スマートフォンやタブレットで動画や音楽を楽しんでいると、音の迫力が若干物足りなかったり、もう少しいい音で聴きたい……と思ったりすることがある。そんなときに活用したいのが、ポータブルBluetoothスピーカーだ。

ポータブルBluetoothスピーカーはその名の通り持ち運びしやすいサイズのものが多く、スマホなどとワイヤレスでサッとつなげて使える。ものによっては防塵防水に対応し、水回りやアウトドアシーンで使える製品もあるので、ヘッドホンやイヤホンは使いたくない(使えない)場所で好きな音楽を楽しみたいときにひとつあると重宝する。

さまざまな選択肢の中から、今回は「1万円台の比較的買いやすい価格帯で、個性的な特徴も備えたBluetoothスピーカー」という基準で、3つの製品を集めてみた。取り上げるのは、JBL「CHARGE 5」、ソニー「SRS-XB33」、Tribit「StormBox Pro」の3機種。年末年始のおうち時間や、屋外で感染対策をしながら行うアクティビティのお伴を選ぶときの一助になれば幸いだ。

JBL「CHARGE 5」:実売約1.7万円

  • JBL「CHARGE 5」

2021年に75周年を迎えたJBLから、5月に登場したBluetoothスピーカー「CHARGE 5」(2021年5月発売/実売約17,000円)。同ブランドのCHARGEシリーズの最新機種として、内部構成を刷新し、新たにクリアな高音域を実現するツイーターを追加して音質を強化したのが大きな特徴だ。

  • iPhone 12 miniと接続して、JBL Portableアプリを立ち上げたところ

具体的には、52×70mm径ウーファーと20mm径ツイーターを各1基搭載し、左右に80mm径パッシブラジエーターも装備。CHARGEシリーズの中でも、スケール感が大きく厚みのあるJBLプロサウンドが楽しめるとする。出力は30W。

Bluetooth 5.1に準拠しているが、対応コーデックは明らかにしていない。実機で試したところでは、SBCのみの対応となるようだ。Bluetooth関連の機能としては、最大100台までの同社製ワイヤレススピーカーを接続して一斉に音楽再生できる「PartyBoost」などを備えている。なお、専用アプリとして「JBL Portable」が用意されているが、それほど多機能ではなく、一度ペアリングしたら使うことはあまりないかもしれない。

  • 側面の80mm径パッシブラジエーター

IP67の防塵・防水に対応するタフネス設計で、ガッシリと頑丈そうな作りになっている。ザラッとしたファブリック調の手ざわりで、持ち運ぶときに手から滑り落ちる心配はしなくても良さそうだ。

本体サイズ/重さが223×94×96.5mm/約960gと、ポータブルスピーカーとしては比較的大柄か重量級で、1リットルのペットボトルよりは小さいものの、そこそこ大きい。小柄な人にはちょっと持ち歩きにくく感じられるかもしれない。カラーはブラック、レッド、グレー、ブルー、スクワッド(迷彩調)の計5色から選べる。

ちなみに、CHARGE 5の見た目はボトルっぽいデザインだが、縦置きにしたり、ドリンクホルダーに収めたりして聴くといった使い方はできない。そういった使い方をしたい向きには、スピーカー構成は異なるものの、もう少しコンパクトで持ち歩きやすい「FLIP 6」(実売約12,100円)がオススメだ。

  • 本体正面の操作ボタン。電源ボタンとBluetoothボタンにはLEDを内蔵しており、暗いところでも操作しやすい

バッテリー容量が7,500mAhと大きめで、最大20時間の音楽再生が可能なだけでなく、USB-A端子と手持ちのスマートフォンをケーブルでつないで、モバイルバッテリー代わりにもできるので便利だ。なお、CHARGE 5本体の充電端子はUSB Type-Cで、充電時間は約4時間となっている。

  • 充電用のUSB Type-C端子(中央左)に加えて、本体下部のフタを開けるとUSB-Aが1系統あり、モバイルバッテリーとして利用可能だ

今回は3製品の音質チェックにあたり、イーグルス「Hotel California」、宇多田ヒカル「One Last Kiss」、Crystal Kay「Motherland」といった楽曲を聴いている。また、ABEMAやNetflixといった映像配信サービスの動画(音声)もいくつか再生してみた。

