年の瀬、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

この時期、みんなお待ちかねの楽しいイベントいえば、

「くりすますー!」

ちがう! そう! ちがーう!

「冬コミケー!」

それ! ちがう! それだー!

“冬コミケ”ことコミックマーケット97(C97)が2019年も12月28日から12月31日の四日間開催される。場所は国際展示場西1,2,3,4ホールと南1,2,3,4ホール、そして青海展示棟(企業ブース)だ。前回の2019年夏コミ(C96)同様の変則日程変則会場だ。

  • 今年も来ます冬コミケ。ビッグサイトが“つわもの”どもで埋め尽くされる(画像は夏のC96)

    今年も来ます冬コミケ。ビッグサイトが“つわもの”どもで埋め尽くされる(画像は夏のC96)

そのC97に!
俺はブースをだすぞ! ジョジョーーッ!!
なんと男子五十五にしてコミケ初出展。
まさかこんな人生が待っているとは。

と、ここまで読んで私を知る人は、今まさにディスプレイの向こう側で椅子から転げ落ちているはずだ。

「おおおぃ、ちょっとマテ。漫画、というか、そもそも絵描けたっけ?」
なにぉう、俺だって絵ぐらいかけるわ!

  • シーン……

分かった! 俺が悪かった! お前さまたちの言うとおりだ!
というわけで、私は漫画どころか絵を描くこともままならない。そんな私でもコミケにブースを出すことはできるっー。

そんな「コミックでない薄い本」のためにあるのが「評論・情報」「鉄道・旅・メカミリ」「歴史・創作(文芸・小説)」といったジャンルだ。それらのカテゴリーで頒布される“薄い本”が扱うテーマと情報量はそれもはもう“ただならない”ものがある。あまりの濃さと深さに最近では注目度爆上がり中で、カテゴリーごとにスピンオフともいえる即売会イベントが登場して、そのそれぞれがまた大盛況というのが最近の動向だ。

例えば、開催するごとに来場者二桁増を続けているアナログゲームのイベント「ゲームマーケット」はコミケ「ゲーム(非電源)」のスピンオフ的存在だし(ゲームマーケットが始まった理由は別にあるが)、情報処理技術関連の薄い本で盛り上がる「技術書典」は「評論・情報」の情報処理系やエレクトロ系関連がスピンオフして始まった即売会イベントだ。ゲームマーケットにしても技術書典にしても、最近では「出展したいけれど抽選に落ちた」となるほどに、出店希望者が増えている。

このような話をすると、必ずと言っていいほど「ブログとかある現代で、わざわざ紙の薄い本を作る意味が分からない」という反応が返ってくる(特に仕事でかかわっているWeb媒体関係者)。そういう突込みがきたとき、私は次のような理由を挙げておく。

「手に取って持つことができる物理的に存在する本が好き」
「だから紙の本を作りたい」
「商業ベースでは“商売にならない”といって相手にしてもらえない濃くて深い話が好き」
「商業ベースで作ることができないなら自分で作る」
「そういうほかの人が作った濃くて深い話の本も欲しい」

こういう同好の士が溶けるように暑いお盆の4日間や体の芯まで凍り付く年末の4日間に集う。それ以上でもそれ以下でもない。

というわけで、C97に“文字メイン”(きっとほとんどが文字)の薄い本を作って自分の店を出すことになった私だがっ。

ほんの一週間前「いやー、やっとゲームマーケット2019秋(もともと私はインディーズのボード“ウォー”ゲームサークルをやっていて、そのデザインと制作と宣伝とイベント頒布という修羅場を11月25日に終えたばかりだった)も終わったから、コミケ用の原稿に着手するかー。でも、ゲームマーケットのために11月は仕事も減らしてしまったから、ここでその分もお仕事原稿増やして挽回しておかなければならないけれどまあ何とかなるでしょうって、コミケ用の原稿、どのぐらい書かないといけないのかなって計算してみると、本文レイアウトが17文字47行3段組みで本記事は2部構成1部6ページだから文字数はざっと……、に、に、に、2万8764文字!?」

あ、あれー? そんなに書かないといけないのかな? しかも一週間で、本業の原稿も書きつつで?

