パナソニックは、テクニクス(Technics)ブランドのDAC搭載ステレオプリメインアンプ「SU-G700M2」と、フロア型スピーカー「SB-G90M2」の2機種を11月26日に発売する。Technicsラインナップの「グランドクラス」に位置づけられ、価格はSU-G700M2が29万8,000円、SB-G90M2が1台で29万8,000円。

  • SU-G700M2

  • SB-G90M2

  • 中央がSU-G700M2、左右がSB-G90M2

DAC搭載プリメインアンプ「SU-G700M2」

2017年発売の「SU-G700」の後継機種。本体カラーはシルバーに加え、新たにブラックモデルを用意し、既に使っている他のオーディオ機器にマッチする色を選べるようにした。前面にはアルミ無垢材を使用したボリュームを備え、入力セレクターのノブは前面だけでなく側面もスピン加工を施し、外観デザインに最上級「リファレンスクラス」のプリメインアンプ「SU-R1000」を継承して高品位な仕上がりとした。前面には大型2連針メーターも備えている。

  • SU-G700M2(シルバー)

  • SU-G700M2(ブラック)

独自のフルデジタルアンプ「JENO Digital Engine」(JENO)エンジンを搭載して従来機種の音楽表現能力を継承しつつ、JENOエンジンのポテンシャルをさらに引き出すため、SU-R1000の電源部に投入している、高速応答・低ノイズな「Advanced Speed Silent Power Supply」を採用して電源を強化したのが大きな特徴。

SU-R1000と同様に、電源のスイッチング周波数を従来の約100kHzから約400kHzへと高速化し、リップルノイズの発生とオーディオ帯域へのノイズ干渉を低減。高速応答により瞬時に安定したエネルギーをパワーアンプ部へ供給し、ドライブ能力を高める。また、低ノイズレギュレーター回路を使用し、電源の低ノイズ化を徹底することで、純度の高い音楽再生を実現するという。

また、SU-R1000の電源部と同じく、高速動作デバイスであるGaN-FETやSiCダイオードを採用し、高速スイッチング電源の応答性を高めた。これにより、音楽信号の瞬時の変化に追従し、安定した電源供給を実現。スピーカーのドライブ能力を高め、エネルギー溢れる低音再生を可能にしたという。

  • SU-R1000で投入している、高速応答・低ノイズな「Advanced Speed Silent Power Supply」を採用して電源を強化

SU-G700から引き続き、スピーカーの特性を測定・解析することで、スピーカーの特性に合わせ、アンプの特性を最適化する負荷適合アルゴリズム「LAPC」(Load Adaptive Phase Calibration)を採用。幅広い種類のスピーカーを理想的な振幅・位相特性で駆動できるという。

電源部、パワーアンプ部、入力部の相互の干渉を防ぐため、内部を3つに分割した構造もSU-G700から継承。電源部は上下2段構成の、周囲を鋼板で囲んだシールドケース構造とした。各部の仕切りとなる鋼板には、1.2mm厚のボトムシャースに2mm厚の鋼板を重ねた2層構造とし、制振性を高めた。これらにより、各部の間の干渉を削減するとともに不要な振動を抑え、ノイズの影響によるディテールの欠落を解消するという。

  • 本体内部の基板

SU-R1000の開発で得たノウハウを活かし、高音質パーツを選定。パワーアンプ用電源部のコンデンサーなどをグレードの高いパーツに変更している。また、スピーカー端子とアンプブロック間の接続に、SU-R1000と同じく非磁性体の真鍮ビスを使用し、スピーカーへの伝送信号の純度を高めるなど、音質向上に寄与するパーツを見直して各所に採用した。ノイズ対策も強化している。

  • 内部は3分割構造。高音質パーツも採用

PHONO入力は1系統で、MM型カートリッジに加え、新たにMC型カートリッジにも対応。設定で切り替えることもできる。PHONO回路へのノイズ混入を防ぐシールドケースを採用し、PHONOアース端子も高品位パーツに変更した。

USB DAC機能を引き続き装備し、最高384kHz/32bitのPCM再生と、11.2MHzまでのDSD再生に対応。同軸デジタルは192kHz/24bit、光デジタルは96kHz/24bitまでサポートする。

入力はUSB-B×1、同軸デジタル、光デジタル、アナログのライン入力を各2系統装備。出力はアナログライン出力とアナログプリ出力が各1系統。ヘッドホン出力も備える。

