半導体のリバースエンジニアリング会社であるChipWorksや半導体市場動向調査会社であるVLSI Researchを買収し、半導体情報提供の業務を拡大している加TechInsightsは、SMICが7nmプロセスを使って受託生産していることを確認したと明らかにした。
具体的には、新興ファブレスIC設計会社である加MinerVa SemiconductorがSMICに製造委託したビットコイン採掘用SoC(MINERVA7)をTechInsightsがリバースエンジニアリングしたところ、SMICの7nmプロセスが採用したことを確認したとしている。
ArF液浸のマルチパターニングで実現か?
SMICは、中国解放軍と結びつくことにより米国の国家安全保障を脅かしているとして、米国政府が輸出規制を行う対象企業の一覧であるエンティティリストに載せられており、「10nmプロセス以下の半導体を製造するための米国製半導体製造装置」のSMICへの輸出が禁じられている。
しかし今回の調査結果が事実だとすれば、そうした最先端半導体製造装置が利用できないにもかかわらず、7nmプロセスを使用したSoCの製造に成功したことになる。
TechInsightsによると、これまでSMIC製の半導体をリバースエンジニアリングした中で、もっとも先進的なテクノロジー製品であり、スケーリングされたロジックとメモリビットセルを組み込んだ典型的な7nmプロセスを採用しているという。「中国が欧米の技術に依存することを減らすことに成功しており、中国の半導体産業にとって重要な意味がある」とTechInsightsは分析している。
SMICは、米国の制裁により10nm以下のプロセス用製造装置を入手できないものの、ほとんどの製造装置は14nmプロセスと共用であるため、規制の意味がないと言われてきた。ただし、露光装置だけは、7nm以降のプロセスではEUVを活用するのが他社での通例となっているものの、SMICはいまだにEUV露光装置を入手できていないはずである。EUV露光装置は米国製ではなく蘭ASMLが手掛けているが、米国政府が蘭政府に圧力をかけて輸出許可を出さぬように要請している。ASMLは、中国市場の将来性に注目しており、中国にEUV露光装置を輸出しないのは自社の意思ではないと明言している。
従来のDUV(ArF液浸)露光装置を用いたマルチパターニングを活用すれば、プロセス工程数は増加するものの7nmプロセスでの製造は可能である。実際、TSMCの7nmプロセスの第1世代品も、DUV露光装置を用いたマルチパターニングにより、リソ-エッチング工程を繰り返して製造されていた。