モトローラ・モビリティ・ジャパンは11月20日、折りたたみスマートフォン「razr 40」を発表しました。8月に発売された「razr 40 ultra」に続いて、今年2機種目の縦折りモデルを立て続けに登場する狙いはどこにあるのでしょうか。

  • motorola razr 40

    motorola razr 40

折りたたみスマートフォンをより多くの人に

モトローラが国内で報道関係者向けの新製品発表会を開催するのは今年に入ってから3回目。6月の発表会では久しぶりのキャリア向けモデル(ワイモバイル向け)となるミドルレンジの「moto g53y 5G」とSIMフリー版の「moto g53j 5G」、7月には折りたたみのフラッグシップモデル「razr 40 ultra」とミドルハイレンジの「edge 40」が登場しました。

2023年度の出荷台数は昨年度の2倍近くとなる見込み。内訳としてはミドルレンジのmoto gファミリーが半数以上を占めることは変わりませんが、やはり大手キャリア向けかつ売れ筋価格帯の機種として返り咲いたmoto g53y 5Gの存在が大きいようです。ミドルハイのedge 40も好調で、モトローラ・モビリティ・ジャパンの松原丈太社長は「(Snapdragon)695だけで停滞感のあった市場にひとつ面白い端末を出せたのではないか」とコメント。FeliCa・防水対応や薄型軽量で使いやすいサイズが好評だと言います。

  • ワイモバイル向け「moto g53y 5G」などが好調で、2023年の出荷台数は前年比2倍近くに

    ワイモバイル向け「moto g53y 5G」などが好調で、2023年の出荷台数は前年比2倍近くに

そして今回発表されたのは、再び折りたたみの「razr 40」、そしてソフトバンク向けの兄弟機「razr 40s」の2機種です。

razr 40とrazr 40sはソフトウェアやカラーバリエーションの違いのみなので実質的に同一機種とみなすとしても、縦折りタイプの折りたたみスマートフォンだけで無印とultraの2グレード展開というのは他社の製品ポートフォリオではあまり見かけません。

  • 先に発売された上位機種の「razr 40 ultra」

    先に発売された上位機種の「razr 40 ultra」

まだ日本国内ではさほど大きな需要があるとはいえない折りたたみスマートフォン、それも同じ縦折りタイプという狭い範囲で二手目を打つ理由は、「テクノロジーの民主化」だと松原氏は語ります。

大型サブディスプレイによる新しい使い勝手の提案など先進性に振ったキャラクターのrazr 40 ultraに対し、razr 40はより身近な製品というわけです。

他社も含めて、折りたたみスマートフォン=フラッグシップ=性能面でもハイエンド、というのが当たり前になっていますが、それでは当然高価な端末になり、興味をそそられても実際に買い替えの選択肢として検討し手に取る人は限られてしまいます。そこでrazr 40はSnapdragon 7 Gen 1を採用しミドルハイ相当の性能に抑えた分、購入方法によっては10万円を切るほどの手を出しやすい価格に収まっています。

  • 先進的なフラッグシップモデルの「razr 40 ultra」に対し、折りたたみスマートフォンをより身近な存在にするのが「razr 40」の役目

    先進的なフラッグシップモデルの「razr 40 ultra」に対し、折りたたみスマートフォンをより身近な存在にするのが「razr 40」の役目

また、高嶺の花だった折りたたみスマートフォンを手の届く価格帯に持ってくるという流れとは別の視点から、「ユーザーにもっと選択肢を」「モバイル業界にもっとワクワク感を」という意義もあると言います。

普通の板状のスマートフォンも年々進化してはいますが、かつてのように大きく使い方が変わって暮らしが便利になるような変化は減っています。性能や機能を細かく比較して選べるある程度詳しいユーザーならまだしも、そうでない人ならなおさら「どれも同じ」と感じ始めているはずです。

コモディティ化が進み当たり前の存在になるのは必ずしも悪いことではないのですが、そうなると自然と価格やスペックでしか選ばれなくなっていき、凝り固まった市場になっていくのでメーカーにとって好ましい状況とは言えません。そういった観点からも、限られた人だけが選ぶ高価なフラッグシップモデルに留めておくのではなく、より広く選ばれる価格帯の機種でこそフォルダブルという単純明快で伝わりやすい新たな価値を訴求していきたいということでしょう。

  • モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 松原丈太氏

    モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 松原丈太氏

ソフトバンクも「修理体制」と「10万円を切る安さ」で後押し

新製品発表会にはrazr 40sを取り扱うソフトバンクからも郷司雅通氏(モバイル事業推進本部 本部長)が登壇し、通信キャリア目線での本機種の狙いも語られました。

ソフトバンクとモトローラのパートナーシップとしては、ワイモバイルから2万円台の戦略的な価格で発売された先述のmoto g53y 5Gが記憶に新しいところですが、2021年には「razr 5G」がソフトバンク初の折りたたみスマートフォンとして発売されています。

今でこそ横折り型の「Google Pixel Fold」がラインナップに加わっていますが、他の3キャリアの折りたたみスマートフォンラインナップの中核となっているGalaxyシリーズの取り扱いがないソフトバンクにとって、モトローラとの関係の重要性が増していることは想像に難くありません。

  • モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 松原丈太氏/ソフトバンク モバイル事業推進本部 本部長 郷司雅通氏

    モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 松原丈太氏/ソフトバンク モバイル事業推進本部 本部長 郷司雅通氏

日本国内での状況はさておき、世界を見れば折りたたみスマートフォンの2023年出荷台数予測は前年比1.5倍というデータもあり、注目されつつあるジャンルです。ソフトバンクとしてもここに新たなビジネスチャンスがあると判断し投入を決めたとのことですが、具体的なニーズを把握するべく行った独自調査により、折りたたみスマートフォンを検討しているユーザーの主な「不安要素」が2つ見えてきたそう。

まず1つは「壊れやすそう」。ディスプレイを折り曲げる構造上、やはりどうしても通常のスマートフォンよりは外部からの力に弱いのは否めませんし、他社製品では温度変化や経年による折り目付近の表示不良などもまれに報告されています。視覚的にもやはり、素人目にも「大丈夫かな」と不安になるところはあるでしょう。

この点に関しては、ソフトバンクでは万全の修理体制で不安を払拭する考えです。全国92店舗のiCracked Storeで即日修理を受けられ、「あんしん保証パックネクスト」に加入していれば無料で済みます。

なお、端末自体も耐久性には十分配慮されたものとなっていることも申し添えておきます。特に、初期の折りたたみスマートフォンでは砂やホコリなどの異物が入って故障の原因となりやすかったヒンジ部分を念入りに強化しており、IP5Xの防塵性能を確保しています。

  • 全国92店舗のiCracked Storeで修理を受けられる。この取り組みは「あんしん保証パックネクスト」対象のPixelやAQUOSスマートフォンで先行して行われてきた

    全国92店舗のiCracked Storeで修理を受けられる。この取り組みは「あんしん保証パックネクスト」対象のPixelやAQUOSスマートフォンで先行して行われてきた

そしてもう1つのハードルは「端末代金が高い」ということ。フラッグシップのrazr 40 ultraではなくrazr 40が選ばれた理由はここにあると見て良いでしょう。郷司氏は「10万円を切る価格でフォルダブルスマホを一気に普及させていきたい」と意気込みを語ります。

razr 40/40s自体が定価約12万円と折りたたみスマートフォンとしては安めの価格であることに加え、ソフトバンクでは条件を満たせば割引が効き、一括99,680円となり10万円を下回ります。また、新機種発売時には恒例となっている「PayPayガチャキャンペーン」も行われ、抽選で3,000円相当~20,000円相当のPayPayポイントがもらえるのも見逃せません。

  • 購入条件次第で10万円を切るのは折りたたみスマートフォンとしてはかなり安い

    購入条件次第で10万円を切るのは折りたたみスマートフォンとしてはかなり安い

なお、最安を狙うならオープンマーケット版(SIMフリー版)のrazr 40も要検討です。MVNOでは「razr 40 ultra」「edge 40」に続いてIIJmioの独占扱いとなり、11月22日~11月30日の期間限定でMNP特価79,800円での販売が予定されています。