半導体市場動向調査会社である台湾のTrendForceによると、メモリ市場(DRAMとNANDは、2020年第4四半期(10~12月期)なっても供給過剰の状態が続いているという。

中Huaweiに対する最近の米国の制裁を踏まえて、他の中国スマートフォン(スマホ)メーカーは、Huaweiの市場シェアを奪おうと半導体メモリ製品を積極的に買いだめしているが、この調達の勢いはメモリ市場を好況に向かわせるには不十分だという。また、サーバ業界からのメモリ需要も目立った回復を遂げていないため、全体的なメモリ平均販売価格は2020年第4四半期に至っても弱いままで、同四半期のメモリ価格は前四半期比でDRAM、NANDともに約10%減少するとTrendForceは予想している。

  • TrendForce

    半導体メモリの四半期ごとの価格動向(2020年第2四半期までは実績、第3四半期以降は予測) (出所:TrendForce, 2020年10月時点)

下げ幅が大きいサーバDRAM

DRAMに関しては、市場は主にビット消費量の大半を占めるモバイルDRAMとサーバDRAMに関心を寄せている。モバイルDRAMについては、米国のHuaweiに対する制裁措置を予期した同社による在庫積み増しがすでに行われており、主要DRAMサプライヤ3社(Samsung Electronics、SK Hynix、Micron Technology)の在庫軽減が進んだほか、XiaomiやOPPO、Vivoといったほかの中国勢も主要コンポーネントの買いだめを進めており、2020年第4四半期のモバイルDRAMの前四半期比平均販売価格は0~5%低下にとどまると見られている。

一方のサーバDRAMについては、ほとんどのクラウドソリューションプロバイダ(CSP)ならびにエンタープライズ サーバクライアントの在庫レベルが比較的高いレベルを維持しているため、第4四半期の平均販売価格は、前四半期比で約15%ほど下落するとTrendForceでは予測しており、主流の32GBモジュールに至っては、2020年末までに約100~110ドル付近まで下がってくると予測している。ちなみに、この価格は前回の価格サイクルの下降局面における最低価格に近い。こうした動きの結果、全体として、DRAM全体の平均販売価格も同四半期では約10%の下落と予測されるという。

NAND価格の下落幅が大きいエンタープライズSSD

NANDについては、大手スマホサプライヤによる在庫積み増し需要がDRAM同様、平均販売価格の維持の助けにはなっているものの、NAND供給ビット数量と顧客在庫レベルの両方ともに高い状況となっており、DRAM市場以上の供給過剰状況となっている。

中国のスマホメーカーからの積極的なNAND需要により、eMMCとUFSの平均販売価格の下落率は前四半期比3~7%程度に収まると予想されるが、NANDウェハの供給が継続的に増加すると、ウェハの平均販売価格は同20%減と、大きく下落する可能性が高い。また、SSDに関しても、サーバメーカーからの需要が弱いため、エンタープライズSSDの平均販売価格が同10~15%ほどの下落となることが見込まれるとのことで、これらを総合すると、NAND全体の同四半期の平均販売価格は、前四半期比約10%ほどの下落になるとみられるという。

スポット市場も9月中旬以降低迷

さらに、メモリ市場全体の動きを示すスポット市場も、9月中旬以降、低迷が続いているという。DRAM、NANDともにスポット取引の中で、ミッドレンジおよびハイエンドメモリ製品の取引が顕著には上昇しておらず、それによってメモリ市場全体の勢いが弱いことを示しているとする。

なお、2021年第1四半期を見据えると、DRAMユーザーからの在庫積み増し需要の増加によりDRAM平均販売価格の下落幅は縮小し、前四半期比0~5%程度の下落にとどまるとみられるという。逆に、NANDについては、供給過剰ともいえるビット数量のために、その平均販売価格の下落幅は同15%減程度の下落となる可能性があるとTrendForceは指摘している。