• 12.0型の「Let'snote QV8」は、クアッドコア搭載の2in1として世界最小をうたう

    パナソニックが9月24日に発表した12.0型の「Let'snote QV8」。クアッドコア搭載の2in1として世界最小をうたう

パナソニックの「Let'snote QV8」シリーズは、A4用紙よりもコンパクトな筐体に12.0型の液晶ディスプレイを搭載した2in1モバイルPCだ。書類が見やすい横縦比3:2のアスペクト比を採用。フリップ式(回転式)とすることで、タブレットスタイルに簡単にチェンジできる。

1996年の発売以来、「軽量」、「長時間」、「頑丈(タフ)」、「高性能」というコンセプトを進化させてきたLet'snoteの新たな提案が「Let'snote QV8」。この製品は、どんな狙いで開発されたのか。

「Let'snote QV8」を開発したパナソニック コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部開発センター プロジェクトマネジメント部レッツノート総括の坂田厚志氏、同上田大プロジェクトリーダー、同マーケティングセンター商品企画部の小林俊夫氏に聞いた。

  • パナソニック コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部開発センター プロジェクトマネジメント部Let'snote総括の坂田厚志氏

  • パナソニック コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部開発センター プロジェクトマネジメント部プロジェクトリーダーの上田大氏

  • パナソニック コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部マーケティングセンター商品企画部の小林俊夫氏

Let'snote QV8は誰のためのPC?

――「Let'snote QV8」の開発は、どんな経緯からはじまったのでしょうか。

小林 2019年5月にクラムシェルタイプの12.0型モバイルPC「XZシリーズ」を発売し、さらに、光学ドライブを搭載した「SVシリーズ」や「LVシリーズ」を進化させる一方、2in1では、10.1型の「RZシリーズ」に加えて、新たなモデルを用意することで、ラインナップを強化することを目指しました。

調査会社の予測でも、今後、2in1の市場成長が期待されており、そこに対して、ターゲットを明確に想定した製品を投入したのが、今回の「QVシリーズ」ということになります。

坂田 Let'snoteは1996年の発売以来、「軽量」、「長時間」、「頑丈(タフ)」、「高性能」というコンセプトを進化させてきました。そして、業務革新に貢献するという観点からみた、我々のひとつの回答が“お客様の仕事を止めないPC”。今回のQVシリーズは、一瞬のビジネスチャンスを逃したくない人、また、そういう機会が多い人に使ってもらうことを想定して開発した製品です。

――具体的には、どんなユーザー層を狙っているのですか。

小林 テレワークの環境で仕事をする人、PCを持ち出す機会が多い人、そして、出張が多い人がターゲットとなりますが、そのなかでも、移動する時間が多かったり、場所にとらわれずに作業をしたり、持つことができる荷物に制限があるといった人を意識しています。たとえば、ルート営業をしている人やMR(医薬情報担当者)といった人たちは、会議室で打ち合わせをするというのではなく、立ったまま、その場でPCを開いて、すぐに製品を紹介したり、プレゼンをしたりといったケースがあります。そのとき、軽くて、コンパクトで、パッと開いて使える製品を目指しました。

――12.0型で、3:2のアスペクト比の液晶ディスプレイを採用した狙いも、こうした利用を想定したものですか。

上田 はい、そうです。16:9などの一般的な横長のディスプレイは、画面に書類を表示したとき余白が出るという課題があります。書類を閲覧したり、相手に見せたりという際には、使い勝手の点でも、3:2のディスプレイが最適なアスペクト比です。

文書の閲覧が多い人にとって、3:2のディスプレイは見やすいというメリットがありますし、プレゼンでも全体を表示できます。そして、書類の表示に不要な部分を削れば、小さくなり、軽くなり、持ち運びやカバンに入れる際、取り出す際にもプラスに働きます。ユーザーの利用シーンを想定して、開発初期の段階からこの比率を決めました。

小林 常に持ち歩く人にとっては、よりコンパクトにしてほしい、ほかの荷物と一緒に持つのでもっと軽くしてほしいという声があります。そうしたユーザーが利用することを考えた結果、3:2というアスペクト比を提案しました。12.0型の3:2のディスプレイは標準的なものではありませんが、このアスペクト比にこだわった理由はここにあります。

