ノベルクリスタルテクノロジー(ノベルクリスタル)、ファインセラミックスセンター(JFCC)、兵庫県立大学の3者は12月9日、X線回折現象の1つである「異常透過現象」を利用し、レントゲン撮影で人間の体を検査するように「β-Ga2O3(β型酸化ガリウム)」結晶内部のさまざまな格子欠陥を短い測定時間かつ非破壊で全数可視化することに成功したと発表した。

同成果は、ノベルクリスタル 第一研究部の佐々木公平氏、JFCC 材料技術研究所 機能性材料グループの姚永昭主任研究員、兵庫県立大大学院 理学研究科の津坂佳幸准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学協会が刊行する材料科学を扱う学術誌「APL Materials」米国物理学協会が刊行する応用物理学全般を扱う学術誌「Applied Physics Letters」にそれぞれ1本ずつ論文として掲載された。

シリコンに比べて結晶成長が難しい次世代パワーデバイス向け材料のβ-Ga2O3では、格子欠陥を含まない完全な結晶の作製がまだできておらず、結晶の大面積にわたる欠陥を非破壊で検出・分類する手法の開発が望まれており、「X線トポグラフィ観察法」が期待されているという。

同観察法は、欠陥周囲に生じた結晶面のわずかな湾曲によるX線回折の乱れを利用し、X線回折強度の分布画像から格子欠陥を検出するというものだが、β-Ga2O3はガリウムによるX線の吸収が強く、結晶の内部深くへの侵入はできないことから、これまでは結晶最表面から深さ0.02mmまでの欠陥しか観察できなかったという。このような背景のもと、研究チームは今回、X線の異常透過現象を利用し、欠陥の全数検出を行うことにしたとする。

異常透過現象は、高い完全性を持つ厚い結晶でしか起こらないX線の回折現象とされる。原子面間隔と同じ周期を持つ定在波は、その腹あるいは節が必ず原子面の位置と一致する。原子面を節とする定在波が発生している状態では、X線の吸収が急激に減少するため、透過するX線(透過波)の強度が増大する(異常透過)ため、本来X線に対して不透明な厚い結晶が、あたかもX線と相互作用をしない透明な物質であるかのように見えるのだという。

通常の強いX線吸収が起こる状態では、透過波は弱くなるが、異常透過が発生している状態では、透過波と回折波の2つの極めて強いスポットが現れることが確認されたという。これにより、蛍光板を退避させ、カメラで透過波の強度分布を撮影すれば、X線照射領域内の欠陥分布が得られること、ならびに結晶を走査すれば、全面像が得られることが示されたとする。