アップルから、“Pro”の名前を冠する新しい完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」が登場しました。従来のAirPodsとの大きな違いは、リスニング環境周辺の邪魔なノイズを消音してくれる「アクティブノイズキャンセリング」機能が付いたことです。iPhone 11 Proとペアリングして聴いた音質も含めて、AirPods Proの実力をレポートしたいと思います。

  • アクティブノイズキャンセリング機能を搭載するアップルの新しい完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」。高性能なノイズキャンセリング機能とバランスの良い音質が注目されています

    アクティブノイズキャンセリング機能を搭載するアップルの新しい完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」。高性能なノイズキャンセリング機能とバランスの良い音質が注目されています

アクティブノイズキャンセリング機能の恩恵を感じる鮮明なサウンド

2016年12月に登場した初代AirPods、品薄の状態が長く続くほどの大ヒットとなったのはご存じの通りでしょう。今年の3月には、アップルが独自に設計したワイヤレスオーディオ向けのApple H1チップを搭載し、ハンズフリーでの“Hey Siri”の操作に対応したほか、ワイヤレス充電ができるケースも用意してアップデートを遂げました。世界中で多くの音楽ファンが愛用するAirPodsの姉妹機として、アップルのワイヤレスイヤホンのラインアップに加わることになったAirPods Proは、新たにアクティブノイズキャンセリング機能を載せて遮音性能が飛躍的に高くなりました。

開放型のハウジングを採用した従来のAirPodsは、音の“こもり”が少ないクリアな中高域が楽しめることが大きな魅力です。ハウジングを密閉型とし、さらにノイズキャンセリング機能も搭載したAirPods Proは、どのようなサウンドを楽しませてくれるのでしょうか?

  • 左がAirPods Pro、右がAirPodsのイヤホン。「ステム」と呼ばれるスティック状の部分が少し短くなりました。耳元で安定する心地よい装着感も魅力的です

  • ハウジングの外側と内側に高性能なマイクを搭載したのがAirPods Proのポイント。リスニング環境周辺のノイズを集音・解析して、音楽だけを静かな環境の中でピュアに楽しめるのが、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載するAirPods Proならではの魅力です

  • 柔らかく耳にフィットするイヤーチップによるパッシブな遮音性能の高さも特徴として挙げられます

AirPods Proは、アクティブノイズキャンセリング機能をオンにした状態に加え、本体に搭載するマイクで周辺環境の音を取り込みながら音楽が聴ける「外音取り込み」の状態、さらに両方の機能を無効にした「オフ」の3つのリスニングモードを用意してます。ノイズキャンセリングと外音取り込みの両方をオンにすることはできません。メニューからいずれか片方を選択すると、もう一方が排他的にオフになります。

  • コントロールセンターから、アクティブノイズキャンセリングと外音取り込み、そして両方をオフにできる「ノイズコントロール」が選択できます

  • 設定アプリからBluetoothを開き、機器リストに並ぶAirPods Proを選択すれば、詳細な設定メニューに入れます

まず、アクティブノイズキャンセリング機能をオンにした状態で、Apple Musicで配信されている楽曲を聴いてみました。

女性ボーカルの艶っぽさと、細かなニュアンスもていねいに拾う再現性の高さは、従来のAirPodsから踏襲されていると感じます。ボーカルやピアノ、ギターなど、音楽のメロディラインを構成する音がとても鮮やかで活き活きとしています。ディティールの描写力も高く、楽器の音色もリアリティに富んでいました。

ノイズキャンセリング機能があると、屋外でのリスニング時には騒音でマスキングされてしまう、つまり聞こえにくくなりがちな高域・低域の音もしっかりと楽しめるようになります。高域の濃厚な余韻がボーカルに温かみを与え、鋭く弾力感あふれる低音のビートが音楽の土台を安定させます。AirPods Proで聴く音楽はとても肉付きが良く、聴き応えがあると感じました。

  • Apple H1チップによる安定した接続性能が得られるのも、AirPodsシリーズならではの魅力です

動画コンテンツを楽しむ時にも、ノイズキャンセリング機能の効果が実感できます。特に、映画やドラマはダイアローグ(=セリフ)が聞き取りづらいとストレスを感じてしまいます。AirPods Proは、人の声から細かな効果音まで、映像系コンテンツに含まれるサウンドを余すところなく描き出せるイヤホンです。音像もこじんまりとせず、広々とした空間に力強く立体的に定位します。

アクティブノイズキャンセリング機能があると、音楽再生のボリュームを過度に上げなくても心地よいバランスで聴けるようになります。AirPods Proはユーザーの耳の健康を守るためにも一役買えるイヤホンといえます。

もう1つの新機能「外音取り込み」はどう使う?