CHARGE 5の場合、音量を上げていくと、そのコンパクトなサイズからは想像できないほどの迫力ある低音が楽しめ、ツイーターを追加しているおかげで中高域の伸びもかなり良いように感じられた。正対して聴いていると歌声が一歩前に出てくる感じで、ボーカルをじっくり堪能したい楽曲とは相性が良さそうだ。

音の広がりに関しては、3機種の中ではちょっと狭く感じられたが、その一方で動画の人の声(台詞)がキレイに聞こえたのが印象的だった。人の声を聴き取りやすくするような機能が入っているわけではないが、ボーカルや動画の台詞などのキレイさを求める向きにはマッチする。

個人的には、このドッシリとしたサウンドにはHotel Californiaが一番なじむように感じられた。懐の深い、余裕のある再生音がCHARGE 5の持ち味といえそうだ。一方で女性ボーカルの楽曲の場合、まれに耳を突くような鳴り方になることもあり、聴く音源によっては相性が良くないこともあるかもしれない。

ソニー「SRS-XB33」:実売約1.6万円

  • ソニー「SRS-XB33」

ソニーでおなじみの、迫力ある低音と多色ライティングが楽しめるEXTRA BASS(XB)シリーズの「SRS-XB33」(2020年7月発売/実売約16,050円)。ポータブル機器用の「Music Center」アプリと組み合わせることでさまざまな設定が行え、今回の3機種の中ではもっとも多機能な製品といえる。

  • iPhone 12 miniと接続して、Music Centerアプリを立ち上げたところ

外からはあまり見えないが、フロントのスピーカーユニット2基の振動板のカタチを、従来の丸形からタマゴのような非対称形(48×70mm)に変えているのが特徴的だ。これには振動板を大きくして音質を上げつつ、コンパクトな本体サイズも維持する狙いがあるとのこと。丸形でないスピーカーユニットでは音の歪みが生じやすいが、ソニーが長年培ったオーディオ技術を採用して高音質化を図ったという。

外から見えるところでは、大型のパッシブラジエータを側面に各1基装備して十分な低音がでるように工夫している。全体の出力は30W。

  • 側面の大型パッシブラジエータ

Bluetooth 5.0準拠で、対応コーデックはSBC、AAC、LDAC。LDACをサポートするAndroidスマートフォンであれば、iPhoneとAACコーデックで接続したときよりも良いサウンドが期待できる。Bluetooth機能関連ではこのほか、最大100台までの対応スピーカーと連携可能な「パーティーコネクト」にも対応する。

  • LDAC対応スマホとLDACコーデックで接続したところ

本体サイズ/重さは246×106×97mm(幅×奥行き×高さ)/約1,100gで、3製品の中ではもっとも重く、サイズ感はJBLのCHARGE 5と近い。持ち運ぶこともできるが、どちらかというと定位置を決めてじっくり音を聴くスタイルに合っているだろう。マルチカラーのラインライトとスピーカーライトによるライティング機能を備えているのも大きな特徴だ(詳細は後述)。

本体はIP67の防塵防水対応で、海などでも使える防錆仕様となっている。外装にファブリック素材を採用していて、手に持ってみると、CHARGE 5よりは少しキメ細かなザラザラ感が伝わってくる。カラーはブラックとベージュの2色から選べる。

連続再生時間は、LEDイルミネーションを消してSTAMINAモードにした状態で最大約24時間、低音強化したEXTRABASSモードにしてLEDイルミネーションもつけた状態で14時間。スピーカーの充電端子はUSB Type-Cで、充電時間は約5時間。USB-A端子を備え、XB33をモバイルバッテリー代わりにすることもできる。

  • 本体下部のフタを開けると、USB Type-CとUSB-Aが各1系統あり、モバイルバッテリーとしても使える。ペアリングなどの各種操作ボタンも備える

XBシリーズの製品というだけあって、XB33も量感のある低音をしっかり実現している。ソニー製品ならではの特徴として、デジタルアンプS-Masterに加えて独自の音質補正機能「DSEE」を装備しているため、ストリーミング音楽サービスなどの圧縮音源も音質劣化を感じにくく、広がりのある音で再生できるのが好印象だ。

DSP処理によって歓声や拍手、余韻部分を効果的に拡散し、ライブ会場にいるような臨場感が得られるという「ライブサウンドモード」を備えているのも面白い。本体正面のボタンを押すだけでオン/オフでき、このモードで聴くのが一番バランス良く広がりもあって良い感じ。変に広がり感が誇張された感じもなく、聴きやすい。にぎやかな曲を好んで聴くなら、ライブサウンドモードは常時オンでいいだろう。