  • アスペクト比は3:2(254×169mm)。Surfaceシリーズと同じこの比率は、16:9と比べると正方形に近い形が印象的だ

――今後、Let'snoteでは3:2というアスペクト比の製品が増えていきますか。

上田 すべての製品のディスプレイを、3:2のアスペクト比にするということは考えていません。QV8シリーズがターゲットとしているユーザーや用途において、最適な解を目指して採用したのが3:2のアスペクト比であったと捉えてください。

最軽量ではなく「何が必要か」を考えた

――Let'snoteのモノづくりとして譲れない部分、あるいはこだわった部分はどこですか。

小林 今回のQV8では、世界最軽量を目指すという部分には、むしろこだわりませんでした。お客様が仕事に使ってもらう上で、なにが必要かを考え、インタフェースやバッテリー駆動時間、キーボードの打ちやすさ、画面サイズなどを重視しました。

重量に関しては、世界最軽量は目指さないとはいえ、1kgを超えると持ったときに重いと感じてしまいますから、そこは切りたい。それは譲れない目標としました。

坂田 開発当初は、もっと重くなると考えていました。本当に1kgを切れるのかというところのせめぎ合いをしていて、最後によく切れたなという感じでした。ところが、999gという数字が見え始めたときに、開発チームがもうひとがんばりしてくれて、結局は949gまで詰めてくれました。

上田 世界最軽量はうたわなくても、努力して、詰められるところまで詰めました。これは数字を実現するための努力ではなくて、お客様が利用することを考えた上で、少しでも軽量化をしたいという想いから努力をした結果です。

  • 世界最軽量はうたわないが、使い勝手として軽さを意識した結果、2in1でも1kgを切る949gを実現(最軽量構成時)

――軽量化を進める上で、一番効果があったのはどこですか。

上田 軽量化で一番効くのは、フットプリントを小さくすることです。小さくするといっても、12.0型ディスプレイは確保し、キーボードもフルサイズは確保する。そして、液晶、バッテリー、放熱構造、ファン、基板といった構成部品を、どこまで軽くできるのかをそれぞれに検討していきました。もちろん、Let'snoteならではの堅牢性は譲れません。バランスをとって、ひとつずつ整理をして、その結果、この重量になっています。

開発中は気が抜けないことの繰り返しでしたが、これまでのレットノートの開発で蓄積してきたノウハウもありますから、やみくもに作って、シミュレーションを行い、評価をしたわけではありません。これぐらいのところで作ってみて、それながら評価に値するかということを考え、試作やシミュケーションを繰り返しました。最初の構造設計のあとに、数台の試作品を作ったときに、これでなんとか行けるという手応えはありました。最初にこの手応えを感じられたことは大きかったといえます。

薄さを取るか、使い勝手を取るか

――薄さについては、どんな考え方で取り組みましたか。

坂田 2in1モデルですから、タブレットとして使用した時に、操作がしにくい厚さになることは避けなくてはいけません。それが前提としてありました。

上田 同時に、出張や持ち運びの際にストレスにならないような薄さを追求しました。薄さの数値については社内目標を設定しています。

坂田 QV8では、天板に逆ドーム型ボンネット構造を採用しています。これは薄さと堅牢性を両立したものです。中央部を0.2~0.3mm程度すり鉢状となる凹形状とし、薄肉でも過重が加わった際のたわみを抑制。ボンネットの一部のみを補強し、薄さと強度を確保しました。また、筐体部も薄肉化し、シミュレーションを繰り返して、部品にかかる負荷を解析し、ピンポイントで必要な分だけを補強しました。堅牢性については、100kgf加圧振動試験など、他の機種と同じ頑丈試験を実施して、同様にそれをクリアしています。モバイルPCだからこそ発生する様々なリスクに備えた頑丈性能を実現しています。