  • 前面と背面

  • 背面のデジタル/アナログ入力端子

  • SU-G700M2(デモ展示機)の背面

定格出力は140W×2ch(4Ω)、70W×2ch(8Ω)。消費電力は95W(待機時約0.5W)。本体サイズは430×428×148mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約12.7kg。リモコンや電源ケーブルなどが付属する。

  • 付属のリモコン

フロア型スピーカー「SB-G90M2」

2017年発売の「SB-G90」の後継機種で、新開発の同軸ユニットを含む3ウェイ4スピーカーのフロア型スピーカー。2.5cmドームツイーターと16cmミッドレンジユニットによる同軸2ウェイユニット×1、16cmウーファ×2を搭載している。エンクロージャーはリアバスレフ型。

  • SB-G90M2。左は内部構造が見えるようにしたカットモデル

新開発の同軸2ウェイユニットは「Advanced Phase Precision Driver」と名付けられており、点音源・リニアフェーズ思想を実現。ツイーター、ミッドレンジともにアルマイト処理を施したアルミニウム振動板を採用しており、ツイーターには高域の位相ずれに起因する特性の乱れを補正する真鍮製パーツ「Linear Phase Plug」を新たに追加した。

  • 新開発の同軸2ウェイユニット

ミッドレンジ部は振動板形状を見直し、2つのユニットの音のつながりを追求した。また、浅型形状振動板と音の反射の少ない滑らかな形状のエッジで形成される「Smooth Flow Diaphragm」を採用することで、放射音の波面が整った球面波を形成。これらにより、同軸ユニットの音のつながりや指向特性、位相特性を改善しているという。

ウーファーは16cmユニットを2個搭載。アルマイト処理を施したアルミニウム振動板を採用しており、磁気回路には高い駆動力を生み出すダブルマグネット、ロングボイスコイル、銅リングを採用するなどのロングストローク設計とし、大振幅まで低歪みでレスポンスに優れた低音再生を可能にした。

  • 16cmウーファーユニット

ユニットの固定には「重心マウント構造」を改良したものを採用。一般的なスピーカーはユニットがエンクロージャー前面のバッフル板に固定されるが、ユニットの重心位置と固定位置が離れているため、ユニット自身の振動で音が濁りがちになる。テクニクスではエンクロージャ内部にサブバッフルを設け、そこでユニットを固定する重心マウント構造を採用している。

  • 進化した重心マウント構造を採用

SB-G90M2では、従来のSB-G90で各ユニットごとに独立していたスピーカーマウントバッフルを、2個のウーファー部を一体化し、さらに底板まで一枚のバッフルが貫通する形状にすることで高剛性化。さらに、同軸ユニットとウーファーのスピーカーマウントバッフルを分断させることで、相互の干渉を排除した。これらにより、粒立ちの良い音・立体的な音場をさらに向上させたとする。

  • SB-G90M2のエンクロージャー内部

また、エンクロージャー内部で発生する定在波を効果的に抑制するための新構造「Standing Wave Termination Structure」 をエンクロージャー下部に備えており、単一断面のシンプルな音道構造で、音道の中に音のエネルギーを集中させることで、音道内に配置した少量の吸音材で効率良く定在波を除去。吸音材は定在波が発生する周波数以外の音も吸音してしまうが、この構造によって吸音材の使用を減らすことで、生き生きとした自然な中低音を再生するという。

  • SB-G90M2の概要

  • エンクロージャーの改良ポイント

ネットワーク回路には、メタライズドポリプロピレンフィルムコンデンサー、空芯コイル、積層鋼板コア型コイル、OFC(無酸素銅)スピーカーケーブルなどの音質の劣化の少ない高品位なパーツを採用。音の純度を高め、情報量豊かな音を追求した。

周波数帯域は33Hz~90kHz(-10dB)。クロスオーバー周波数は500Hz、3.4kHz。インピーダンスは4Ω。推奨アンプ電力は40~200W。

新たにバイワイヤリング対応の真鍮製スピーカー端子を背面に装備。ウーファーの逆起電力の中高域への影響を除去するバイワイヤ接続や、複数のパワーアンプを使ったバイアンプ駆動などに対応する。また、シングルワイヤリング時に使用するショートワイヤも、音質劣化の少ない高品位なパーツを使用した。

エンクロージャはポリウレタン塗料を使った重ね塗りとし、艶やかな光沢の外観に仕上げた。真鍮製のスパイクと受け皿を各4個同梱する。1台あたりの本体サイズと重さは292×366×1,114mm(幅×奥行き×高さ/スパイク使用時)/約35kg。

  • バイワイヤリング対応の真鍮製スピーカー端子