次に、大型放射光施設SPring-8にて、8種類の混合膜に対してX線回折測定が実施された。すると、PCBMとY12を用いた混合膜では、PTzBTもPTzBTEも高い結晶性が示された。その一方で、IT-4FとY6を用いた混合膜では、PTzBTEは高い結晶性が示されたものの、PTzBTは非晶性であることが確認された。つまり、ポリマーの結晶状態とOPV特性は非常によく相関することが明らかにされたのである。
PTzBTは、PCBMやY12など凝集性の高いn型有機半導体と組み合わせると、溶液から薄膜を形成する過程において、両者が相分離することにより結晶状態を形成するという。それに対し、IT-4FやY6などの凝集性の弱いn型有機半導体を組み合わせると、溶液において互いによく混合して、その状態を保ったまま薄膜化するため、非晶状態を形成すると考えられるとした。
一方、PTzBTEは側鎖のエステル基上の酸素原子が、ポリマー主鎖の硫黄原子と非結合性相互作用を持つため、同主鎖が非常に剛直な構造となるとする。そのため、凝集性が非常に高く、どのようなn型材料を組み合わせてもうまく相分離し、結晶状態を形成すると考えられるとした。
今回の実験では、半導体ポリマーを結晶化できた混合膜を用いたOPVほど、高い変換効率が示された。またそれだけでなく、n型有機半導体も結晶化させることで、より高い変換効率が得られることも解明された。
研究チームは今回の研究成果について、将来的なOPVのさらなる高効率化に向けて新たな設計指針を示す、非常に重要な成果だとしている。