと、約14型のディスプレイを搭載するモバイルノートとしては小さく、重量やバッテリー容量含め、個人的にはSnapdragon Xシリーズを搭載するノートPCとして「こういうのを待っていた」と感じられる仕様になっています。

ZenBook SORAの性能、使用感をチェック

続いてZenBook SORAの性能や使用感をチェックしていきます。性能チェックはベンチマークソフトを使用し、筆者の私物のノートPC「FMV LIFEBOOK UH(2023年モデル)」と、一部テストではスコアを比較しながらZenBook SORAのパフォーマンスを確認しています。

まずはCPUの単体処理性能を数値化する「GeekBench 6」を使い、ZenBook SORAに搭載されているSnapdragon X Elite X1E-78-100の性能を確認しました。

結果はシングルコアで「2380ポイント」、マルチコアで「1万4560ポイント」でした。比較用のFMV LIFEBOOK UHのCPUは「Core i7-1360P」で、こちらのスコアはシングルコアで「2484ポイント」、マルチコア「1万223ポイント」でした。

シングルコアではZenBook SORAが僅かに劣るものの、マルチコアでは大きく上回るスコアを記録しています。PC利用時、立ち上げているアプリケーションだけでなくバックグラウンドで動作しているアプリケーションも多く存在しますので、マルチコアでのパフォーマンスが良好なのは、普段使いで今までのノートPCよりも快適に利用できるといっていいでしょう。

次にPC全体のパフォーマンスを測定する「PCMark10」を用い、ZenBook SORAの普段使いでのパフォーマンスチェックを行いました。今回はテスト中に利用されるアプリケーションの対応状況もあり、PCMark 10内の「Application」テストを実行しています。

結果はZenBook SORAが「1万2679ポイント」、比較用のFMV LIFEBOOK UHが「1万1437ポイント」でした。先ほどのCPU単体テストの結果の通り、総合パフォーマンスではZenBook SORAの方が高い結果を示しました。

続いて「ゲーム」についてもテストを行いました。 ゲームの多くは従来のWindowsへの対応のみで、ZenBook SORAのようにARMアーキテクチャのCPUを搭載したWindows PCへ正式に対応していません。そのため動作しない、しても動きが悪いといったことが考えられます。

今回は「ファイナルファンタジー14 黄金のレガシー ベンチマーク」を、ディスプレイ解像度をフルHD、ウインドウモードをフルスクリーン、画質は「最高画質」と「標準品質(ノートPC)」で実行しました。

テスト結果は最高品質で「3247ポイント」で、設定変更推奨になりました。元々デスクトップPCなど、グラフィックボードを搭載したPC向けの画質設定ですので、この結果は予想通りともいえます。その上で「標準品質(ノートPC)」の結果を見てみると、こちらは「6540ポイント」で評価としては「やや快適」となりました。

またZenBook SORAはAI性能が高く、Microsoftが定める「Copilot+PC」の要件も満たしています。まだWindows 11にAI機能の追加、統合が進んでいないため、その性能を発揮できるシーンは少ないのですが、生成AIの「Copilot」はスムーズに動作しますし、標準の「ペイント」に追加された「Image Creator」も試してみたところ、筆者の一切絵心のない「パンダのようなもの」から、ちゃんと可愛らしいパンダを描いてくれました。

どちらも生成結果が出てくるまでの待ち時間も短く、生成中にファンがうるさくなるといったこともありませんでした。まだまだ利用できる機能は少ないとはいえ、今後AI機能が充実してきた際、積極的に利用しても快適に利用できるパフォーマンスがZenBook SORAにはあると言っていいでしょう。

ベンチマークテストやAI機能以外、あくまでも筆者が色々試しての所感になりますが、ZenBook SORAを使っていて、特に特定の操作で動きが悪くなったりするような場面はありませんでした。

バッテリーについてもベンチマークテストが対応しないためソフトを用いての計測結果を出すことはできないのですが、オフィスアプリケーションやブラウジングを中心としたライトな使い方であれば、約20時間ほどバッテリー稼働しました。

動画視聴も2時間映画を5本流してもバッテリーはまだ半分以上残っていたため、本体の軽さとあわせ外出時にバッテリー残量を心配する必要はないでしょう。

完成度の高い新世代のモバイルノート、それがZenBook SORA

1年ほど前の話になりますが、Snapdragon Xシリーズを搭載するノートPCに対し筆者が期待していたのはバッテリーの持ち、そして本体重量の2点です。

QualcommのSnapdragonシリーズといえば手のひらサイズのスマートフォンに搭載されているCPU(SoC)であり、あれだけコンパクトなハードウェアでもサクサク動作に長時間のバッテリー動作を実現しているため、これがノートPCになったらきっと動作速度も速くバッテリー持ちもいい、もちろん重量も軽い機種がたくさん出てくるのではないだろうかと予想や期待を抱いていました。

しかしCopilot+ PCとして各社から昨年一斉に投入された際、本体重量は1kgを超えるものがほとんどで、筆者の期待は裏切られたというのが本音です。

そこからまた半年強が経過し、いわばSnapdragon Xシリーズを搭載するノートPCとしては2世代目として登場したZenBook SORAは、まさに筆者が夢見たノートPCそのものとも言えるような製品に仕上がっていました。動作、スタミナ、重量、どの項目でもモバイルノートとしては不満の出ない結果を示してくれたZenBook SORAは、十分に市場のゲームチェンジャーになり得るノートPCだと思います。