ドコモは8月25日、今後の5Gネットワーク展開に関するオンライン説明会を開催しました。

5Gには高速・大容量、低遅延、多数端末接続という3つの特徴がありますが、このうち高速・大容量を実現できるのは、5G用に新たに割り当てられた新周波数です。ドコモには総務省から3.7GHz/4.5GHz帯(Sub6)を100MHz幅ずつと、28GHz帯(ミリ波)の400MHz幅が割り当てられています。

NTTドコモ 【サブ6】3.7GHz帯 3600MHz~3700MHz(100MHz幅)
【サブ6】4.5GHz帯 4500MHz~4600MHz(100MHz幅)
【ミリ波】28GHz帯 27.4GHz~27.8GHz(400MHz幅)
KDDI(au) 【サブ6】3.7GHz帯 3700MHz~3800MHz(100MHz幅) / 4000MHz~4100MHz(100MHz幅)
【ミリ波】28GHz帯 27.8GHz~28.2GHz(400MHz幅)
ソフトバンク 【サブ6】3.7GHz帯 3900MHz~4000MHz(100MHz幅)
【ミリ波】28GHz帯 29.1GHz~29.5GHz(400MHz幅)
楽天モバイル 【サブ6】3.7GHz帯 3800MHz~3900MHz(100MHz幅)
【ミリ波】28GHz帯 27.0GHz~27.4GHz(400MHz幅)
各キャリアが割り当てられた5Gの周波数帯域

5Gエリアでひとくくりは「優良誤認」、ドコモがけん制

新周波数は帯域幅が広く、一度に多くのデータをやりとり可能。ドコモネットワーク部技術企画担当部長の中南直樹氏は「例えるなら新たに道幅の広く、車線のたくさんある道路を新設するようなもの」と説明します。一方で電波には、高周波になればなるほど直進性が高く、遠くまで届きにくくなるという特徴もあります。このため「新周波数でエリアを拡大するにはコストと時間を要する」と言います。

KDDIやソフトバンクでは早期の5Gエリア拡大を実現するため、新周波数に加えてDSS(Dynamic Spectrum Sharing)と呼ばれる技術を用いて、4Gで使用している既存の周波数を5Gでも使用する計画です。

ドコモでも既存周波数の一部を5Gに転用することは考えていますが、「既存の周波数は帯域幅が限られているため、新周波数のような高速・大容量は実現できない」と中南氏は指摘します。

「5Gが使えるエリアだから高速・大容量のはず……なのに、速度が出ない」という優良誤認を招かないためにも、「既存周波数を用いた5Gエリアと、新周波数による5Gエリアは、エリアマップなどで分かるようにユーザーに周知すべき」との考えを示しました。

これはKDDIやソフトバンクに対する、けん制とも言えます。もし既存周波数を活用した5Gエリアと、新周波数による5Gエリアが、同じ5Gエリアとして並べられた場合、5Gのカバーエリアの見え方がドコモの不利に働く可能性があるからです。

  • ドコモは高速・大容量な新周波数による5Gと、速度が変わらない既存周波数を活用した5Gを分けて提示しないと優良誤認を招くと指摘

ドコモでは既存周波数の5G転用について、4Gで利用できる帯域が減ると4Gユーザーの速度が低下する可能性があるため、ユーザーの5Gへの移行が進むなど「状況を見極めながら対応したい」としています。またDSSについては今のところ導入の予定はないとし、その理由について「DSSでも数十パーセントレベルの速度低下がある」との認識を示しました。

新周波数による5Gの基盤展開を前倒しで拡大

「ドコモでは高速・大容量な新周波数による5Gを積極的に展開していく」と中南氏。計画を前倒しし、今年度末には全政令指定都市を含む500都市へ、さらに来年度末には2万局の基地局を設置するとの見通しを明らかにしました。2023年度中には基盤展開率※97.0%を目指します。

※基盤展開率=日本全土を10km四方のメッシュにした場合、サービス提供の中核となる基地局が置かれた区画の割合を示すもの
  • 既存周波数の5G利用ではなく、新周波数の基盤整備を前倒しで進めていくことをアピールした

同時に5Gの特徴のひとつとして期待されている低遅延の実現のため、「基地局以降の有線ネットワークも含めた、ネットワーク構成全体の効率化をはかっていく」とのこと。具体的にはインターネットを介してアクセスしているコンテンツサーバーなどをよりユーザーに近い場所に設置し、低遅延化を実現するMEC(Multi-access Edge Computing)や、ネットワークを仮想化、および分割して効率性、柔軟性を高めた5Gコアネットワークを積極的に導入していくとしています。MECについてはすでにドコモ網内に「ドコモオープンイノベーションクラウド」というサービスを展開していることもアピールしました。

ドコモとしては新周波数での高速・大容量なサービスを提供してこその5Gだとの思いがある一方で、ネットワーク構成全体の効率化が進めば「既存の周波数を活用することで、5Gの特徴である低遅延な通信をより広域なネットワークで提供できる」とも。4Gユーザーに影響しない範囲で既存周波数の5G導入も検討しつつ、柔軟なサービスを提供していく考えを示しました。