毎年恒例のAppleの行く年来る年、前編では2019年のAppleをふり返り、後編で2020年のAppleについて予想します。

2019年は「Appleショック」で波乱の幕開けとなりました。中国経済の減速、iPhoneの買い換えサイクルの長期化などからiPhoneの売れ行きが予想を下回り、年明けに2018年10〜12月期の売上高予測を下方修正。製品が最も売れるホリデーシーズンの業績予想の引き下げの影響は、同社のサプライチェーン、iPhoneのエコシステム、そしてチャイナリスクの影響の受ける可能性がある他の分野にも広がっていきました。

1年をふり返る前回の記事の中で、私は「数年後に、2018年はAppleが新たな成長戦略の一歩を踏み出した年と評価されるかもしれません。逆に、ピークを過ぎて減速が始まった年になる可能性もあります。Appleの今後は果たしてどちらなのか」と書きました。再成長か、それともピークアウトか、2019年はその答えの一端が見えてきた年だったと言えます。

まずは今年1年間のAppleの主な動向をまとめました。

  • 1月:業績予想を下方修正。LG、Samsung、ソニー、VisioなどのスマートTVが「AirPlay 2」をサポート、SamsungのスマートTVは「TV」アプリを搭載。中国で「HomePod」販売開始。
  • 2月:リテールおよびオンラインストア部門を率いるAngela Ahrendts氏が退任することを発表。
  • 3月:株主総会。3月後半に新しい「iPad Air」と「iPad mini」、「iMac」をアップデート、第2世代の「AirPods」を発表。Apple Parkでスペシャルイベントを開催し、「Apple News+」「Apple Card」「Apple Arcade」「Apple TV+」といった新サービスを発表しました。ワイヤレス充電マット「AirPower」の開発を中止。

昨年の予想で、Appleがデジタルホームでシェアを広げられない理由の1つとして家電メーカーを巻き込んだエコシステムを作れていないことを挙げました。それは「Apple TV+」のようなオリジナルコンテンツ配信を普及させる上でも不安材料の1つでしたが、北米最大の家電IT見本市CESにおいて、スマートTVメーカーがAppleとのパートナーシップを発表しました。AppleはCESに参加していなかったものの、会場近くにプライバシー保護の重要性を訴える巨大な広告を掲げていたのが話題になりました。

  • SamsungのスマートTVで「Apple TV」アプリが利用できるように

  • 4月:米国の有料音楽ストリーミング契約でApple MusicがSpotifyを上回る。特許訴訟でQualdommと和解、全世界で訴訟取り下げ。
  • 5月:1〜3月期決算の売上高が予想を上回り、時価総額1兆ドルを回復。新しいApple TVアプリをリリース、「MacBook Pro」をアップデート、新しい「iPod touch」を発売しました。
  • 6月:WWDC 2019開催、iOS、macOS、watchOS、tvOSのメジャーアップデートに加えて、新たに「iPadOS」を発表。デザインを統括するJonathan (Jony) Ive氏がAppleを退社して独立すると発表。

Qualcommとの全面和解は、大きな流れを変えるインパクトのある出来事でした。それによって2020年にも5G対応のiPhoneを提供できるようになり、iPhoneの5G対応が不透明という懸念を払拭できたのが、Appleの株価を上向かせるきっかけの1つになりました。

  • 7月:Intelのスマートフォン向け通信半導体事業を買収。4〜6月期が3四半期ぶりの増収、時間外で株価大幅高。
  • 8月:Siriの音声認識の品質評価において、録音した音声サンプルをAppleのコントラクタが分析するプロセスを廃止。米中摩擦の激化で株価下落。「HomePod」を日本で発売。iPhone修理の認定対象を拡大。米国で「Apple Card」の提供を開始。
  • 9月:国内最大の直営店「アップル丸の内」をオープン。秋のスペシャルイベントを開催し、「iPhone 11」「iPhone 11 Pro」シリーズ、「Apple Watch Series 5」、第7世代「iPad」などを発表、ゲームサービス「Apple Arcade」を開始しました。秋から動画配信で競合するため、Disney CEOのBob Iger氏がAppleの取締役を退きました。

米国で提供が始まったApple Cardは、キャッシュバックの割合など特典で他のクレジットカードと比較して語られることが多いものの、iPhoneに統合されたクレジットカードであることが最大の特徴です。AirPodsが「iPhoneで使うと最高」とよく言われるのと同じ魅力を備えます。

  • カードはチタン製でカッコいいけど持ち歩くのをためらうほどずっしりと重い。「Apple Card」はカードではなく、Apple Payで使うのが基本です

  • 10月:iPhone11の販売が好調という見方から、Apple株が上場来高値を更新。「AirPods Pro」を発売。
  • 11月:Apple「TV+」を開始。16インチの新「MacBook Pro」を発表。
  • 12月:新「Mac Pro」と「Pro Display XDR」の販売を開始。
  • 「AirPods Pro」、まさかの1年に2つめのAirPods新製品というサプライズ