市場調査会社の米Strategy Analyticsが2020年上半期スマートフォン(スマホ)用イメージセンサ市場に関する調査報告書を発行した。

それによると、2020年上半期の同市場規模は前年同期比15%増の63億ドルほどで、サプライヤシェアは、トップがソニー(正確には、子会社のソニーセミコンダクタソリューションズ)で前年同期の50%から44%に下げた一方で、2位のSamsung Electronicsが同29%から32%へと上昇、3位のOmniVisionの9%と合わせると上位3社だけで85%と寡占状況となっているという。

  • スマホ用イメージセンサ市場シェア

    2020年上半期のスマホ用イメージセンサメーカーの金額ベースシェア (出所:Strategy AnalyticsのHandset Component Technologies調査部門)

同社のシニアアナリストであるJeffrey Mothews氏は、「スマホ向けイメージセンサ市場は、2MPと8MP品を搭載するマルチカメラ構成の需要が高まったほか、2020年上半期には64MPや108MPといった高画素センサを搭載したハイエンドスマホが出荷されたことで市場が成長した。しかし、トップシェアのソニーは、Samsung、OmniVision、SK Hynixとの競争の激化により、市場シェアを6ポイントほど下げる結果になった」と述べている。

また、同社技術戦略担当バイスプレジデントであるStephen Entwistie氏は、「2020年のスマホ向けイメージセンサ市場は、新型コロナによるスマホ市場の鈍化の影響を受ける一方で、画素数の増加や搭載カメラ数の増加によって、2020年下半期には力強い成長路線が形成されるものと予想する」と述べている。

Huawei向けソニー製品の出荷は停止、Samsungの中国中堅サプライヤ向けは継続

ソニー出身者を所長にすえたイメージセンサ研究所を東京に設置したSK Hynixのシェアはまだ低いが、将来的なダークホースだと見られている。韓国政府の非メモリビジネス強化の国策に沿って、Samsung、SK Hynixともに、一部のDRAMラインをイメージセンサラインに模様替えして生産能力増強に努めていることも成長に対する期待につながっている。一方のソニーもスマホの多眼化やスマホ以外への応用を視野に長崎テクノロジーセンタに新棟を建設中である。

米国商務省の8月17日付け通達により、すべての半導体のHuaweiへの輸出・販売が事実上できなくなったため(正確には、商務省にライセンスを請求し、支給された場合に限り販売可能となったため)、半導体・電子部品業界に異変が起きている。

ソニーは9月中旬以降、年間にして数千億円規模とされるHuaweiへのイメージセンサの販売を中止せざるを得なくなってしまい、業績悪化が懸念されている。一方でSamsungの中国でのイメージセンサビジネスはHuaweiを除く中堅スマホサプライヤが中心であり、今回の規制の対象外であるため、今後、ソニーのシェアが低下し、Samsungのシェアが上昇する可能性が高いとみられる。

もっともソニーには業績改善のためにいくつか道が残されている。1つ目は、Huawei以外の中国スマホサプライヤに販売攻勢をかけ、Samsungから顧客を奪うことであるが、ソニーが不得意とする低価格競争に巻き込まれる可能性が高い。もう1つの道は、米国商務省からHuaweiへの納入に向けたライセンスを得ることである。すでにソニーはライセンス申請手続きを行ったと伝えられているが、5G向けのハイエンド製品に対するライセンスが与えられる見込みは今のところなさそうであり、ソニーがこれ以外の対策を含めどのような戦略をたてるかイメージセンサ業界の注目が集まっている。