楽天モバイルの5Gは実効速度で有利?

もちろん、5Gで使用する周波数帯が変われば通信速度も変わってきます。NTTドコモとauは2020年夏のソフトウェアアップデートで、サブ6より帯域幅が広い28GHz帯の利用を可能にすることで、それに対応したスマートフォンでの通信速度が向上するとしています。

具体的には、理論上の最大通信速度がNTTドコモの場合下り4.1Gbps/上り480Mbps、auの場合下り4.1Gbps/上り481Mbpsになるとのこと。スマートフォンであればサムスン電子の「Galaxy S20+」や、富士通コネクテッドテクノロジーズの「arrows 5G」が28GHz帯に対応していることから、これらの機種では28GHz帯の活用によって、さらなる通信速度の向上が期待されています。

  • NTTドコモが発売予定の「arrows 5G」など、一部のスマートフォンは28GHz帯に対応するため、さらなる高速化が期待できる

もっとも28GHz帯はサブ6よりも電波が遠くに飛びにくく、広範囲のカバーがかなり難しい帯域なので、実際に利用できるエリアは現在の5Gエリアより一層狭いと考えられます。28GHz帯に対応した端末だからといって、どこでも高速になるワケではないことには注意が必要でしょう。

そしてもう1つ、ここまで紹介してきた通信速度はあくまで理論上の値であり、環境の変化によって実効速度、つまり実際の通信速度が大きく変わってくることも忘れてはなりません。特に4Gに関しては、現在でも多くの利用者を抱えていることから、デュアルコネクティビティの影響により、4Gの混雑で5Gでの通信速度が大きく落ちることもあり得るワケです。

そうした実効速度の面で優位性があるのが楽天モバイルです。楽天モバイルは2020年6月に5Gのサービスを開始するとしていますが、同社は4Gの本格サービスも4月8日に開始したばかりで、大手3社と比べ利用者がまだ非常に少ないのです。

  • 4Gでの本格サービス開始を発表したばかりの楽天モバイルだが、2020年6月には5Gのサービスも開始するとしている

楽天モバイルは、4Gの周波数帯が1.7GHzの1つだけ、5Gもソフトバンクと同様100MHz幅の3.7GHz帯と、400MHz幅の28GHz帯のみと、潤沢な周波数帯の割り当てを受けている大手3社と比べ帯域の面では不利ではあります。しかしながら当面、利用者自体が自体が少ないことからネットワークが混雑しにくく、その分実効速度が速くなる可能性が高いと考えられるワケです。

もっとも楽天モバイルはまだ4Gのエリア自体が狭く、多くの場所をKDDIへのローミングで賄っている状況なので、消費者がその恩恵を受ける場所はかなり限定されることになるでしょう。とはいえ大手3社の5Gエリアも、少なくとも1年間はスポット的なカバーにとどまり非常に狭い状況が続くだけに、5Gの競争だけに絞れば楽天モバイルは意外と優位に立てる可能性があるかもしれません。