アップルが、第3世代となる新しいiPhone SEを発表しました。見た目の新鮮さには欠けますが、スマートフォンに詳しい専門家はどんなインパクトや価値を感じたのでしょうか。ITジャーナリストの山口健太さんに解説してもらいました。

  • アップルが発表した新しいiPhone SE(第3世代)

「寸分たりとも変わらない」デザインに価値がある

新しいiPhone SEは、これまでのモデルの基本デザインをそのまま継承しています。これは「つまらない」との見方もできますが、見慣れた4.7インチの画面、Touch IDによる指紋認証、そして多くの豊富なアクセサリーが変わらず使えることを意味します。

  • 第2世代のiPhone SEと同じ基本デザインを継承した

世の中では「折りたたみ」など斬新な形状のものが注目されがちですが、そういう要素がないのであれば、「寸分たりとも変わらない」ほうがユーザーにとって価値があると筆者は考えています。

新しいiPhone SEにあわせて追加された新色のケースも、iPhone 7、iPhone 8、第2世代iPhone SEと共通で使えることが保証されています。2014年に発売されたiPhone 6以降、4.7インチのiPhone向けに膨大な数のアクセサリーが作られてきましたが、それらの多くが無駄にならないのも利点といえます。

  • 新しいiPhone SE用のケース。iPhone 7以降の4.7インチモデルと互換性がある

A15 Bionicの搭載で写真や動画の画質向上が期待できるワケ

もう1つの特徴はプロセッサーです。一般的に、廉価版のスマホには廉価版のプロセッサーを搭載するのが通例ですが、新しいiPhone SEが搭載する「A15 Bionic」は、上位モデルであるiPhone 13と同じ最新チップです。

  • 新しいiPhone SEのCPU性能は、iPhone 8との比較で1.8倍高速という

アップルは第2世代のiPhone SEでも、当時としては最新のA13 Bionicを搭載した実績があります。アップルはプロセッサーを自社開発している強みを活かし、今回も最新チップを惜しみなく投入してきたといえます。

プロセッサーの性能向上により、アプリやゲームの操作感が良くなるだけでなく、写真や動画がどう変わるかにも注目です。最近のスマホは、高度な画像処理によって画質が決まるため、カメラ自体は同じでも、プロセッサー性能が上がると実行できる処理が増え、画質がよくなることが期待できるためです。

5G対応については、電力消費や重量面での不安もありました。しかし、スペック上のバッテリー駆動時間は、動画再生が第2世代よりも2時間伸びて15時間になっています。さらに本体重量は4グラム軽くなっているなど、そうした不安を払拭してきた印象です。

気になるのは価格です。新しいiPhone SEは第2世代モデルよりも8,000円ずつ高くなった一方で、現在携帯キャリアはiPhone 13などを大幅に値引きして販売しています。今後リリース予定の「iOS 15.4」では、マスクを着けたまま画面ロックを解除する機能が加わることもあり、その使い勝手次第では安くなったiPhone 13シリーズも選択肢に入ってくるでしょう。

  • iPhone 13シリーズは各キャリアが積極的に値引き販売をしており、販売条件や販売価格次第ではこちらも検討する価値がある