感動体験はハイレゾを超える!? 新音楽サービス「360 Reality Audioとは」
2019年のCESで発表された、ソニーの新しい立体音響技術を使った音楽配信プラットフォーム、「360 Reality Audio」のデモンストレーションも体験できました。PCアプリケーションを使って、「オブジェクト」と呼ばれるサラウンド音源を立体的に配置した音源を、一般的なスマホとヘッドホンを組み合わせるだけ。特殊な機器をそろえなくても、手軽に没入感あふれるサラウンドを楽しめるところが、この技術の魅力です。
でも実は、ヘッドホン・イヤホンについてはソニーの製品を使うと「さらにハイグレードな立体サウンド」が楽しめるようになります。IFAの会場では、ソニーの人気ヘッドホン「WH-1000MX3」を使って、360 Reality Audioをどのように楽しむのか、デモ音源の試聴を含めて体験できました。
まず、スマホにソニーの専用アプリをインストールして、アプリのメニューをたどって自分の耳画像をセルフィ撮影します。実際には、ソニーのワイヤレスヘッドホン・イヤホンに対応するモバイルアプリとしてリリースされている、「Sony Headphones Connect」を使うことになるそうです。耳画像は、360 Reality Audioが理想とする複数のスピーカーを部屋に置いて聴く立体音響空間を、ヘッドホンやイヤホンによるポータブル再生でシミュレーションするためのデータとして使います。
ユーザーの耳の形と、使用するソニーのヘッドホン・イヤホンの情報は、アプリを通してクラウドサーバーに送られます。すると30秒前後で解析が行われて、ユーザーの再生条件に合わせて最適化された設定データが送信されてきます。このデータを、360 Reality Audioの音源を配信する音楽サービス(Deezerなど)のアプリに読み込んで、セットアップは完了です。
IFA会場ではデモ音源を試聴しました。自身の周囲360度に鮮明なサラウンド音源が浮かび上がり、縦横無尽に移動する様子が楽しめます。ハウジングが密閉されているはずのヘッドホンなのに、音楽ライブの音源で自然な開放感が味わえる不思議な体験。
実際に360 Reality Audioの醍醐味を満喫するためには専用の音源が必要になりますが、欧州ではTIDALやDeezerなどのサービスが音源の製作を進めています。ソニーはいま日本でも、360 Reality Audioの音源を配信するパートナーと一緒に準備を進めています。IFAでは360 Reality Audioの導入時期は発表されませんでしたが、完成度の高いデモンストレーションを体験してみると、正式発表の日はそう遠くないように感じられました。
オーディオは堅牢なソニーのラインナップが出そろった
IFAでソニーが発表した新製品のコンセプトについて、ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツのV&S事業部 企画ブランディング部門長、黒住吉郎氏に話を聞くことができました。
Android OSを搭載するウォークマン、NW-ZX507とNW-105の登場によって、Spotifyなど音楽配信サービスの音源がいい音で楽しめるようになることは別記事ででもお伝えした通りです。黒住氏は、ウォークマンが再びオープンなプラットフォームを獲得したことによって、「パーソナルエンターテインメントの可能性が大きく広がる」と話します。
「技術的な発展性、多様なサービスを柔軟にサポートできることを考えれば、ウォークマンもAndroidをプラットフォームにすることが大きなメリットになると思っています。対応力が高まるぶん、また新しい仕掛けも用意したい」と、黒住氏も今後の期待感を語っていました。
上記の超高級デスクトップスピーカー「SA-Z1」が発表され、ヘッドホンにはh.earシリーズの新製品も充実します。黒住氏はソニーがオーディオの総合ブランドであるからこそ、幅広いラインナップをそろえて、あらゆる音楽ファンのニーズに応えることの大切さを説いています。
「オーディオのビジネスに奇策はないと私は思っています。お客さまから期待されている商品を、適切なタイミングを計りながら提供できることがソニーの強みです。今年のIFAでは土台のしっかりとした商品ラインナップのピラミッドをお見せすることができたのではないでしょうか。
先進的な機能とプロダクトデザインなど、ソニーの製品には様々な魅力があると自負しています。でもやはり、すべてソニーのオーディオ商品の原点といえる魅力は高音質であることを、変わらずアピールしていきたいと思っています」(黒住氏)