最軽量ではなく「何が必要か」を考えた
――Let'snoteのモノづくりとして譲れない部分、あるいはこだわった部分はどこですか。
小林 今回のQV8では、世界最軽量を目指すという部分には、むしろこだわりませんでした。お客様が仕事に使ってもらう上で、なにが必要かを考え、インタフェースやバッテリー駆動時間、キーボードの打ちやすさ、画面サイズなどを重視しました。
重量に関しては、世界最軽量は目指さないとはいえ、1kgを超えると持ったときに重いと感じてしまいますから、そこは切りたい。それは譲れない目標としました。
坂田 開発当初は、もっと重くなると考えていました。本当に1kgを切れるのかというところのせめぎ合いをしていて、最後によく切れたなという感じでした。ところが、999gという数字が見え始めたときに、開発チームがもうひとがんばりしてくれて、結局は949gまで詰めてくれました。
上田 世界最軽量はうたわなくても、努力して、詰められるところまで詰めました。これは数字を実現するための努力ではなくて、お客様が利用することを考えた上で、少しでも軽量化をしたいという想いから努力をした結果です。
――軽量化を進める上で、一番効果があったのはどこですか。
上田 軽量化で一番効くのは、フットプリントを小さくすることです。小さくするといっても、12.0型ディスプレイは確保し、キーボードもフルサイズは確保する。そして、液晶、バッテリー、放熱構造、ファン、基板といった構成部品を、どこまで軽くできるのかをそれぞれに検討していきました。もちろん、Let'snoteならではの堅牢性は譲れません。バランスをとって、ひとつずつ整理をして、その結果、この重量になっています。
開発中は気が抜けないことの繰り返しでしたが、これまでのレットノートの開発で蓄積してきたノウハウもありますから、やみくもに作って、シミュレーションを行い、評価をしたわけではありません。これぐらいのところで作ってみて、それながら評価に値するかということを考え、試作やシミュケーションを繰り返しました。最初の構造設計のあとに、数台の試作品を作ったときに、これでなんとか行けるという手応えはありました。最初にこの手応えを感じられたことは大きかったといえます。
薄さを取るか、使い勝手を取るか
――薄さについては、どんな考え方で取り組みましたか。
坂田 2in1モデルですから、タブレットとして使用した時に、操作がしにくい厚さになることは避けなくてはいけません。それが前提としてありました。
上田 同時に、出張や持ち運びの際にストレスにならないような薄さを追求しました。薄さの数値については社内目標を設定しています。
坂田 QV8では、天板に逆ドーム型ボンネット構造を採用しています。これは薄さと堅牢性を両立したものです。中央部を0.2~0.3mm程度すり鉢状となる凹形状とし、薄肉でも過重が加わった際のたわみを抑制。ボンネットの一部のみを補強し、薄さと強度を確保しました。また、筐体部も薄肉化し、シミュレーションを繰り返して、部品にかかる負荷を解析し、ピンポイントで必要な分だけを補強しました。堅牢性については、100kgf加圧振動試験など、他の機種と同じ頑丈試験を実施して、同様にそれをクリアしています。モバイルPCだからこそ発生する様々なリスクに備えた頑丈性能を実現しています。
上田 ただ、仕事をするという観点や、想定した利用シーンを考えたとき、薄さを優先するのか、機能性や使い勝手を優先するのかということでは、後者を優先することもありました。たとえば、キーストロークをしっかりと確保して使いやすさを高めること、必要とされるレガシーのコネクタなどを載せるという点においては、薄さばかりを追求したわけではありません。
――確かに、レガシーなインタフェースへのこだわりはQV8でも踏襲していますね。
上田 VGAや有線LANといったインタフェースは、QV8でターゲットとしたユーザーの使い方を考えれば不可欠だと判断しました。病院や自治体、企業のなかには、まだ古いプロジェクターなどが配備されていて、やはりVGAコネクタが必要だというケースが少なくありません。出張や外出の際に慌てて変換ケーブルを忘れ、プレゼンテーションの機会を逸してしまうといったことがないようにしています。
部品としては、VGAが一番高さがありますから、薄さはこれにあわせることになってしまいます。また、接続されるケーブル側のコネクタに厚みがあるため、それを考慮する必要もあります。QV8はそうしたコネクタをつなげる際には、前側につけた足を持ち上げれば、差し込めるようにしています。
また、QV8は、バッテリー交換にも対応しています。自分で交換ができれば、そのために修理に出さなくてもいいわけですからね。
坂田 キーストロークについても、12.0型以上のLet'snoteであれば、2mmのストロークは譲れませんでした。外出先で書類を作成する場合もありますから、キーボードの打ちやすさは譲りたくない。
こうしたところもストレスにならないように、2mmのストロークと、19mmのキーピッチにはこだわりました。この薄さのなかに、必要とされるすべてのポートを搭載し、2mmのキーストロークを実現するというのは、QV8で苦労した部分のひとつですね。2mmのキーストロークを確保するには、キーボードの近くにはコネクタを置けません。最後には、VGAのコネクタを我慢してもらうかという話も出ましたが、それも妥協しなかった。そうした試行錯誤の繰り返しの結果にできあがったのがQV8です。