ハイレゾ楽曲でLDACの真価を試した

1000XM4の音質をチェックしましょう。最初に、moraで配信されているハイレゾ楽曲から、YOASOBIのアルバム『THE BOOK』に入っている『群青』(FLAC 96kHz/24bit)をスマホにダウンロードして聴きました。Google Pixel 5にはハイレゾ対応の音楽プレーヤーアプリ「NePLAYER」を入れています。

  • WF-1000XM4 Review

    moraからダウンロード購入したハイレゾ楽曲(YOASOBI『群青』)を試聴

筆者はLDACのサウンドに「繊細で緻密」というイメージを持っていました。1000XM4のハイレゾ再生も繊細かつ緻密であることに変わりはないのですが、それよりも「大変に濃厚なサウンド」である印象を強く受けました。

ボーカルやピアノのメロディは押し出しが鮮やか。熱量がとても豊かに感じられます。低音の分離も良く、ベースのリズムが太く立体的に描かれます。スピード感も良好。1000XM4のように鮮度の高い低音が鳴らせないイヤホンでアップテンポなロックやポップス、ジャズの楽曲を聴くと、ベーシストの存在に気が付かずにスルーしてしまうこともあります。1000XM4はすべてのベーシストの熱い演奏に応えてくれるイヤホンです。

JポップやEDMのように細かなプログラミングによる効果音の数が多い楽曲を聴いてみても、1000XM4は実にクリアで見晴らしの良い音場を描いてみせました。まるでサラウンド再生ができるイヤホンでハイレゾの楽曲を聴いているような体験でした。

そしてノイズキャンセリングとアンビエントサウンドを切り替えても、「音の聴こえ方」のバランスは崩れません。さすがソニーのフラグシップである1000Xシリーズの最新機種でした。

非ハイレゾのお気に入り曲はDSEE Extremeで聴こう

続いて、同じYOASOBIの楽曲をSpotifyで再生し、CD音源や圧縮音源をハイレゾ相当の高解像度音源にアップスケーリングする「DSEE Extreme」の効果を試しました。DSEE ExtremeはソニーのSony|Headphones Connectアプリから機能のオン/オフが選べます。ハイレゾ音質ではない音楽配信や動画サービスの音声を聴くときなどに、DSEE Extremeはとても有効です。Spotifyアプリの設定は「WiFiでのストリーミング」を「最高音質」にしています。

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    Bluetoothの接続設定や、DSEE Extremeのオン/オフはそれぞれSony|Headphones Connectアプリから選択可能(左は1000XM4、右は1000XM3を接続したときの画面)

DSEE Extremeのオン/オフを切り替えながら聴くと、その効果が音場の奥行き方向への広がりや、ボーカルの艶やかな表現に表れることが分かります。それでもやはりLDACによるハイレゾ再生の音質と比べてしまうと、やはり音色の濃さやハーモニーの厚みには相応の差が感じられます。お気に入りの楽曲をDSEE Extremeによるアップコンバート機能を活用して“いい音”で聴く楽しみを覚えたら、ぜひハイレゾ版も試してほしいと思います。1000XM4はハイレゾ再生を含めたユーザーの「いい音に対する探究心」に対して全方位から応えてくれる数少ない完全ワイヤレスイヤホンです。

1000XM4が搭載するDSEE Extremeは周波数特性の補完アルゴリズムを、従来の1000XM3で搭載していた「DSEE HX」から大きくブラッシュアップしています。比べて聴くと、1000XM3のDSEE HXによるサウンドはやや質感がザラッとしていて荒っぽく感じられます。階調表現のきめ細かさ、ゆったりとした空気感が出せるところにも、1000XM4が搭載したDSEE Extremeの良さがあります。

立体音響「360 Reality Audio」の楽しみ方

また、1000XM4は、ソニー独自の立体音楽体験「360 Reality Audio」(360RA)に対応するコンテンツを理想的なサウンドで楽しめる“認定イヤホン”です。Sony I Headphones Connectアプリの「360 Reality Audio設定」から「耳の形を測定」し、対応する楽曲を配信する音楽アプリごとに測定プロファイルを同期させると、1000M4による立体音楽体験が満喫できます。

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    1000XM4のような360 Reality Audio認定ヘッドホン/イヤホンがあれば、360RAコンテンツがベストなコンディションで楽しめる。耳の形をスマホのカメラで撮って測定し(左)、対応する楽曲を配信する音楽アプリごとに測定プロファイルを同期させる(中央、右)

月額1,470円で44.1kHz/16bitのロスレス配信、360 Reality Audio対応のコンテンツが聴ける「Deezer HiFi」の「360 by Deezer」アプリをセットアップして、コーネリアスの「Forbidden Apple」を聴いてみました。360RAらしい豊かな音場の広がりと、これもまた360RAならではと言える、立体音楽空間の中を音のオブジェクトが鋭く移動する様子がリアルに描かれます。1000XM4の特徴と言えるクリアな中高音域、タイトで弾力感にも富む低音のバランスが360RA対応の楽曲と実に良くマッチします。

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    360 by Deezerアプリでコーネリアスの「Forbidden Apple」を再生しているところ

イヤホンである1000XM4による360RA再生は音のエネルギー感がとても鮮烈であるのに対して、同じく360RAの認定ヘッドホンであるソニー「WH-1000XM4」で聴く場合は、スピーカー再生に近いワイドな音の広がりがより強く印象に残ります。それぞれの良さを使い分けながら楽しんでみたいと思いました。