なお、バッテリー持ちを重視する向きには「スタミナモード」も用意されているが、音の広がり感が乏しいので、よほどのことがなければ使う機会はあまりなさそうだ。

  • 本体上面右にライブサウンドモードのボタンを備える

XBシリーズのBluetoothスピーカーの特色といえばもうひとつ、本体内蔵のLEDイルミネーションが挙げられる。光り方をカスタマイズすることもでき、定番のMusic Centerアプリからある程度変更できるのだが、基本的にはプリセット設定を選んでいくスタイルとなる。

DJ効果やライティングを手動でカスタムできる「Fiestable」アプリを使うと、自由にさまざまな発光色やパターンを選んだり、直感的なサウンドエフェクトをかけたりできてもっと楽しい。このアプリは英語表記なので多少とっつきにくさはあるが、同アプリを入れたスマホを傾けたり振ったりしてサウンドやライティングを直感的に変えることもでき、英語が分からなくてもとりあえずは遊べる。基本的には複数人で集まって使う機能だと思うが、2〜4人くらいでもカラオケ的な感じで十分楽しめるだろう。

サウンドに関してはジャンルを選ばず、そつなく鳴らせるので万人受けしそうだが、音の良さや使い勝手を突き詰めるだけでなく、アプリ連携によるお遊び機能もそなえていて、夜のパリピ的な(もしくはオタ芸でも構わないが)イベントっぽい使い方もできるのがXB33の面白いところ。このサイズ・価格帯のポータブルBluetoothスピーカーとしては、かなり攻めた1台だと思う。

Tribit「StormBox Pro」:9,999円

  • Tribit「StormBox Pro」

価格と性能のバランスが取れたコストパフォーマンスの良さをウリにしている、新興ブランド・Tribitが2021年4月に発売した「StormBox Pro」(9,999円)。タテに長い本体にシリコン製のハンドルを備え、持ち運びやすいデザインを採用しているのが特徴で、持ってみても980gという重さをあまり感じさせず、小柄な人でも扱いやすそうだ。しっかり固定されているフックやバーなどがあれば、StormBox Proをヒョイッとひっかけて使うこともできる。

本体サイズも96×180mm(直径×高さ)と、そこまで大きくは感じない。IP67準拠の防塵防水対応で、アウトドアユースに支障はなさそうだ。ファブリック調のざらりとした手触りはCHARGE 5、XB33と似ている。

  • 壁面のフックに吊り下げてみたところ

側面にツイーターとパッシブラジエーターを各2基、下向きにウーファー1基を搭載し、360度全方向に音を広げる設計が特徴。独自のX-bassモードも備え、迫力ある重低音も鳴らせる。出力は40W。

Bluetooth SoCにクアルコム「QCC3008」を採用し、Bluetooth 5.0に準拠。この価格帯のポータブルBluetoothスピーカーとしては珍しく、aptXコーデックもサポートしており、対応するAndroidスマートフォンとの組み合わせでより良い音が期待できる。さらに、StormBox Proを2台用意すれば、同時に同じ音を鳴らす「パーティーモード」や、ステレオ再生ができる「ステレオモード」にも対応する。なお、StormBox Pro用のスマホアプリは用意されていないが、価格を抑えたシンプルな機種ということもあり、個人的には不満はない。

  • 手ごろなポータブルBluetoothスピーカーとしては珍しく、aptXコーデックに対応する

実際に音を鳴らすと、360度サウンドをうたっていることもあってほどよい広がり感があり、それでいて分厚いサウンドもしっかり楽しめる。底面に下向きのウーファーを備えているためか、テーブルや床に置いて使うと低音がブイブイと膨らみがちになるので、基本的にはどこか安定した場所に吊して使うのが良さそうだと感じた。

容量5,000mAhの大容量バッテリーを2つ内蔵し、最大24時間の長時間再生も可能としており、実際に使ってみてもなかなかバッテリー切れにはならない印象だ。フル充電までに7時間もかかる点は、ちょっと気になるところではあるが……。スピーカーの充電端子はUSB Type-Cで、さらにUSB-A端子も備え、StormBox Proをモバイルバッテリー代わりにできる。

新興ブランドということで知名度は決して高くはないが、こちらも買いやすいBluetoothスピーカーの選択肢のひとつとして推しておきたい。

  • 本体下部のフタを開けるとUSB Type-CとUSB-Aがひとつずつあり、モバイルバッテリー代わりにもできる