Lenovo×AMDが考えるAI。より増すオンデバイスAI、PCの役割

ドイツ・ベルリンで9月3日~7日の期間中開催された見本市「IFA 2026」にあわせて、Lenovoは独自に製品発表イベントを開催しました。この中でMacBook Neoに真正面から競合しにいく「IdeaPad Vibe」に加えて、スワロフスキーで高級感を強めた「motorola razr with Crystals by Swarovski」、ノートPCの新製品「ThinkBook 14 Gen 9」「ThinkBook 14x Gen 2」、モニターでは「ThinkVision P34WD-4v」「P27UL-40」などを発表したほか、RTX Sparkを搭載する「Yoga 9n / 2-in-1」、画面が左右ににゅーっと伸びていくコンセプトモデル「Project Swan」、ファンレスなのにアクティブ冷却を実現する「Project AeroBlade」まで実験的なプロダクトを多数お披露目しました。

  • IdeaPad Vibe。豊富なカラバリ、キーキャップのカスタマイズ性で個性を主張します

    IdeaPad Vibe。豊富なカラバリ、キーキャップのカスタマイズ性で個性を主張します

  • きらっきらなスワロフスキーをあしらい、レザー風の質感で高級感を強調するmotorola razr with Crystals by Swarovski

    きらっきらなスワロフスキーをあしらい、レザー風の質感で高級感を強調するmotorola razr with Crystals by Swarovski

  • Yoga 9n。RTX Sparkの搭載で極めて高い性能を持ち運んで利用できるように

    Yoga 9n。RTX Sparkの搭載で極めて高い性能を持ち運んで利用できるように

  • Project Swanプロトタイプ。ディスプレイが左右にのびています

    Project Swanプロトタイプ。ディスプレイが左右にのびています

  • ファンを搭載しないため、抜本的な構造刷新で前例のない薄さを実現した「Project AeroBlade」

    ファンを搭載しないため、抜本的な構造刷新で前例のない薄さを実現した「Project AeroBlade」

しかし、個人的に印象に残ったのはベルリンに集めたメディア向けにこっそり開催された“ファイアサイド・チャット”。これは火を囲んで雑談するようなイメージというか、特定のテーマについて語り合う、要するに重役対談コンテンツです。

レノボからはIntelligent Devices Group and International Markets部門でSVPとCMOを務めるEmily Ketchen氏(以下、エミリー氏)が参加し、加えて特別ゲストとしてAMDからClient and Graphics Marketing部門に所属するFrank Azor(以下、フランク氏)氏が登壇。

寡聞にしてエミリー氏の方は存じ上げなかったのですが、AMDから参加されたフランク氏はRadeon製品の文脈で著名な人物。彼自身もレジェンダリー・ゲーマーだとこのイベントでも話されていた通り、AMD Radeon製品の新製品・新機能にかかわる話題でネット上のコミュニティとやり取りする風景が見られることがあり、今回ベルリンで参加した対談で実際に話されているところを眺められて驚きました。

  • ホテルの一室で行われた小規模なものでした

    ホテルの一室で行われた小規模なものでした

PCやスマートフォン、タブレットなどにAI機能を搭載する動きが急速に進んでいく中で、AI時代にはどのデバイスを使うかではなく、ユーザーがデバイスを乗り換えても同じAI体験を継続できることが重要になるとLenovoとAMDは考えています。LenovoとAMDの関係者による対談では、AIによってPCの役割がどのように変化するのか、そしてPC・スマートフォン・タブレット・ウェアラブルを横断する個人用AIが、どのように実現されるのかが語られました。

  • 大々的に行われた製品発表会の方は、案外ごくふつうの内容でした

    大々的に行われた製品発表会の方は、案外ごくふつうの内容でした

技術に人間が合わせるのではなく技術が人間に合わせる

対談ではまず、ユーザーが1日の中でもさまざまな役割を持っていることが指摘されました。Lenovoのエミリー氏は自分を例に挙げ、ある時は大企業で働くビジネスユーザーとしてPCを利用し、別の時間には中小企業の取締役として仕事をし、さらに家庭に戻れば親や家族としてテクノロジーを利用するとのこと。このように同じ人物でも状況によって必要な機能は変化するため、単純にビジネスユーザーや一般消費者といった人物像だけで製品を区分することは難しくなっていると話します。

エミリー氏は、Motorolaのスマートフォンからタブレット、ビジネス向けPCまで、利用するデバイスがその時々のニーズに応じて柔軟に対応する必要があると説明。そのためにはAIだけでなく、セキュリティや処理性能、ツールなどを含め、デバイス間をスムーズに移動できることが重要だと述べています。

