ソニーが7月末に売り出したα用の超望遠ズームレンズ「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」、200~600mmの広い範囲をカバーしていること、このクラスでは珍しくインナーズーム機構としたこと、比較的手ごろな価格設定としたことなどが写真ファンに注目されています。落合カメラマンも当然ながら目をつけていましたが、氏は日ごろから100-400mmのG Master超望遠ズームを愛用していることもあり、ズームレンジがかぶる200-600mmの登場にいささか戸惑いを隠せないご様子……。

100-400mmとはキャラクターが異なる

ここは、まず自らの立ち位置を明示しておくべきだろう。ええと、契約書はありませんね。闇営業に関しては……フリーカメラマンなんで日常の活動ほぼすべてがそんなようなもんです、ハイ。で、原稿料が1円だったことは幸いにしてありませんけれど、愛車の下取り査定欄に記入された金額が100円だったことはあります(涙)……って、そんな話をしにきたんじゃなーい! ソニー「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS(以下、200-600mm)」に対して抱くこととなった「参ったね、こりゃ」「どうすべぇ」「こいつはいっそのこと……」などなどの思いをここで吐露するつもりなら、まずはどんな立ち位置からこのレンズを見ているのかをハッキリさせておくべきだと思ったっつうハナシである。

  • ソニーが7月末に発売した超望遠ズームレンズ「FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」(SEL200600G)。実売価格は税込み27万円前後だが、主要な量販店では強い品薄の状態が続いている

というワケで、ここで最初に明確にしておかなければならないのは、「私はFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(以下、100-400mm)を所有している」という事実。しかも相当、気に入っている。

  • FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

  • FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS

すなわち「200-600mmと100-400mmのどちらを買うべきか」で悩むことはないのだ。目の前にあるのは「買い足し」「買い替え」「静観」3つの選択肢だけ。そこが、ひょっとしたら皆さんとはちょっと違うかもしれない。でも、もしアナタが100-400mmを所有していて、しかもけっこうちゃんと200-600mmを使う機会に恵まれたとするならば、たぶんドラマ「もう誰も愛さない」の吉田栄作のごとく「うぉぉぉーーーっ!!」と叫びながら頭を抱えることになるはずだ。

なにゆえそんな事態に陥るのか? 実は両レンズ、キャラクターの作り分けが実に見事であり、どちらかを所有していればソレで十分な満足が得られるのかといえば、幸か不幸かそんなコトはナイからである。100-400mmを持っていても200-600mmが欲しくなるし、200-600mmだけで話を済ませられるのかといえば、それもムリ。ぶっちゃけ、両方欲しくなっちゃうのだ。

もちろん、おもに撮る被写体や撮り方にもよるので一概にはいえない。でも、200-600mmを使っていると短焦点側にもう少しの広がりが欲しくなることがけっこうある。200mmの画角って本格的望遠の世界だからねぇ。

  • FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS(200mm)

  • FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS(600mm)

  • FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(100mm)

  • FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(400mm)

  • FE 200-600mm F5.6-6.3G OSSとFE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSの画角比較。好みによって見方が違ってくると思うけれど、個人的にはテレ端の画角差もさることながら短焦点側の「広さ」の違いが相当にデカいと感じている。つまり、汎用性に優れるのは、圧倒的に100-400mmなのだ。だからこそ、どちらを選ぶのかが悩ましい。100-400mmではなく70-200mmクラスを所有しているなら話は簡単なのだが……

大きさ重さに関しても、「テレ端600mm」にふさわしい「ドンと長くてズシリと重い」仕上がりには相応の覚悟が必要だ。ボディシルエットはどちらかといえばヒョロ長系だし、製品写真ではなぜかずいぶん小さく見えることが多いのだけど、200-600mmは100-400mmよりも明らかに「デカ&重」であり携帯性は大きく劣る。これも、まぁ、仕方のないところだけれど。

  • 何はなくとも超望遠600mm。開放F値が暗いとはいえ、寄って撮れば大きなボケを得ることはまったく難しくない。また、玉ボケの変形にさえ気を配っておけば、ボケは総じて柔らかく素直であるとの判断も十分に可能だ(600mm、ISO3200、1/2000秒、F7.1、-1補正)

  • 使い方は人それぞれだし好みもイロイロ。なので、レンズの使い方に最適解みたいなものはナイも同然だと思っているのだけど、個人的にはこのレンズ、基本は「600mmレンズ」であり、それに加え「必要に応じチョイと引ける(画角を広くして撮れる)」機能が備わっていると捉えるのがもっともしっくりきた(600mm、ISO2000、1/2000秒、F6.3)

  • シチュエーションによっては、これよりもさらに玉ボケ部分の口径食が目立つことがある。しかし、玉ボケに頼る絵柄でなければさほど気にはならず、このレンズの高い機動力と描写力に惚れているのであればアバタもエクボに追い込むことにも造作はない(600mm、ISO2500、1/1000秒、F6.3)

  • 都会にある小さな自然の片隅で遭遇した黒と白の口喧嘩。青鷺の文字通りの怒髪天を突く姿は初めて見た。曇り空をバックに+1.3EVの露出補正を加えても十分なコントラストが確保されていることからもわかるとおり、かなりデキるレンズである(600mm、ISO1250、1/1000秒、F6.3、+1.3補正)