上田 ただ、仕事をするという観点や、想定した利用シーンを考えたとき、薄さを優先するのか、機能性や使い勝手を優先するのかということでは、後者を優先することもありました。たとえば、キーストロークをしっかりと確保して使いやすさを高めること、必要とされるレガシーのコネクタなどを載せるという点においては、薄さばかりを追求したわけではありません。

  • 本体の高さは18.7mm。Let'snoteシリーズの特徴ともいえる天板の凹凸がほぼなくなった

――確かに、レガシーなインタフェースへのこだわりはQV8でも踏襲していますね。

上田 VGAや有線LANといったインタフェースは、QV8でターゲットとしたユーザーの使い方を考えれば不可欠だと判断しました。病院や自治体、企業のなかには、まだ古いプロジェクターなどが配備されていて、やはりVGAコネクタが必要だというケースが少なくありません。出張や外出の際に慌てて変換ケーブルを忘れ、プレゼンテーションの機会を逸してしまうといったことがないようにしています。

部品としては、VGAが一番高さがありますから、薄さはこれにあわせることになってしまいます。また、接続されるケーブル側のコネクタに厚みがあるため、それを考慮する必要もあります。QV8はそうしたコネクタをつなげる際には、前側につけた足を持ち上げれば、差し込めるようにしています。

また、QV8は、バッテリー交換にも対応しています。自分で交換ができれば、そのために修理に出さなくてもいいわけですからね。

  • いまだ企業ユースで需要が高いVGAポートや有線LANポートを搭載。前側の「足」(本体側面手前、イヤホンジャックの右下)を持ち上げれば、どのコネクタも挿しやすい設計になっている

  • バッテリーはQVシリーズ専用のもの。ユーザー側で交換できる

坂田 キーストロークについても、12.0型以上のLet'snoteであれば、2mmのストロークは譲れませんでした。外出先で書類を作成する場合もありますから、キーボードの打ちやすさは譲りたくない。

こうしたところもストレスにならないように、2mmのストロークと、19mmのキーピッチにはこだわりました。この薄さのなかに、必要とされるすべてのポートを搭載し、2mmのキーストロークを実現するというのは、QV8で苦労した部分のひとつですね。2mmのキーストロークを確保するには、キーボードの近くにはコネクタを置けません。最後には、VGAのコネクタを我慢してもらうかという話も出ましたが、それも妥協しなかった。そうした試行錯誤の繰り返しの結果にできあがったのがQV8です。

  • 筐体の桟(トップキャビ)をキーボード面と一体成形して、キーボードを下からはめ込む方法に変更したことで、2mmストロークを確保し、本体左右の幅を詰めた

  • QV8のキーボード

クアッドコアCPUが生む熱をどうするか

――キーストロークの確保以外に苦労したところはどこですか。

上田 やはり、コンパクトにするという点での試行錯誤ですね。コンパクトにしながら、各種機能を搭載するということは、部品による内部空間の取り合いのようなものですから(笑)。

さらに、Intel第8世代クアッドコアを搭載しているので、内部の放熱構造には厳しいものが要求されました。各種部品の高さや配置の仕方、内部空間の風の流れを何度も計算しました。ここでは、最適な風の流れを作ると、コネクタの位置がユーザーに使いにくい場所に配置されてしまったり、逆に使いやすさばかりを優先すると、放熱効果が得られないということがありました。部品の位置や高さを何度も変えてシミュレーションを行い、最適な構造を実現したわけです。

また、QV8用に新たなファンを採用しました。ここでも、薄型化を実現するためには羽根を薄くしなくてはいけませんが、そうなると風力が弱まります。そこで、羽根の枚数や形状に工夫を加えたり、ボトムケースの様々なところにスリットを入れて空気のながれを効率的にしたりといったことをやっています。また、吸気穴と排気穴の場所は、空気圧にも関係してくるので、それもシミュレーションを行いながら場所を決めました。こうしたトータルの取り組みによって、放熱性を高め、さらにコンパクト化を実現しました。