うおー! なんかいきなり“尻からほむら人”なんですけどっ。ここで「いやあなた、コミケに申し込んだの8月でしょ」と指摘したあなた。あなたのその心がけは立派だが人間そう立派な人ばかりではないのよ(いや確かにいいわけなんですけれど、コミケ当確が分かる11月初めまではなんか気分的に着手できないんですよねー。確かにそれが一番の原因なんですけど)。

いやこれなんかとってもまずいことになっている。専念できればいいのだけれど、そういうわけにもいかないので、別件仕事で移動中や時間調整などなど、ちょっとしたすきま時間でも原稿書き進めないと。

こんなときのために長らくThinkPad X1 Carbonが“移動の友”だったが、そのThinkPad X1 Carbonが先日長寿をまっとうしてしまった……。いかーん!なんでこのタイミングで! 悲しむ間もなく代わりの相棒を探す私の目に入ってきたのがデルの「New XPS 13」だ。このノートPC、実はつい先日マイナビニュースで評価したばかりだったが、そのとき、「キーボードをタイプするときの感触」がやけに気に入ってしまった。

  • 今回はとってもとっても助けていただいたNew XPS 13

こういうと、「んんんんーーーーー?」という声が少なからず上がってくるかもしれないのは、私も分かっている。このキーボード、というか、New XPS 13で採用しているキーボード機構の「MagLev」(磁力浮遊式)について、評価が結構分かれていると聞く。このMagLev機構、磁力の反発力でキートップを「浮かして」おけるので、パンタグラフ機構などが不要でキーボードユニットを「薄く」できるメリットがある。他に可動部分が少ないのでキータイプによる部再摩耗も少なく経過に伴う故障などが少ないというのがメーカーサイドでこの機構を採用する理由だ。

  • 「MagLev」(磁力浮遊式)の採用でこんな薄いボディに収まるキーボードが可能になった

ただ、キートップを磁力で浮かしているため、「タイプした指の力を押し返す力」の調整は従来のキーボードと比べてかなり「個性的」になっている。従来のキーボードでは押し返す力を「押し込んだ瞬間は弱く押し込むにつれて徐々に強くなり、あるところまで押し込んだら一気に弱くなる」という、一方の軸をキートップが押し込まれた距離、もう一方の軸を押し返す力にしたグラフでカーブを描くように調整している。この力加減の「カーブ」の形がキーボードをタイプした時の感触を大きく左右する。

デル公式のデータではないので、主観的な「感想」になるが、New XPS 13が搭載するキーボートのタイプ感は従来のキーボードのような「きれいなカーブを描いて押し返す」というものではない。磁力の特性(磁力の強さは磁石間距離の2乗に反比例する)を考えると「押すほどに押し返す力は強くなる」となる。ただ、(キーボードユニットが薄いために)ストロークの浅いNew XPS 13のキーボードでは、キートップを押し切る時間がわずかしかない。そのため、「キーストローク中における押し返す力の変化」を感じる余裕もない。

結局、キータイプの感触に大きく影響するのは「キートップを押し切ったときに指の力を確実に支えるキーボードユニットの剛性」であり、その意味でNew XPS 13のキーボードユニットはキートップを押し切った指をたわむころなく力強く支えてくれる(押し切ったときにキーボードから押し返す力が弱すぎると「ふかふか」という感触になって「ん? キートップを最後まで押し切ったのかな」が分からなくなる)。

New XPS 13のキーボードをタイプすると、それは「ぱちぱち」という電卓のボタンを押すような感触だ。確かに従来のキーボードとはだいぶ異なる。ただ、キーストロークが浅いキーボードの場合、かえって、ボタンのような感触が「タイプしたかしていないか」がはっきりと分かって快適にタイプを続けることができる。この「続けることができる」というのが実は長文の文章を入力するのに意外と効果的であるのを、私は“薄い本”の原稿を作成しているときにいやというほど体感した。

といえ、客観的な数値データがあるわけでもなく主観的な感触が根拠という「個人の感想です」的な評価ではあるが、とりあえず、私がすきま時間をどうにかやりくりして、実質2日間で3万文字のテキストを書き上げることができた(それも多種多様な資料を調べつつ)のは、New XPS 13のキーボードに対する1つの客観的指標といえるかもしれない。

  • “薄い本”第一部だけで1万4000文字超。「図版があるから文字数はマス目の数の半分でいい」ことに気が付くのはこの直後のことだった……

あー、ただでも1つだけ。カーソルキーと「くっついている」Page UpとPage Down。お前らはだめだ。何度誤爆してテキストがあらぬところに吹っ飛んでいったことか。あと、でかすぎるタッチパッドもダメ。日本語変換のためにスペースキーをタイプしようとすると親指下の「たぷたぷ」したところが触れて、予期せぬ事故が多発するから。ほらー、この文章入力するときも3回ほど事故が起きているだが。

  • こうなっちゃうんだよ