既報のとおり、Microsoftは米国時間2021年6月24日、次世代のWindowsとなる「Windows 11」を発表した。筆者もリアルタイムでオンライン発表会を視聴していたが、開始直前から動画用バッファーが枯渇したのか、ストリーミング動画が中断する場面が多発……。視聴環境側の問題も否定できないが、これほどの中断はコロナ禍以降のオンラインイベントで初めてだ。それだけ、Windows 11に対する関心度が高かったのだろう。

  • 延々と見せられた待機アイコン。運営側も配信が安定しないことに気づいたのか、チャットで「配信はTwitterでも視聴できる。また、終了後はオンデマンド配信を行う」と発信した

まずはWindows 11の特長を箇条書きでまとめてみた。

  • Windows 10Xを踏襲したデスクトップ
  • タイトルバーから操作可能なスナップ
  • 全画面に拡大可能なウィジェット
  • タッチ操作時はボタンが等間隔になるタスクバー
  • 背景画像を個別選択できる仮想デスクトップ
  • Auto HDRのサポート
  • 透過的なタスクバー&タスクスイッチャー

リークしていた開発中のWindows 11に関する情報と大差はない。アプリを左右にスワイプすることで切り替える機能なども備えるが、軽微な改善なので上記には含めなかった。UI面でも音声認識やタッチキーボードの改良を強調したが、いずれも日本語環境の実装は先の話となりそうなので割愛する。

  • Fluent Design Systemによって曲線を強調したイメージ動画が再生された

同じく軽微な改善だが、スナップは便利そうだ。Windows 10は、ショートカットキーでウィンドウを2分の1や4分の1にリサイズする機能を備えているが、これらの操作がGUIから実行可能になる。Windows 10用Power Toys(ユーティリティツール)は、ウィンドウの配置をカスタマイズするFancy Zonesという機能を提供しているが、より分かりやすく、機能を提示したのは長所の1つに数えるべきだろう。

  • ウィンドウのリサイズをGUIから実行するスナップ。出力先として外部ディスプレイを選択しても、ウィンドウレイアウトは維持していた

システム的には「Windows Updateが40%小さく、バックグラウンドで更新が発生する際に効果を発する」(Microsoft CPO, Panos Panay氏)という点が興味深い。

Windows 10の累積更新プログラムは、差分ダウンロードを廃止しつつも、必要なコンポーネントのみ更新する方式に変更している。Panay氏の発言が何を比較対象としているのか不明だが、Windows 11でも定期的な更新プログラムの適用が必要であることを踏まえると、日々の運用は多少なりとも楽になりそうだ。ただし、本稿執筆時点のWindows 10 Insider Previewでは、その片りんは確認できない。個人的にはPCゲームのパートで披露したDirectStorageにも引かれる。

  • システム面では、Auto HDRのサポートも機能改善の1つ。「Skyrim」を例にSDRとHDRの出力を比較していた

このほかにも、タスクバーにピン留めしたMicrosoft Teamsから、チャットやビデオ通話を実行できる機能を搭載。今はなきPeopleツールバーを彷彿(ほうふつ)させる機能だ。また、Microsoft Storeの再構築や、Androidアプリの実行など興味深い機能も実装している。後者については、Windows 10 Insider Previewを一部のAndroidデバイスと組み合わせることで実現済みだが、対応するデバイスの範囲をどこまで拡大できるかが鍵となりそうだ。

  • Windows 11上で「フォト」と同時にAndroidアプリと思われる「TikTok」が動作している。対応アプリはMicrosoft Store経由で取得可能だという

Microsoftは「Windowsは単なるOSではない。プラットフォームだ」(同社CEO, Satya Nadella氏)との発言を、本イベントの締め言葉に用いている。個人の生産性を高めると同時に、可能性を広げるための基盤であることに異論はないが、開発者向けイベントのBuild 2021で述べた「過去10年間のもっとも重要なアップデートの1つ」(Nadella氏)というほど革新的な変更は見受けられなかった。とはいえ過去のWindowsを振り返れば、UIよりもむしろ内部的な更新が大きな要因だったようにも思える。単にWindows 10を更新し続けるのではなく、ブランド再構築の道を選択したMicrosoftの判断はこの先どう展開していくだろうか。