そして、この考えを「技術が私に合わせて対応するべきであり、私が技術に合わせて対応するべきではない」と表現しました。技術は直感的で、つながっていて、ユーザーに配慮したものであるべきで、最終的にはAIがユーザーの一歩先を行くようになるとしています。

  • Lenovo SVP / CMO、Intelligent Devices Group and International MarketsのEmily Ketchen氏

    Lenovo SVP / CMO、Intelligent Devices Group and International MarketsのEmily Ketchen氏

仕事用ノートPCでもゲームやAI処理ができる時代に

AMD側からは、こうした体験を実現するためにはPCを使う際に性能そのものが摩擦にならないことが重要だとの説明がありました。例として挙げられたのが、企業向けノートPCでゲームをプレイするケース。5年~10年前であれば、企業向けノートPCは十分なグラフィックス性能を備えていないことも多く、ゲームを動かすこと自体が困難でした。しかし現在ではノートPCのグラフィックス性能が向上したほか、FSR 4のようなAIを活用する技術によってゲーム体験を滑らかにすることも可能になっています。

さらに、バッテリー駆動中のノートPCでゲームをプレイしつつ、同じPCでエージェント型AIのワークロードを実行するといった使い方もできるようになりました。1台のデバイスが仕事からゲーム、AI処理まで幅広い用途をカバーするようになり、「仕事用PC」「ゲーム用PC」といった従来の区分も変化しつつあります。

これに伴って、製品を売る際の考え方も変わっているとのこと。従来のマーケティングでは特定のペルソナを設定し、それを基準に製品を開発する手法が重視されていたそう。今後はユーザーの属性よりも、ユーザーがその時に何をしているのか、どのような流れでデバイスを使っているのかを見ることが重要になると話します。AIがユーザーの行動を理解するようになれば、単にグラフィックス性能やバッテリー駆動時間を提供するだけでなく、ユーザーが次に求めることを予測して機能を提供できるようになると述べられました。

  • AMD、Client and Graphics MarketingのFrank Azor氏

    AMD、Client and Graphics MarketingのFrank Azor氏

対談ではLenovoとAMDのパートナーシップについても両社から言及されていました。AMD側のフランク氏は、AMDが優れたシリコンを開発したとしても、チップだけではユーザー体験にはならないと話します。

「もし今、あなたに我々のチップの1つを渡しても、あなたはそれを見つめて賞賛するだけです。それは点灯しません。ディスプレイはありません。ユーザーインタフェースはありません。バッテリーは接続されていません。ソフトウェアもありません(会場で一同笑っていました)」

AMDがPCの基盤となるシリコンを提供する一方、ディスプレイやバッテリー、ソフトウェアなどと組み合わせ、最終的な製品体験としてユーザーに届ける重要な部分を、Lenovoをはじめパートナーに担ってもらっている役割だと話します。フランク氏はどちらか一方がその責任を十分に果たさなければ、最終的にはユーザー体験が悪化すると説明しつつ、「どれだけマーケティングをしても、製品体験が良くなければ問題は解決できない」と述べています。このため両社は単にプロセッサを供給してPCメーカーが製品を作るという関係だけではなく、製品設計から開発、市場投入、メッセージングまで密接に協力していると強調しました。

ドラスティックな変化の先にオンデバイスAIの活路を見る

両社はファイアサイドチャットを通して、AIによって市場の変化が加速して新しいモデルやツールが次々と登場する中では個々の製品ではなく、ポートフォリオ全体とユーザーの行動を捉えることが重要になると話していた点が印象的でした。

Lenovoはさらに、AIは特定のアプリやデバイスで“使いに行くもの”から、PC、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルなどをまたいでユーザーと“一緒に動く存在”になると説明。処理内容に応じてデバイス上のローカルAIとクラウドAIを使い分けるハイブリッドAIを軸に、PCではローカル推論、スマートフォンでは個人に密着したAI、さらにタブレットやウェアラブルデバイスも組み合わせて、1つの個人用AIが複数のデバイスを横断してユーザーを支援する環境を目指しています。

企業でも同様に、データセンターやエッジ、オフィス、従業員のデバイスなど、データが存在する場所に応じてAIを動作させる考えです。「最高のAIは必ずしも最大のモデルを持つものではない」と述べ、ユーザーを理解し、プライバシーを尊重しながら自然に支援するAIを実現していくとしています。

  • 今はまだそこまで脚光を浴びずにいるLenovoのAIソリューション「Qira」。レノボやモトローラデバイスを横断してパーソナルAIとして動作し、いつかAppleでいうSiri AIのような存在感が出てくるかも

    今はまだそこまで脚光を浴びずにいるLenovoのAIソリューション「Qira」。レノボやモトローラデバイスを横断してパーソナルAIとして動作し、いつかAppleでいうSiri AIのような存在感が出てくるかも