新型コロナの半導体製造装置産業への影響は?

司会:新型コロナウイルス感染症の影響は、半導体製造装置産業にプラスに作用するかそれともマイナスに作用すると見るか。

前川氏:今はプラスだが、今後はリスクととらえている。サプライチェーンで在庫を積んでいるが、2021年のどこかで在庫調整が行われれば投資リスクとなる。

中名生氏:短期にはリスクであるが、ポストコロナの中長期的には新たなニーズも出てきてポジティブな部分が多い。

森山氏:短期的にはリスクあるが2022年まで見た場合、中長期的にはプラス。データ通信を中心とした企業活動に変化が見られるので過去の景気循環とは異なる状況である。

和田木氏:ポストコロナ時代にはプラスに作用するとみている。いつ新型コロナが終息するかわからないが、終息すれば各国が景気刺激策を打ってくる。投資を手控えていたIT企業や半導体企業が投資を再開する。

安井氏:ネガティブ要因だととらえている。景気減速が半導体に影響を与えるのは過去の鉄則である。新型コロナも決して例外ではない。

半導体設備投資をけん引する技術やアプリは?

司会:2021年以降の半導体設備投資をけん引する技術やアプリケーションはなにか?

前川氏:データセンタや5G以外で大きなアプリケーションは見通せないが、半導体技術面ではEUVマスクのぺリクルが量産で使えるようになるか注目している。もしもそうなれば、製造歩留まりが向上するので、現存の装置が一時的に余剰になるリスクあるが、長期的には、コストダウンによりEUVを活用する用途が拡大するのでメリットとなる。

中名生氏:技術的にはEUVリソグラフィに注目している。全体的に稼働率やトータルの生産効率がどんなピッチで進歩するのかを注目している。

森山氏:NANDとDRAMの技術的な進化に注目している。ともに製造難易度があがっている。そう簡単に歩留まりを向上させたりビット容量を増やすことは難しいのではないか。

DRAMが微細化の壁にぶつかるのでEUVを使い始めているが今後さらにどんな新技術が使われるか注目している。

和田木氏:半導体の大量需要をもたらす監視カメラ、HDDサーバのフラッシュメモリ化に注目している。技術面ではEUVリソグラフィでぺリクルが使えるか、アトミックレイヤエッチングやデジタルエッチングなどの新たなエッチング技術がどこまで使えるか注目している。サーバのフラッシュ化によりメモリ需要は今後心配ない。

安井氏:データセンタの投資に注目している。いままでメモリの生産能力増加は、データセンタの投資で吸収してきた。大型M&Aがあり、データセンタへの集中投資が出てくると見ている。

車載パワ-マネージメントICに注目しているか?

司会:自動車周りのパワーマネジメントICについて注目しているか?

和田木氏:この分野の半導体製造装置マーケットはとても小さいが必ず伸びる。欧州も中国も積極的に投資している。日本勢は出遅れている。業界団体や日本政府が後押ししなければならない分野だ。

安井氏:テスラのモデル3を分解して研究した。4400個の電池を監視するソフトは素晴らしい。AI含めたソフトに注目している。パワーマネジメントIC市場が小さいのは事実だ。

前川氏:パワー半導体に関しては、SiC化と300mm化に注目している。市場規模は小さい。今後のパワーICに期待している。東芝や三菱電機は製造ラインの300mm化を検討しているようだが、ぜひともInfineonに対抗して頑張ってほしい。

司会:日系パワー半導体メーカーは頑張ってるが日本のユーザーの採用のスピードが遅い感がある。日本のユーザーは、外国のユーザーのように新製品をす早く試用してパワー半導体メーカーにフィードバックする必要がだろう。

半導体製造装置産業の長期的な見通しは?

司会:2021年の装置産業の成長について最初に聞いたが、その補足と長期的見通しのコメントを最後にお願いしたい。

前川氏:2021年、5%マイナス成長とみているが、内訳はメモリ向け7%増、ロジック向けは12%減で、総合するとマイナス5%ということだ。中国ファウンドリリスクがある。メモリ事業は2021年下期から改善し、データセンターが引っ張る。しかし、2021年はメモリ投資は収益重視で行くので、すぐ投資加速には結びつかない。長期的にはデータセンタや5GやスマホだけではなくIoT向け半導体が伸びる。自動車のネットワーク環境が整備され ロジック中心に設備投資増える。

中名生氏:半導体の需要はデータセントリックな時代になり2020年代には成長が加速する。データをどう活用するかがカギである。半導体装置も3-5年は伸びていく。2021年後半には2桁成長する。

メモリには中国メーカーも参入するので供給過剰となる。少なくとも2021年後半にはメモリ投資が戻ってくる。

森山氏:長期的には、個人も企業も時間的な価値を資産価値に転換する時代になる。スピーディな取り組みが設備投資につながる。

和田木氏: ファウンドリ各社は増産傾向にあるので、設備投資も増える。メモリは供給過剰傾向にある。

サーバのフラッシュ化でNAND需要があるので中長期的に心配する必要はない。

安井氏:中長期ではデータセンタに注目している。コンテンツの面で、インスタグラムはじめ数十億人に普及するようなアプリが出てきたことは大きかった。このような大型コンテンツが出なければデータセンタの投資は増えないと見ており、中長期的に可能性のあるファクタとしては自動運転とエンターテインメントを考えている。ライブ動画を共有する音楽、スポーツ、教育のアプリケーションやAIで画像と音声認識を組み合わせたアプリが出てくることを期待している。