キヤノンが2019年3月に発売した小型&低価格のフルサイズミラーレス「EOS RP」が堅調に推移しています。調査会社のBCNが6月7日に発表したフルサイズミラーレスの販売台数シェアでは、ソニーの「α7 III」に続く2位を獲得。α7 IIIとの差は大きいものの、実力派ぞろいのフルサイズミラーレスで2位となったのは注目できます。

改めて、最大のライバルといえるα7 IIIとの比較を交えつつ、EOS RPのポイントを「外観編」と「実写編」の2本立てでレビューしていきましょう。

  • 標準ズームレンズ「RF24-105mm F4 L IS USM」を装着したEOS RP。実売価格は、EOS RPのボディが税込み16万円前後、RF24-105mm F4 L IS USMが税込み12万8000円前後

EOS Kiss X9iよりも軽いボディ

EOS RPは、有効2620万画素のフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラです。注目ポイントは、気軽に持ち運べる小型軽量ボディと、フルサイズミラーレスでは意欲的な低価格を実現したこと。まず、コンパクトに仕上がった外観をチェックしていきましょう。

EOS RPを手にした第一印象は、「フルサイズセンサー搭載なのにボディが小さくて軽い!」ということ。外形寸法は幅132.5×高さ85×奥行70mmで、バッテリーとメモリーカードを含めたボディ重量は約485g。同社の売れ筋APS-C一眼レフ「EOS Kiss X9i」は、バッテリーとメモリーカードを含めた重さが約532gなので、なんとEOS Kissよりも軽いのです! フルサイズEOSでは最小・最軽量のボディこそが、EOS RPの一番の魅力といってよいでしょう。

  • 約2620万画素のフルサイズCMOSセンサーを搭載。フルサイズでの撮影(6240×4160ピクセル)のほか、約1.6倍の望遠になるクロップ撮影(3888×2592ピクセル)もできます

  • 右側面の端子カバー内には、リモコン端子やデジタル端子、外部マイク入力端子、HDMIミニ出力端子、ヘッドフォン端子を装備

  • グリップ部には、手触りのいいラバー素材を配置。グリップの底部には、バッテリー室とSDカードスロットを備えています

  • 天面には電源スイッチのほか、モードダイヤルやメイン電子ダイヤル、マルチファンクションボタン、動画撮影ボタン、マルチ電子ロックスイッチなどを搭載

  • EVFは、0.39型/約236万ドットの有機ELパネルを搭載した電子ビューファインダーを採用。ファインダー倍率は約0.70倍

  • 背面には、3型/約104万ドットの液晶パネルを採用。上下左右に回転するバリアングル式で、タッチ操作にも対応します

  • キットレンズとして組み合わされる単焦点レンズ「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」を装着すると、ボディの小型軽量ぶりが際立ちます

  • EOS RPのボディは背が低いため、筆者のような手の大きなユーザーの場合、構えたときに右手小指が余るのが気になるかもしれません。オプションのエクステンショングリップを装着すれば、ホールド感を高められます

  • シャーシはマグネシウム合金製で、外装はポリカボネート樹脂素材。高級感というほどではありませんが、特に安っぽい印象も受けません。低価格ながら防塵防滴構造であることはうれしいポイントです

  • 上位モデルの「EOS R」とは異なり、一眼レフで一般的な撮影モードダイヤルを備えており、とっつきやすくなっています。EOS Rで採用したマルチファンクションバーやジョイスティックは搭載していません。AF測距点の移動には、液晶タッチまたは十字キーを使用します

  • レンズマウントは、ミラーレス専用に設計された大口径のRFマウントを採用。専用のRFレンズのほか、マウントアダプターを介して豊富なEFレンズやEF-Sレンズが使用できます

  • EOS Rなどほかのフルサイズミラーレスと同じく、フラッシュは搭載していません。フラッシュ撮影を行う場合は、天面のホットシューに外部フラッシュを装着する必要があります

  • メニュー画面のUIは、これまでのEOSシリーズを継承。レンズの光学補正では、レンズの設計データなどに基づいて各種収差や回折現象を補正する「デジタルレンズオプティマイザ」(DLO)が選択できます

  • カスタムメニューでは、各種ボタンやダイヤルの割り当て機能を自分好みに細かく変更できます

EOS RPとソニーα7 IIIで撮り比べる

EOS RPのライバルとなるのが、ソニーのフルサイズミラーレス「α7 III」です。α7 IIIは2018年3月の発売以来、常に販売ランキングの上位を維持し続けている人気機種。EOS RPに比べると価格はやや高めですが、フルサイズミラーレスの入門用に最適という点で、まさにライバルと呼べる存在です。この2台を使い、同一シーンを撮り比べてみました。

  • 左がソニーの「α7 III」で、右がキヤノンの「EOS RP」。24-105mmの標準ズームレンズを装着した際のサイズ感はほとんど同じですが、EOS RPはボディの高さが低いことが特徴のひとつ。バッグなどへの出し入れがスムーズにできます

どちらも、ディテールまでくっきりと描写する表現力を確認できますが、解像という点ではローパスフィルターの効果が弱めであるα7 IIIが一段上といえそうです。発色については、全体に青っぽい色合いになっているα7 IIIに対して、EOS RPは見た目の印象に近い、より自然な色合いだと感じました。

  • α7 IIIで撮影。絞り優先AE(F8 1/640秒) ISO100 WB:太陽光 焦点距離:24mm レンズ:FE 24-105mm F4 G OSS

  • EOS RPで撮影。絞り優先AE(F8 1/640秒) ISO100 WB:太陽光 焦点距離:24mm レンズ:RF24-105mm F4 L IS USM

高感度撮影時はノイズ処理の傾向に違いが

続いて、高感度撮影時の画質をチェックしました。ノイズリダクションは、両機とも初期設定の「標準」を選択していますが、その処理の傾向には違いが見られます。α7 IIIは、ISO12800を超えるあたりからザラザラとしたノイズが見られますが、細部のシャープネスは維持できています。EOS RPは、ISO12800や25600でもノイズはあまり目立ちませんが、その分細部がややつぶれ気味です。どちらがよいかは、好みが分かれるところでしょう。

  • α7 III(ISO6400)

  • α7 III(ISO12800)

  • α7 III(ISO25600)

  • α7 III(ISO51200)

  • α7 III(ISO102400)

  • EOS RP(ISO6400)

  • EOS RP(ISO12800)

  • EOS RP(ISO25600)

  • EOS RP(ISO51200)

  • EOS RP(ISO102400)

個人的には、ふだん使っているα7 IIIの高解像に満足している一方で、被写体によってはモアレに悩まされることも少なくないので、EOS RPのしっかりとしたローパスフィルターの効果は扱いやすいと感じます。次回の実写編では、EOS RPで撮影した写真をより詳しく見ていきましょう。