新型コロナによりDXが加速したと言われる。ITベンダーにとっては嬉しいニュースかもしれないが、ユーザーには必ずしもそうではないようだ。Harvard Business Reviewが「Does Your Team Really Need Another Digital Tool?」として、デジタルツールの導入で注意すべきポイントを示している。

この1年半余りで世界は大きく変わった。働き方も大きな影響を受け、リモートワークの導入が進んだと言うところも多いだろう。一方で、リモートワークを可能にするWeb会議、コラボレーションなどのデジタルツールが一気に押し寄せたと感じている人も少なくない。実際、コンサルティング企業のMcKensy & Companyの昨年10月の調査によると企業は顧客とサプライチェーンのデジタル対応、そして社内オペレーションのデジタル化を3-4年分進めたと言う。また、デジタルあるいはデジタル化された製品のシェアは7年分加速したと報告している。現在ではさらに加速していることが予想される。

従業員からは混乱も聞こえるという。コーネル大学と仮想ワークスペースのQatalogの調査によると、「デジタルオフィスでテクノロジーが"暴れ狂っている"」とのこと。43%が、「特定の作業をするために複数のツールを切り替えるのに多くの時間を無駄にしている」と感じていると言う。従業員は「動揺している」とまとめている。

記事では、営業担当の例をとって現場の混乱を紹介している。見込み客にリーチしたい場合、あるアプリで見込み客の情報を調べて、それを別のアプリにコピペするなどのことを経て、やっと最後にセールスの電子メールとなる。体力も想像力も残っていないので、ありきたりの営業ピッチで終わってしまうという。ツールを使って便利になるはずが、ツールに合わせて仕事をしなければならないーーとなれば、本末転倒になってしまう。このような状況を解決するにはどうすれば良いのか?記事では3つのアドバイスをしている。

1)一つの製品のようにテックツール群を設計する
各ツールやソフトウェアを単体で見るのではなく、スタックとして考えると言うものだ。

ツールはそれぞれがメリットを謳っており、それらは魅力的に映る。しかし、導入するときにメリットを中心に考えるべきではない。考えるべきは従業員のフローにツールがどうフィットするかだ。従業員がどのように作業をしているのか、そこでツールがどのように支援できるのか。

ユーザー側は新しい技術が入ってくると使い方を学ばなければならない。負担が大きくなると不信感が募る。従業員のワークフローにあった技術のスタックとして各ツールを組み立てよう。

2)A/Bテストを行う
新しいデジタルツールを全社展開する前に、一部の従業員を対象としたA/Bテストを行おう。A/Bテストは通常、顧客むけに行うものだが、従業員体験は重要だ。

社員にツールを使ってもらい、使い勝手はどうか、便利にしてくれそうかなどの意見を聞いてから導入を決めたい。

3)必要なITリテラシーは平均値に定める
デジタルを使いこなすことができるかどうかーーITリテラシーは従業員により差がある。多くの場合で若い社員の方が使いこなせる傾向にある。

新しいツールを導入する際、使いこなすのに必要なITリテラシーを高く設定するのはNGだ。使ってくれなければ効果は出ないし、投資の無駄に。実際に使ってもらうにあたって難易度は重要なポイントになる。

たしかに、昨今では多くのツールが組織導入されており、IDや資産管理はもちろん、どう効果的に利活用できるか?も課題だ。様々なレベルでのマニュアルの存在も欠かせない視点になる。ベンダーが作成したヘルプマニュアルなどはリンクで用意されているが、各部署の個別運用の際にどう使うのか?が欠けている場合も多い。"Aを押せばBになる"という解説ではなく、"私達の業務ではこの場合に利用する""週に一度このようなフローで活用する"のような運用の部分だ。

チーム内での会議や口頭での伝達で時間をかけて知ることが多いツールの運用方法だが、転職や異動などで準備期間なしに、いきなり遭遇した場合には"理解とタスク処理"が同時に押し寄せるため大きく負担になる。経験してみないとわからないものだが、極端な場合、翌日のデッドラインであるにもかかわらず、どこに聞けばいいのか?も記されずに放置されてしまうといった憂き目にあうことも。"動揺"するのも当然と言えるだろう。"辞書のような機能の逆引きのヘルプマニュアル"ではなく時間軸が加わる"フローの中で記載されるマニュアル"が事前にあれば回避できることは多い。

従来、メモを取りながら学んできたことだが、ツールが圧倒的に増えると教える方も教えられる方も事前に準備するバッファ(時間)が無くなってくる。リンクもそのまま使えるWordやマインドマップなどで作成して配布する、この辺りに焦点を当てたSaaSを用いるなど方法はたくさんあるが、真剣に取り組まなければならない課題として浮上しているようだ。マニュアルには属人的な運用を防止するという役割もある。規模が大きい組織であればあるほどこの手の問題は生じやすいが、解決できれば効果がとても大きくなることは想像に難くない。