9月6日にドイツのベルリンで開幕したエレクトロニクスショー「IFA 2024」に、今年はパナソニックが久しぶりに一般来場者にも公開するブースを展示しています。
会場には欧州を中心に展開する新しい製品が並び、同社が世界規模で取り組む二酸化炭素の削減と循環型経済の確立に関する企業の取り組みも紹介しています。
テクニクスから初のアンプ内蔵ワイヤレススピーカー
最初に、同社が秋から日本でも発売を予定するテクニクスの新製品をレポートします。
「SC-CX700」はWi-Fi、BluetoothまたはUSBなど有線による接続方法が選べるデジタルアンプ内蔵のブックシェルフ型スピーカーシステムです。
欧州の販売価格はペアで2,500ユーロ(約40万円)を想定。チャコールブラック、シルキーグレイ、テラコッタブラウンの3色があり、旭化成が開発した人工皮革「Dinamica」を使ってソフトで贅沢な手触りを持たせたデザインも特徴です。
スピーカーユニットは同軸構造。テクニクス独自の「JENO Engine」を中核とするフルデジタルアンプの技術に「Model-based Distortion Cancelling (MBDC)」という、スピーカーの振動板をコントロールして不要な振動を抑える高音質化技術を掛け合わせてピュアなサウンドを実現しています。フロント側にバスレフポートを設けて、小柄ながらパワフルな低音も出せるスピーカーです。
Wi-Fi再生はグーグルのChromecast機能をビルトインしているので、直接SpotifyやAmazon Music HD、インターネットラジオのストリーミングを受けて聴くことができます。またARC対応のHDMI入力も搭載。例えばテレビサイドに置いて、映画やゲームのサウンドを本格的なスピーカーで楽しむというライフスタイルにも応えます。
グランクラスのラインナップに加わるアナログレコードプレーヤー「SL-1300G」も発表されました。想定価格が3,000ユーロ(約47万円)という高級機です。テクニクスが昨年発売したアナログレコードプレーヤー「SL-1200GR」に初搭載した低ノイズのモーター駆動技術である「ΔΣ-Drive」(デルタシグマドライブ)を採用しています。
パナソニックは今から10年前にベルリンで開催された「IFA 2014」で、2010年に生産を終了していたテクニクスブランドの復活を大々的に発表しました。現在はワイヤレスイヤホンにもテクニクスブランドの商品ラインナップが拡大しています。
秋には日本でも発売されている最上位モデルの「EAH-AZ80」に新色“Midnight Blue”を追加します。高級感と艶のある良い色だと思います。日本での発売予定については言及されていませんが、ぜひ実現して欲しいです。
欧州の生活スタイルの変化に合わせた家電が好調
調理家電は、パナソニックが2023年に欧州導入を果たしたエアフライヤーが好調です。ドイツの食事といえば「ウィンナーにポテトとビール」を一番に連想するかもしれません。ところが、特に現在は若年層を中心に有機食品やグルテンフリーなど健康的な食事を楽しむ意識が高まっています。
食文化の変化に伴い、油を使わずに美味しく加熱した料理ができるパナソニックのエアフライヤーは、5リットルと6リットルのラインナップがそれぞれ好評を得ているといいます。5リットルの「NF-CC500」には秋以降、新色のオリーブグレイが加わります。
美容家電は男性用のモジュール式パーソナルケアシステム「マルチシェイプ」が人気です。スティック状のメインユニットの先端に、電動シェイバーやトリマーなど様々な用途のアタッチメントを装着して「1台で何役も兼ねる」ことができます。電動歯ブラシにもなるところがとてもユニークです。
日本未発売の製品ですが、出張の機会が多くあるビジネスパーソンを中心にきっと強い引き合いが得られるのではないかと思います。今年のIFAでは男性の頭髪や髭を整えるための新しいトリマー、フットケア、フェイシャルブラシなど4つの新しいアタッチメントを発表しています。
日本で発売中の「ラムダッシュ パームイン」メンズシェーバーが8月に欧州上陸を果たしました。外装が異なる900sに700sという2種類のモデルを展開しています。仕様は国内モデルと概ね変わりません。
「長く使える家電」のためにパナソニックが取り組むこと
この2つの男性用美容家電は、パナソニックが目指す二酸化炭素の削減と循環型経済の実現にも深く関わる製品設計思想を持つ製品として、ブースでスポットライトを当てていました。
マルチシェイプは、従来複数種類に分けて販売していた男性用のパーソナルケアシステムを「ひとまとめにする」というアイデアにより、従来の同カテゴリ製品の製造リソースを約60%削減しているといいます。アタッチメントを買い足すことにより、用途の幅を広げながら「長く使える家電」であることも特徴として打ち出しています。
パームインメンズシェイバーもまた、従来であればスティック形状の本体の先端に装着されるような形でデザインされていたシェイバー部分を独立させることで、部品点数を大幅に削減。特に環境負荷の高いプラスチック素材の使用量は、従来型のシェイバー製品に比べて約40%抑えることに成功しています。
パナソニックではユーザーの環境で役目を果たした洗濯機などの家電製品を回収して、プラスチック素材をリサイクルする取り組みにも力を入れています。IFAの会場には、回収された家電から純度の高いリサイクルポリプロピレン樹脂をつくり、同社の製品などに再度利用するアップサイクリングの取り組みを紹介しています。
ほかにもパナソニックが日本国内では2023年から開始した、検査済み再生品(リファービッシュ製品)を提供する「Panasonic Factory Refresh」の事業についても、家電を再生してサーキュラーエコノミーを推進する取り組みとしてパネル展示等を使って紹介しています。
素材の再生利用、およびリファービッシュ事業の展開についてはパナソニックが厳格な品質管理のもと、自社の工場設備で行う必要があります。IFA 2024のブースではまだそれぞれの日本国内における取り組みを発信する段階に止まっていますが、パナソニックが目指す「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立のために、今後は世界展開に向けた検討も継続的に進められるようです。
IFAの展示を起点に、同社の環境に対する前向きな取り組みが多くの来場者に伝わり、パナソニックの高品位なリファービッシュ製品への関心が高まることも期待しましょう。