米Microsoftは6月24日(現地時間)、「What's next for Windows」と題した発表イベントを開催し、同社が"次世代"と位置付けるWindows OSのアップデート「Windows 11」を発表した。今日のPC環境における体験を向上させるようにユーザーインターフェイス(UI)を刷新、ゲーミングやリモート向けの機能を統合した。Windows 10からの無料アップデートとして、年内に正式版の提供を開始する予定。
イベントでPanos Panay氏(チーフプロダクトオフィサー、Windows+Devices担当)は、まず自分が育った家の写真を見せ、時の流れと共に建物や設備が変わっても、家族にとってそこは愛すべき場所であり続け、今でもそこに帰ると家に戻ったと感じると述べた。
新型コロナ禍によってPCの役割や価値が大きく変化した。「実用的で機能的なものからパーソナルでエモーションなものに、(過去1年半に)私達が見て感じたPCの変化はとてもパワフルなものでした」とPanay氏。そうした変化に応じてWindows 11でWindowsは見た目が変わり、新たな機能を備える。しかし、Windowsとしてユーザーに変わらず愛される場所であり、Windowsを実感できるものになると強調した。
その点から、UIを刷新するWindows 11へのシフトにMicrosoftが本気であることがうかがえる。Windowsの重要な顧客である企業ユーザーは、再トレーニングや自分達の負担が増える大きな変化を嫌う。Windows 8ではそれが普及の障害になり、変化が拒まれる停滞からWindowsはAppleのデバイスやChromebookのような新たなカテゴリーのデバイスに浸透しきれずにいる。
Windows 11では、新しいモノを好むコンシューマを中心に新しいWindowsを普及させる。Windows 11 Proを用意するが、ビジネスユーザーが急いでWindows 11にアップグレードする必要はない。2025年10月14日までWindows 10のサポートは継続する。またWindows 11にアップデートしてから10日間はファイルとデータを保持し、Windows 10に戻せるようにする。Windows 11リリース後もWindows 10を使い続けられる環境を残しながら、一方でWindowsの大胆な変化を遂行していく。
新デザインは、Windowsロゴの「スタート」ボタンとタスクバーが、アクセスしやすい中央に寄せられている。スタートメニューには、アプリのアイコンとファイルの提案(Recommended)、検索窓が並ぶ。ランチャーのようなシンプルな構成になった。クラウドやMicrosoft 365と連携し、AndroidやiOSデバイスを含む他のデバイスでの利用もスタートメニューのファイルの提案に反映される。ライトモードとダークモードのどちらも統一感があり、角がラウンドしたUI要素、メニューや検索窓のフローティング表示など、シンプルかつモダンなデザインになっている。
Windows 8で導入され不評だったライブタイルは廃止され、情報機能として「Widgets」が用意された。タスクバーから開くと、ガラスシートのようなウインドウにウイジェットが並ぶ。ニュースフィード、天気、地図など、機械学習機能によってフィードがパーソナライズされる。
Windowsの体験で最も重んじられる生産性については「スナップ」やデスクトップが強化され、マルチタスク作業をより快適に進められる。ドラッグ&ドロップで簡単にウィンドウを並べて配置できるスナップ。Windows 11では、より多彩なレイアウトで配置できるようになる(Snap Layouts)。スナップで並べて作業しているウインドウがグループで記録され、複数のアプリを使った作業環境を丸ごとタスクバーから切り替えられる(Snap Groups)。例えば、すぐに返信する必要があるメールが送られてきて、返信のために作業が中断されても、Snap Groupsによってワンクリックで元の作業環境に戻れる。ファイルの提案やSnap Groupsによる作業環境の呼び出しなど、パーソナライズしたサービスでWindows 11がユーザーを支援する。「Windowsがユーザーに合わせます」とPanay氏。
デスクトップは、個々にカスタマイズしたデスクトップを作成して複数を使い分けられる。作業別のデスクトップを作ったり、仕事用、個人用、ゲーム用、学校用などいくつでも作成できる。
2-in-1デバイスやタブレットPCなど、キーボード以外でも操作するデバイスの体験も向上する。2-in-1デバイスでキーボードを外した時は、自動的にタスクバーのアイコンの間隔が広がり、タッチターゲットが拡大、ジェスチャーが追加されるなどタッチ操作に最適化される。また、デジタルペン機能がハプティクスに対応。振動やクリック感で手書きがより没入感のある体験になる。音声入力の認識精度が向上し、句読点の自動入力、音声コマンドによって、アイディアをすぐに書きとめたい時など音声入力を活用できる。
新型コロナ禍を通じて、PCでのニーズが高まったコミュニケーションとゲーミング。Windows 11には「Teams」が統合され、テキストメッセージ、チャット、音声通話やビデオ通話をタスクバーからすぐに開始できる。Auto HDRやDirectStorage APIなど、Xbox Series X|Sで導入したゲーミング機能をサポート。XboxアプリにMicrosoftのゲームサブスクリプション「Xbox Game Pass」が組み込まれ、よりシステムに統合された形で同サービスのゲームを利用できる。
Microsoft Storeも大きな強化点の1つだ。UWP(Universal Windows Platform)アプリだけではなく、Win32アプリも標準でサポート。同ストアを利用する開発者が独自またはサードパーティーの決済システムをアプリに導入することを認める。また、Amazonとの提携により、ユーザーがMicrosoft Storeで見つけたAndroidアプリをAmazon Appstore経由で入手できるようになる。Windows 11でAndroidアプリは、Intel Bridgeによって実行できる。
Windows 11のシステム最小要件は以下の通り:
- プロセッサ:1GHz以上で2コア以上の64ビット互換プロセッサまたはSoC
- メモリ:4GB RAM
- ストレージ:64GB以上
- グラフィックス:DirectX 12 互換のグラフィックス / WDDM 2.x
- ディスプレイ:9インチ以上、HD解像度(720p)
- TPM:TPMバージョン 2.0
- インターネット接続:Windows 11 Home EditionのセットアップにMicrosoft アカウントとインターネット接続が必要
Windows 10の無料アップデートとして、年内に正式版のロールアウトを開始する予定だが、Windows Updateはアップデートの信頼性や互換性を確認しながら少しずつ提供範囲を拡大する。FAQ欄によると、現在使用されている多くのWindows 10デバイスについては「2022年の前半になる予定」だという。
Microsoftは、Windows PCユーザーが所有しているPCのWindows 11互換性を確認できるチェックアプリを公開した。また、Windows 11搭載PCを待たずに、消費者がWindows 11互換を確かめてWindows 10 PCを購入できるように、小売パートナーとWindows 11 Readyプログラムを展開する。