モトローラ・モビリティ・ジャパンは6月7日、報道関係者向けの新製品発表会を開催し、「moto g53j 5G」「moto g53y 5G」の2機種を発表しました。

2022年9月に発表された「moto g32」や4月に発表された「moto g13」など、新機種そのものはコンスタントに登場し続けているのですが、今回のように記者を招いて製品の詳細や背景について説明の場が設けられたのはおよそ1年ぶり。それだけ同社にとって重要な機種であることがうかがえます。

  • SIMフリー版の「moto g53j 5G」。6月16日に発売予定で、直販価格は34,800円

    SIMフリー版の「moto g53j 5G」。6月16日に発売予定で、直販価格は34,800円

  • ワイモバイル版の「moto g53y 5G」。6月29日に発売予定で、オンラインストアでの価格は21,996円

    ワイモバイル版の「moto g53y 5G」。6月29日に発売予定で、オンラインストアでの価格は21,996円

好評の「日本仕様」ミドルレンジスマホを継続投入

今回発表された2機種はどちらも、FeliCa(おサイフケータイ)への対応やIP52相当の防水・防塵仕様など、日本市場特有のニーズにも応えるべく、しっかりとローカライズを施した上で投入される機種です。

搭載SoC(Snapdragon 480+)や画面サイズなどの基本スペックを見ていくと、機種名からも想像がつくように、海外で展開されている「moto g53」を元にした日本向けモデルであることがわかります。

2機種のうち、moto g53j 5Gはオープンマーケット向けのSIMフリーモデル、moto g53y 5Gはワイモバイルから発売されるキャリアモデルです。メモリ容量やカラー展開に違いがありますが、ほとんどの仕様は共通しています。

moto g53j 5Gは6月16日発売で、直販サイト「moto store」での価格は34,800円。moto g53y 5Gは6月29日発売で、ワイモバイルオンラインストアでの価格は21,996円。MNPでシンプルM以上のプランを選べば、一括1円で購入できるお財布に優しい機種です。

  • 普及価格帯のmoto gファミリーの新機種として、SIMフリー版の「moto g53j 5G」とワイモバイル版の「moto g53y 5G」が発表された

    普及価格帯のmoto gファミリーの新機種として、SIMフリー版の「moto g53j 5G」とワイモバイル版の「moto g53y 5G」が発表された

モトローラ・モビリティ・ジャパンの松原社長は直近のビジネスアップデートを振り返りつつ、日本でのモトローラのイメージとして「グローバルの仕様ばかり考えていてあまり日本のことは考えていないメーカーと捉えている方も多いと実感している」とコメント。

たしかに、モトローラのスマートフォンといえば、グローバルで展開している機種に対応バンドなど最小限のローカライズのみを施して日本市場に持ち込んだものが多いというイメージは筆者自身も持っていました。もっともそれは悪い事ではなく、スマートフォンの進化が速かった時代であれば最先端の製品をいち早く投入できることにつながっていましたし、成熟した現在のスマートフォン市場であれば製品のコストパフォーマンスに直結します。

グローバルモデルに近い物を出すことが強みにもなっている反面、よりユーザー層を広げていく上では、おサイフケータイのように日本特有でも使い慣れた人にとっては当たり前になっている機能を取り入れていく必要があると判断。従来のスタンスに近い商品展開も続けつつ、よりローカライズに力を入れた「日本仕様」の機種も選択肢として用意するようになったのが直近の大きな変化です。

  • moto g53y 5Gの主な特徴。FeliCa対応のほか魅力的な機能を盛り込みながら、5G対応スマートフォンとしては最廉価クラスの2万円台前半に抑えた

    moto g53y 5Gの主な特徴。FeliCa対応のほか魅力的な機能を盛り込みながら、5G対応スマートフォンとしては最廉価クラスの2万円台前半に抑えた

ターニングポイントとなった「moto g52j 5G」(2022年6月発売、IP67防水防塵+FeliCa対応)に続き、5G対応スマートフォンとしてはエントリークラスに入る機種にもFeliCa対応を拡大しました。このような取り組みは今後も、他のクラスの機種も含めて続けていくといいます。

かつては消極的だったローカライズに本腰を入れて取り組めるようになった背景として、グローバルでの端末の開発体制が見直され、基板設計に入る前の早い段階から各市場での取り扱い意向などのヒアリングが入るようになったと松原氏は明かします。平たく言えば、各国向けに端末を作り分けていく前の大枠を決める段階から市場特有のニーズも含めたフィードバックが反映されやすい環境が整ってきたということです。

FeliCa以外でも、たとえば5Gの周波数帯のなかでNTTドコモが運用している「n79」などは世界的にあまり使われておらず、キャリアモデル以外では省略されがちな部分です。moto g53j 5Gも残念ながらn79には非対応ですが、先述のように開発事情による日本向けの調整のハードルは下がってきており、需要を見極めつつ検討していきたいと前向きな回答でした。

  • 2022年度の日本市場およびAPAC地域でのビジネス状況。日本での出荷台数は前年度比121%に伸びた

    2022年度の日本市場およびAPAC地域でのビジネス状況。日本での出荷台数は前年度比121%に伸びた

  • 世界的にも好調に推移しており、特に北米・南米では高いメーカー別シェアを誇る

    世界的にも好調に推移しており、特に北米・南米では高いメーカー別シェアを誇る

  • 日本市場で現在重視しているという4項目。規模の大きいメーカーならではの調達力によるコストダウンなど強みは活かしつつ、ローカライズに舵を切った

    日本市場で現在重視しているという4項目。規模の大きいメーカーならではの調達力によるコストダウンなど強みは活かしつつ、ローカライズに舵を切った

  • 2020年以降の日本市場における歩み

    2020年以降の日本市場における歩み

キャリアモデルでも再び存在感を示すきっかけになるか

日本仕様モデルを引き続き強化していくというSIMフリー市場での動き以上に、ワイモバイル向けモデルの登場が今回の大きなトピックです。

  • モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 松原 丈太氏とソフトバンク 常務執行役員 寺尾 洋幸氏

    モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長 松原 丈太氏とソフトバンク 常務執行役員 寺尾 洋幸氏

近年はキャリアとの関係が薄れておりSIMフリー市場が主戦場となっていたモトローラですが、2021年には折りたたみ型のプレミアムスマートフォン「razr 5G」をモトローラとしては9年ぶりのソフトバンク向け製品として納入していますし、親会社のレノボが扱うタブレット端末も含めると、ソフトバンク系列とレノボ/モトローラの関わりは以前から続いていたところではあります。

しかし、スマートフォンのコモディティ化に加えて半導体不足や円安、総務省による割引規制など様々な要因が追い風となってメインストリームが低~中価格帯に移りつつある現在の市場環境において、好調に契約数を増やしているサブブランドであるワイモバイルでの採用、それも「通常価格が約2万円、割引で1円」という戦略機種のポジションを得られたことは対キャリアのビジネスも復調していく上で大きな出来事といえるでしょう。

  • 歴代RAZR

    余談だが、会場の片隅にはいくつかの歴代製品が展示され華を添えていた。特にMotorolaブランドの代名詞でもある「RAZR」に関しては、先述のrazr 5Gのほか、元ネタであるフィーチャーフォン時代のRAZR(M702iS/M702iG)や2012年発売の薄型スマートフォン(IS12M)など複数のモデルが並んでいた。先日海外で発表されたばかりのrazr 40シリーズもぜひ日本上陸を期待したいところだ