名古屋大学(名大)は3月14日、大量生産可能なカーボンナノチューブとして国内で製造される「MEIJO eDIPS」を用いて、インジウムスズ酸化物を用いない有機薄膜太陽電池を開発したことを発表した。

同成果は、名大 大学院工学研究科の松尾豊 教授、 林昊升 助教、Miftakhul Huda特任助教、波戸元陸氏(修士課程2年)、宮田大輔(修士課程1年)、成均館大学校のIl Jeon准教授、名城ナノカーボンらで構成される共同研究グループによるもの。詳細は2022年3月9日付の応用物理学会刊行雑誌「Applied Physics Express」(オンライン版)に掲載された。

軽量かつフレキシブルな有機薄膜太陽電池は、次世代太陽電池の1つとして期待されているが、透明電極には一般的にレアメタルであるインジウムを含むインジウムスズ酸化物が用いられており、レアメタルフリー化が求められている。研究グループでは、インジウムスズ酸化物透明電極の代わりに、カーボンナノチューブ(CNT)を使った薄膜透明電極を有機薄膜太陽電池に適用する研究を進めてきており、これまでは海外でドライプロセスを用いて製膜されたCNT薄膜を用いて研究が行われてきたが、ドライプロセスによる成膜は大面積化が容易ではなかったという。そこで今回の研究では大面積化と大量生産に有利な国産のウェットプロセスによって成膜されたCNT薄膜を用いた有機薄膜太陽電池の作製に挑んだという。

具体的には、スプレー塗布によりCNT薄膜を成膜する手法を採用。実際に作製された有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率は4.93%を達成し、ウェットプロセス成膜によって作製されたCNT薄膜を透明電極として用いた有機薄膜太陽電池としては、最高クラスの変換効率を達成することに成功したという。

今回考案された手法は、CNTの粉末さえあれば、それを溶媒に分散させてスプレー塗布し、有機薄膜太陽電池の電極を形成できることを示すもので、研究グループでは国内には、今回用いたCNT以外にもさまざまなCNTが製造されていることから、原理的にはそれらも使用可能であるとしている。

また、今回の研究成果は、ペロブスカイト太陽電池などの透明電極としても利用可能であるほか、有機EL素子や有機トランジスタなどにも適用可能だと考えられるともしている。

  • 有機薄膜太陽電池

    CNT薄膜を透明電極とした有機薄膜太陽電池の断面走査型電子顕微鏡写真と電流-電圧曲線 (出所:名大プレスリリースPDF)