さらに、スペクトル変化が時間に対して線形的かもしくは対数的に起こるのかが調べられたところ、宇宙風化作用におけるスペクトル変化は線形的に起こることが判明。ある単位面積を考えた場合、宇宙風化作用によってスペクトル変化する領域が、宇宙風化作用を受けていない領域を覆い尽くさない場合は線形的に変化することが予測されるが、それが証明されたことになるという。
また、1000年程度では宇宙風化作用によるスペクトルの変化は顕著に起こらないことも判明したことから、もし表層年代が1000年程度のシーラのようなスペクトルを持つ暗い小惑星があるとわかった場合、その表層があまり宇宙風化が受けていないケースにも使えるとしている。同様の手法を用いて、たとえばD型小惑星よりも赤い天体のスペクトル変化は数百年では変化しないことも確かめられたという。
2022年9月26日、NASAは小惑星65803「ジジモス」の衛星「ジモルフォス」に探査機「DART」を衝突させる実験を実施した。その表層から大量のイジェクタが飛び出したことが、探査機や望遠鏡の観察で確認され、少なくとも同小惑星の表層はシーラと同様にリフレッシュされたことがわかった。
欧州宇宙機関は、同小惑星とその衛星を観察するため、探査機「Hera」を2026年にはランデブーさせる計画だという。なお、同機には「はやぶさ2」で搭載された熱カメラの姉妹機も搭載される予定だという。同小惑星とその衛星はS型小惑星で、シーラとはスペクトルもアルベド(反射能)も異なる。ただし、室内実験では数千年程度の宇宙風化作用ではスペクトルは変化しないであるという点では一致しており、今回の研究成果からすると、少なくともジモルフォス表層はHera探査機到着後も新鮮な表層を観測できることが期待されるとしている。