FFLO超伝導状態に特徴的な超伝導の空間分布は、超伝導が部分的に壊されたスピン分極の空間分布から把握することが可能であり、この状態のNMRスペクトルは、特徴的な形状(Double-horn型)を示すことが、これまで岡山大学の市岡教授、町田教授(当時)らの理論研究により示されていた。
それを受けて今回は、超伝導臨界磁場(Hc2)近傍の磁場領域で詳細に17O核のNMR実験が行われ、限られた磁場-温度領域でこの特徴的なNMRスペクトルが見られることを解明し、空間分布を持った超伝導状態の存在が示されたとする。また、今回のNMRの結果を基にして、Sr2RuO4におけるFFLO超伝導の相図が作成されたところ、同物質ではFFLO超伝導状態は1.3T程度の低磁場で実現していることが判明したという。
これまで、FFLO超伝導の候補物質では10Tを超える高磁場実験から報告されていたが、Sr2RuO4のFFLO超伝導状態は1.3T程度と、1桁近く低い磁場で実現していることから、FFLO超伝導状態を解明するための走査型顕微鏡による実空間イメージングなど、さまざまな測定が可能となると研究チームでは説明しており、FFLO超伝導状態の研究が今後に進むことが期待されるとしている。