実際には、LPAAT法の実験炉において、成長に使用するシードの種類(HVPE製、SCAAT製)の違いによる成長後の外観や結晶性などの品質分析から、大きな差が出ることが確認されたとするほか、今回の共同研究枠組みの成果に基づき、三菱ケミカルがSCAAT製として商標登録した高品質GaNシードを用いてLPAAT法により成長させられた結晶は、外観が透明かつ平坦であり、結晶モザイク性についても低いこと(対称面・非対称面のX線ロッキングカーブ半値全幅が20秒以内)が確認されたとする。

  • フォトルミネッセンススペクトル

    LPAAT法により、高品質なSCAATシード上で成長させられたGaN単結晶の外観、結晶構造特性、およびフォトルミネッセンススペクトル (出所:東北大プレスリリースPDF)

またフォトルミネッセンススペクトルも、12Kでは高純度な半導体で観測される束縛励起子の再結合によるバンド端発光強度が深い準位の発光と比較して約3桁高く、室温においても自由励起子の再結合によるバンド端発光が支配的であり、高純度なGaN結晶であることが確認されたともする。

今回の成果を受け、研究チームでは、LPAAT法を活用した高品質なGaN単結晶基板が普及していけば、信頼性に優れるGaN縦型パワートランジスタに代表されるGaN-on-GaNデバイスの研究が促進され、早期に実用化されていくことが期待されるとしている。

  • GaNを用いた縦型パワートランジスタの模式図

    GaNを用いた縦型パワートランジスタの模式図 (出所:東北大プレスリリースPDF)

なお今後については、量産用大型オートクレーブ運用に活用され、LPAAT法にて高品質かつ大口径なGaN基板の量産技術の実用化を目指すとしており、成長温度のさらなる最適化や、それにより作製されたGaNの輻射・非輻射再結合レートや空孔型欠陥濃度などを定量することにより、LPAAT法によるGaN単結晶の光学的・電気的な特性をさらに向上させるとしている。