新型コロナの影響を感じさせないASMLの2020年第3四半期業績
ASMLによると、同社の2020年第3四半期決算概要は、売上高が、前年同期比33%増、前四半期比19%増の39.6億ユーロと好調で、従前のガイダンス(36億~38億ユーロ)を上回る結果となった。
このうち、装置の売上高は前年同期比33%増の約31億ユーロで、地域別(仕向地基準)でみると、台湾が47%と最も多く、韓国の26%、中国の21%、米5%、EMEA(欧州中東など)1%、日本は0%となっている。中国への輸出は、ArF/KrF/i線露光装置に関しては、米国政府の輸出規制をうけてはおらず問題なく輸出出来たため、全体の売り上げの2割超を占める規模となっている。ただし、SMICへの出荷は米国政府の不許可要請を受けたオランダ政府の許可が下りず出荷できていないようだ。
また、アプリケーション別では、先端ロジック向けが全体の79%を占め、残りの21%が先端DRAM向け。同四半期の受注高は28.7億ユーロとなり、前四半期比で大きく回復した。
第3四半期のEUV出荷数は10台
同四半期の売上高を技術別でみると、EUV露光装置が66%、液浸ArF露光装置が21%、KrF露光装置が8%、ドライArF露光装置が1%、i線露光装置が1%、そして露光装置以外の計測・検査装置が3%となっている。同四半期は、EUV露光装置の売上高が、ほかのすべての従来型露光装置の売上高を上回るはじめての四半期となっており、いよいよ、本格的なEUV時代の幕開けを迎えたと言えるだろう。
そのEUVの同四半期の出荷台数は10台で、以前に出荷した分も含めて14台分の売り上げが立ったという。これらの情報を踏まえると、単純計算でEUV露光装置1台当たりの平均価格は約1.5億ユーロ(190億円弱)と推測されることとなる。
通期売上高で過去最高を更新見込み
ASMLの1月から9月までの売上累計額は97億2400万ユーロで、2017年通年の売上高を超えて規模を達成。通年で過去最高の売上高を達成しそうな勢いとなっている。そのカギを握る第3四半期の装置受注台数は、新規リソグラフィ装置が67台、中古が6台となっている。第2四半期は新規28台、中古6台の受注であったから、受注台数が大きく増加しているのがわかる。第2四半期の受注分は、ロジック用とメモリ用が半々だったが、第3四半期にはロジックが86%を占め、ロジックファウンドリへの投資が急増している模様だ。
2021年も2桁成長を目指すASML
ASMLによると、2020年第4四半期の売上高の見通しは36億ユーロから38億ユーロ、粗利益は約50%、研究開発費は5億5000万ユーロ、販売管理費は1億4000万ユーロとなっている。
2021年の見通しについて、ASMLの社長兼最高経営責任者であるピーター・ウェニンク氏は「低めの2桁成長を予想している。もちろん、COVID-19の経済的影響や地政学的な変化など、マクロ環境による不確実性はあるだろう。ただし、長期的なエンドマーケットの推進力は依然として存在する。例えば5GやAIおよびHPCなどだ。これらのアプリケーションはロジックとメモリの両方で高度なプロセスノードの需要を刺激し、高度なリソグラフィを必要としている」と述べ、将来への期待感を示している。
また同社は、業績発表に合わせて、新製品の発表も行なった。
DUVリソグラフィ事業では、新製品として「TWINSCAN NXT:2050i」を第4四半期(10~12月期)の初め、つまり10月上旬に出荷を開始したとする。NXT:2050iは、レチクルステージ、ウェハステージ、プロジェクションレンズ、露光レーザーの新開発を含む、新しいNXTプラットフォームを提供するもので、これらの技術を活用することで、従来機よりも高い生産性と高度なオーバーレイ制御を実現できるようになったという。
一方のEUV事業では、半導体製造現場で普及している「TWINSCAN NXE:3400Bシステム」のアップグレードが行われたこと、ならびに最新モデルとして開発中の「TWINSCAN NXE:3600D」の最終仕様が発表された。NXE:3600Dは従来機比で18%の生産性向上、30mJ/cm2で160枚(300mmウェハ)/時のスループット、そして1.1nmのオーバーレイなどを実現しているとのことで、2021年半ばころからの出荷開始が予定されているという。