  • QV8の内部構造

坂田 もうひとつ、コンパクト化する上では、前側の筐体と後ろ側の筐体のあわせ方を変えて、「突き当て嵌合方式」を用いました。天板とフロントキャビネットをオーバーラップさせる合わせ方ではなく、突き合わせする形にしています。液晶モジュールの最小化とともに、この仕組みを採用することで、1~2mmのコンパクト化ができ、それが軽量化にもつながっています。さらに、QV8のアイソレーションキーボートは、RZやNXと違う形のものを採用しています。これはQV8で初めて採用したもので、キーボードと筐体の横幅部分の狭小化に貢献しています。

上田 アンテナもコンパクト化では苦労した部分です。アンテナの基板面積が減ると、アンテナ性能が落ちてしまいますが、天面側部分を樹脂だけでなく、板金をあわせて使うことで、アンテナ性能を高めるといった工夫をしています。これによって、基盤面積が大きい樹脂だけの他のモデルと同じアンテナ性能を実現しています。狭額縁化するなかでも、アンテナは上の方に設置することにこだわり、アンテナ性能を維持しています。

  • QV8の内部ファン。羽根の枚数や形を従来から改善して、クアッドコアCPUの放熱を行っている

  • アンテナは天板の一番上に配置

――QV8では、指紋センサーと顔認証対応カメラの2つの生体認証を搭載しました。その理由はなんですか。

上田 多段階認証をしたいというニーズへの対応を図ったのがひとつめの理由です。指紋認証と顔認証の両方の認証を入れることでセキュリティを強化できます。もうひとつは、QV8ではモダンスタンバイを採用していますが、スリープ状態からすぐに復帰できるせっかくの機能なのに、そこにパスワードが求められるというのでは、その良さが最大限に発揮できません。しかし、指紋センサーで認証すれば、セキュリティを確保しながら素早く復帰できます。モダンスタンバイは、QV8でターゲットとした人たちにとっては重要な機能のひとつです。これをより効果的に利用するために指紋センサーを追加しています。

  • QV8の顔認証対応カメラと指紋認証センサー

――バッテリー駆動時間は約10時間ですね。

上田 Lバッテリーを搭載して約19.5時間も駆動するSV8に比べると、駆動時間が短いという指摘があるかもしれません。一泊や長距離の出張の際には、アダプターやバッテリーを持って歩かなくては不安という声もあるでしょう。ただ、これもQV8の利用者を想定したものであり、ルート営業の人たちが一日持ち歩いても、安心して利用できるだけの連続駆動が可能です。次のお客様を訪問する前に、資料を作ったり、資料をみたりといったことをしても十分現場で活用できます。また、USB3.1 Type-Cに対応していますから、USBケーブルさえ持っていれば本体を充電できます。

オールマイティではないが、必要な人が確実にいる

――発売後の市場の反応はどうですか。

小林 非常に高い評判です。発売前に行ったWebによる先行予約は、従来製品と比べても約2倍に達しましたし、タッチアンドトライを開催したところ、実際にQV8に触った人が、前回のイベントに比べて1.9倍に増えました。ここからもこの製品に対する期待が大きいことがわかります。薄さに対する評価が高く、3:2のアスペクト比についても、自分で見るのも、相手に見せるのにも適しているという評価をもらっています。これは、この領域の製品を待っていたユーザーが多かった証ではないでしょうか。

上田 オールマイティの製品ではないことは認識していますが、この製品を待っていた人が明らかにいるということは感じています。私自身、作りたかったモノがつくれたという自信があります。長年、Let'snoteの開発に携わってきていますから、レットノートとしてどこにこだわらなくてはいけないかということは熟知しています。

小林 今回の製品では、バッグへの入れやすさも考えています。私は、ぜひ多くの人にカバンに入れて持ち歩いて欲しいと考えています。

上田 デザインモックを作ったときに、設計メンバーとデザインメンバーが、男女を問わず、自分がいつも使っているバッグを持ち寄って、カバンに入れやすいデザインはどれかという採点を行いました。ほかの要素にも、点数をつけて、トータルでバランスが取れたものを選びました。資料を見たり、資料を見せたり、会議室でも、立ったままでも使える新たなコンセプトのLet'snoteが完成したと思っています。まずはぜひ触ってもらい、その良さを体感してほしいですね。

  • 左から順に上田大氏、坂田厚志氏、小林俊夫氏