Appleの行く年来る年、2020年のAppleについて語る後編です。

Appleに関するリーク情報というと、一昔前は石だらけの玉石混交でした。近年はアナリストのMing-Chi Kuo氏やBloombergのMark Gurman氏などによる精度の高い情報が見分けられるようになりました。一昔前のように根拠のないリーク情報にApple株が影響されることが減り、逆に正確な分析が、未発表の製品について語らないAppleの製品ロードマップのようになっている面があります。まずはそうした実績のあるアナリストやジャーナリストに絞り込んで発表が噂されている製品をリストしてみました。

  • 13インチMacBook Pro、シザー構造のキーボードを搭載
  • iPad Pro:マルチカメラと3Dセンサーを搭載か
  • iPhone SE 2:iPhone 8ベースで4.7インチのディスプレイを搭載、プロセッサはA13
  • iPhone 12/ iPhone 12 Pro:5Gネットワークに対応、リアに3Dセンサー搭載か
  • Apple Watch:プロセッサのスピードと効率性を向上させられるタイミングで睡眠トラッキングに対応か
  • サービスバンドル:Apple TV+、Apple News+、Apple Musicなど
  • HomePodの廉価版
  • AR/VRヘッドセット:2020年登場と報じられたこともあったが、2021年以降に延期という噂
  • Appleタグ:プロジェクトは存在するものの、製品が出るか、いつ出るかは不確か

例年通りなら2020年もAppleは、初夏に開発者カンファレンスWWDCで5つのOSのアップデートを発表し、秋のiPhone新製品発売のタイミングで正式版をリリースするでしょう。次期メジャーアップデートに期待することは、安定性とパフォーマンスの改善を優先したアップデートです。2019年秋にリリースされたメジャーアップデートはベータ段階から不安定で、リリース後に短期間でバグ修正やパフォーマンス改善のためのアップデートが繰り返されました。これは昨年のアップデートに限った問題ではなく、iOS 12を除いて、ここ数年バグ問題の議論が毎年のように広がっていました。

  • 安定性を欠いた2019年のOSアップデート、正式版リリース後のアップデートにはバグ修正が多く、アップデートによって新たな問題が発生するというトラブルもありました

いくつかの新機能を翌年に持ち越して、安定性とパフォーマンス向上に力を注いだiOS 12 (2018年秋リリース)は、発表時には地味なアップデートと見なされました。しかし、正式版公開後には上々の評価を得て、目新しい機能以上にユーザーに歓迎される改善になりました。5種類のOSが存在し、それらがiCloudを介して連携するプラットフォームで、毎年同じ時期に、一気にアップデートを提供するサイクルの限界が指摘されています。iOS 12の時のように2年サイクルにしたり、またはDeep Fusion(2019年)やポートレートモード(2016年)を機能アップデートで秋に追加したように、9月には土台となるOSアップデートのみ提供して新機能は1年を通じて順次追加していくといった方法が開発者コミュニティから提案されています。

  • 昨年の四半期決算において最高財務責任者のLuca Maestri氏は、Apple TV+の立ち上げには時間とコストをかけてじっくりと取り組むため、成果の評価を急がないと述べていました

2019年に始まったサービスの中でも、Appleが特に「Apple TV+」に力を注いでいるのは明らかです。Apple Musicの時と同じように長期戦でユーザーを増やしていく構えで、新しいAppleデバイス購入者の無料トライアルを1年に延長する限定特典を用意しました。

無料トライアルが終了するユーザーを有料サービスに呼び込むために、魅力的な作品の継続的なリリースが重要になります。映像プロダクション買収の噂もあります。サービスバンドルはApple TV+やApple Arcadeが始まる前から、多くのApple製品ユーザーの関心を集めていましたが、2019年に提供されることはありませんでした。可能性の1つとして、1年間の無料トライアルの終了が始まる秋に備えて用意されるのではないかという期待が高まっています。

  • プロ向けのMacを刷新した2019年、次は13インチMacBook Proなど一般向けMacが変わる?

16インチのMacBook Proの強化点が、13インチのMacBookにも導入されるのは自然な流れでしょう。また、1年半〜2年ぐらいのペースでアップデートされてきたiPad Proは、サイクル通りなら新モデルが登場する年になります。

さて、注目点は「1,000ドル前後のデバイス」です。現在のラインナップは、iPad Proが11インチ 799ドルから、12.9インチが999ドルから。そしてMacBook Airが1,099ドルから、MacBook Proが1,299ドルからとなっています。1,000ドル以下はiPad、1,100ドル以上でMacBookというような棲み分けができていて、よく売れる「1,000ドル以下のノートPC」がAppleにはありません。「1,000ドル以下のノートPC」を購入する人達にはiPad Proを勧めるAppleの声が聞こえてくるようなラインナップです。

しかし、16インチのMacBook Proの強化点などを見ると、全てのPCユーザーをタブレットユーザーに変える限界をAppleが認めたように思えます。便利ならタブレットで十分というPCユーザーがいるのも事実ですが、PCでなければダメなPCユーザーが多いのも事実。それならよく売れる1,000ドル前後のノート型Macを復活させるかもしれません。そうなると新しいiPad Proと価格が重なる部分ができて「食い合い」が起こる恐れがありますが、タブレットではダメなPCユーザーが多いのならApple製品ユーザーの拡大につながります。

  • 昨年7月にアップデートされた「MacBook Air」、そのタイミングで12インチ「MacBook」が消えるというサプライズがありました

ARMベースのMacは登場するか? 熱い話題ですね。MicrosoftはすでにARMベースの独自プロセッサを搭載した「Surface Pro X」を販売しています。ARMベースのプロセッサを活かせるのはモバイルであり、Appleでモバイルノートというと12インチの「MacBook」でした。しかし、12インチMacBookが切り拓いた新しいノート型MacがMacBook Airに引き継がれ、MacBookはラインナップから姿を消してしまいました。見方を変えると、現行モデルがないMacBookはARMベースになるような大胆な変更が可能です。ただ、iOSアプリをMac用アプリに移植する「Catalyst」が期待ほど順調ではなく、Apple基準の体験の実現を考えたら課題が少なくありません。