外音取り込み機能をオンに切り替えてみると、ノイズキャンセリングモードで聴いていた音楽のバランスが一切ブレることなく、周辺の環境音が自然と耳に入ってきます。開放型のAirPodsよりも環境音が明瞭に聞こえる理由は、AirPods Proの内蔵マイクを使って環境音をモニタリングしているからです。それでいて、マイク由来のノイズや音のふらつきもないので、音楽コンテンツへの没入感が損なわれることがありません。

もし、静かな自宅やオフィスでAirPods Proを身に着けて音楽を聴くのであれば、ノイズキャンセリングと外音取り込みの機能を両方オフにして使ってもいいかもしれません。音のバランスはまったく崩れないし、イヤホン単体で連続して音楽を再生できる時間が約4.5時間から約5時間へと、少し伸びるからです。

  • ステムにあるくぼみを長押しする操作をノイズキャンセリング機能のコントロールに割り当てることも可能

筆者が感じた音質とノイズキャンセリング機能のインプレッションをまとめると、新しいAirPods Proは従来のAirPodsと同様に、音楽ソースにイヤホン由来の邪魔な色を乗せることなく、素直でバランスの良いサウンドを楽しませてくれると感じました。

ただし、ノイズキャンセリング機能が付いたことによって各音域のサウンドはより力強く、立体的に主張してくるような手応えも得られるものと思います。特に、地下鉄やバス、飛行機など、大きめの騒音に囲まれて音楽を聴く場面では、ノイズキャンセリング機能のありがたみが実感できるのではないでしょうか。

一方で、比較的静かな場所で音楽を楽しむ際には、従来のAirPodsのクリアで音抜けの良いサウンドがより心地よく感じられるかもしれません。AirPods Proの発売後も、従来のAirPodsは継続販売されます。まだAirPodsシリーズを使ったことがないという方は、音や装着感の好みで気に入った方を選んでから、のちにもう一方の製品を手に入れ、リスニングシーンによって使い分けることができればベストだと思います。

  • Apple Watchからノイズキャンセリングのコントロールも可能。現在の状態がひと目で確認できるので便利です

驚くべきは高機能なのに「小さく・軽い」こと

AirPods Proは、精度の高いアクティブノイズキャンセリングや外音取り込みなどの機能を搭載していながら、本体をコンパクトなサイズにまとめたことがもっとも画期的なことであると筆者は思います。

従来のAirPodsと比べてみても、イヤホン本体と充電ケースのサイズはそれほど大きく変わっていません。外出の際には手荷物を少なく抑えたいけれど、スマホとイヤホンは欠かすことなく持ち歩きたい、という人にはAirPodsシリーズが最良の選択肢になるでしょう。

  • 左がAirPodsの充電ケース、右がAirPods Proの充電ケース。縦長横長の違いはありますが、サイズはほとんど変わりません

  • AirPods Proも、イヤホンがマグネットで充電ケースに吸着します

ケースには充電用のLightning端子が搭載されていますので、iPhoneユーザーは外出時に1本のLightningケーブルを持ち歩くだけで双方のデバイスを充電できるのがありがたいところ。もちろん、AirPods Proもワイヤレス充電に対応していますので、充電台にポンと置くだけで充電ができるのも見逃せません。

  • ケースの充電にはLightningケーブルを使います。フル充電にすると、24時間分の連続再生が可能になる電力を蓄えられます

IPX4相当の防水・耐汗性能も見逃せない要素だ

アクティブノイズキャンセリング機能を搭載するポータブルオーディオ機器は、もっともポピュラーなヘッドバンド型のヘッドホンと、左右の本体がケーブルでつながっている肩乗せスタイルのワイヤレスイヤホンがあります。完全ワイヤレスイヤホンについては、まだ数えるほどしか製品がありません。IPX4相当の防滴・耐汗性能を備え、世界中で入手できるアクティブノイズキャンセリング機能付き完全ワイヤレスイヤホンは、実はAirPods Proが初めてのモデルになりそうです。

雨が降る天候の悪い日や、汗を多くかく夏の日、そしてスポーツで体を動かしながら音楽を楽しみたい場面で、肌に触れるケーブルからも解放されて伸び伸びと音楽再生が楽しめるAirPods Proは、いま最も革新的なポータブルオーディオ製品のひとつといえます。3万円のイヤホンと聞くと一瞬ためらうかもしれませんが、必ずや満足できる買い物になると思います。

山本敦さん

著者プロフィール
山本敦

ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ハイレゾやAI・IoTに関わるスマートオーディオ、4KやVODまで幅広いカテゴリーに精通する。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。