中国で拡大する半導体製造の波

同氏はさらに、中国半導体産業とサプライチェーンの現状についても紹介した。

中国国内では、地方政府の支援をうけ、半導体産業が多くの地域に広がっている。中国中西部(西安、成都、武漢など)はメモリと特殊デバイスに重点を置いており、北部の北京や天津や渤海(大連)は、製造、装置、M&Aに重点をおいている。長江デルタ地域(南京、合肥、上海、杭州など)は、設計、製造、OSAT、装置に重点を置いている。南部の珠江デルタ周辺(深セン、泉州、厦門など)では、設計、システム、アプリケーションに焦点を当てている。

中国のIC産業は過去10年間に急速に発展した。2011年から2019年までの間の年平均成長率は18%だった。2019年の中国のIC産業の総売上高は7560億元に達し、前年比16%増の成長をとげた。中国IC産業の構造は最適化されつつあり、IC設計、製造、パッケージング&テストの比率は4:3:3である。ちなみに、グローバルな規模での理にかなった比率は3:4:3であり、この比率に徐々に近づいている。

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    中国IC業界の売上高のIC設計、IC製造、ICパッケージングおよびテスト別の推移

半導体ウェハファブは、米国、日本から韓国、台湾そして中国へと移転してきている。2000年には、米国と日本を合わせた半導体生産能力は、世界全体の57%を占めていた。その時、中国の生産能力はわずか2%に過ぎなかった。しかし、2010年までに半導体製造は台湾と韓国で盛んになり、この2地域で全体の35%を占めるまでになった。その当時でも中国はまだ9%にとどまっていた。しかし2019年には、中国は生産能力拡張政策と新規投資により17%を占めるまでに成長した。ただし、そのうち4割は150mmおよびそれよりも小さな小口径ウェハである。中国では、今後も生産能力を増やして、2021年にも台湾を抜いて世界最大の生産能力を獲得しようとしている。

ウェハサイズでの生産能力を見ると、2019年時点で中国は、300mmウェハで12%、200mmウェハで15%、150mm以下で29%を占めるまでに成長してきた。2017年以降、2018年をピークに中国には39の半導体ウェハファブが建設された。このうち、35が中国資本によるファブ、残りが外国資本によるファブだった。中国は、半導体ファブ建設プロジェクトが世界中で最も多く進行しており、現在は57のファブが稼働しており、26のファブが建設中あるいは計画中で、その内訳は、300mmファブが19、200mmファブが7つとなっている。

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    世界半導体生産能力のシリコンウェハ口径別、地域・国別内訳

2020年2月にUMCが発表した厦門ファブの第2期プロジェクトの投資総額は35億元である。TowerJazzも2020年に合肥に300mmファウンドリファブの建設を発表した。さらに広州ではCanSemiの第2期計画(300mm 65~90nmアナログIC)に65億元が投資されるほか、2020年6月よりYMTCの第2期拡張工事がスタートし、20万枚規模の増産が計画されている。SMICも北京に合弁会社を設立し、28nmに焦点を当てて76億ドルを投資することを2020年8月に決定したほか、Nexchipも合肥に170億元を投資して300mmファブを建設している。

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    中国本土で最近発表された半導体ファブ建設計画

急成長する中国の半導体製造装置市場

こうした中国の半導体ファブ建設ラッシュの下、半導体製造装置・材料産業にもビジネスチャンスが訪れている。

SEMIによると2020年の半導体製造装置市場は、630億ドルで、そのうち中国が173億ドルであり、台湾ならびに韓国を抑えトップシェアを獲得した。2021年の半導体製造装置市場は700億ドル規模とSEMIでは予想しているが、中国がトップシェアを維持する見通しだという。

中国の半導体製造装置サプライヤ売上高ランキングを見ると、ほかの国・地域とは異なり、太陽電池向けやLED向け装置の割合が多い。中国は世界に知れた太陽電池・LED大国であるためだ。トップのJinShengは、太陽電池とLED向け製造装置に注力しており、2019年の売上高は28億元としている。同社のIC用製造装置は太陽電池製造装置に次いで2番目に売上高が多い分野である。2位のNAURAは、総合半導体製造装置メーカーとして、太陽電池やLED向けに加えてIC製造向けのエッチング装置、PVD/CVD/ALDなどの成膜装置やウエット洗浄装置、熱処理装置を製造している。5位のAMECは5nmプロセス用の最先端ドライエッチング装置を開発し、TSMCやYMTCから認定を受けているといわれている。また、PECVDに注力しているPiotechは最近、300mm PEALDを開発して顧客に納入したとのことで、ALDは中国で最も注目されているプロセスのひとつであるという。

中国では、ウエット洗浄装置や熱処理装置分野では中国勢が国内売り上げの15%のシェアを持っているほか、リソグラフィ装置、CMP装置、イオン注入装置、検査装置メーカーなども育ってきているという。

ファブの増加によって成長が続く半導体材料市場

2019年の中国の半導体材料市場は88億ドル。2020年には91億ドルへと成長し、2021年も100億ドル(予測)とファブの数が増えるのに併せて成長が続く見通しとなっている。2019年には材料市場の17%を占め、台湾、韓国に次いで3番手の市場となり、2020年には台湾に次ぐ2番手の市場へと成長。そして2021年も世界2位の市場であり続ける見込みだという。

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    中国の国内半導体製造装置メーカー売上高ランキングトップ10

とはいえ中国国内の半導体材料メーカーの生産規模は、過去10年で4倍となったが、それでも国内需要の2割しか供給できておらず残りの8割は海外メーカーからの輸入に頼っているのが現状だという。そのため、国内企業の材料売上高は2018年で1億元程度であったものが、現在は2億元を超すまでに成長してきたという。これら国内企業は、スパッタターゲット、CMP、ウェットプロセス、リードフレームなどの材料関連では世界レベルに達しており、大量販売が行われている。シリコンウェハやマスクなども少量だが販売を開始しているが、フォトレジストなどは研究目的に出荷はしているものの世界レベルに達するには時間がかかりそうだという。2018年の地元企業の材料売上高は1億元程度であったが、現在は2億元を超えるまでに成長してきている。

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    中国における半導体材料生産高の推移と中国半導体材料市場規模とのギャップ

なお同氏は講演の最後に以下のように講演をまとめた。

  1. 中国の産業規模は拡大し、産業構造は最適化し続けている。
  2. 中国の生産能力は急速に拡大しており、新しいプロジェクトが次々と始まっている。
  3. 中国のメモリとファウンドリは急伸している。
  4. 2021年の世界半導体製造装置市場の規模は700億ドルに達し、中国は最大の市場になる。
  5. 中国は2020年には世界2位の半導体材料市場になり、2021年もその地位を維持するだろう。