6月3日(現地時間)、米Apple社の開発者向けカンファレンス「WWDC19」が開催された。既報の通り、基調講演ではハードウェアの新製品や、各種OSの最新版などについて多数の発表が行われたが、それぞれの機能についての分析と所感をお届けしたい。

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AppleTVとtvOS

今秋に開始される有料配信サービス「Apple TV+」の宣伝で始まった基調講演では、まずApple TV向けのOS「tvOS」の新機能が紹介された。次期OS「tvOS 13」では、マルチユーザー環境がサポートされる。これは操作するユーザーにより、番組履歴や写真、音楽ライブラリなどが切り替わり、よりパーソナライズされた体験ができるというもの。

  • ユーザーの切り替えはコントロールセンターから行う。どうせなら音声入力でユーザーを認識して自動切り替えしてくれたらいいのだが、そこまでは至っていない模様

我が家でもAppleTVは活躍中だが、確かに履歴が家族でグチャグチャになっていると使いづらい。以前からマルチユーザーに対応するか、一家全体のアカウントに対応してほしいと思っていたのだが、その願いが叶った形だ。

一昨日、日本での発売が発表されたGoogleのスマートディスプレイ「Nest Hub」でもマルチユーザーに対応した「Voice Match」が利用できるが、Appleにとっては新たにスマートディスプレイ機器をリリースするよりも、「みんなが集まる場所にあっていつも表示されているTV」をスマートディスプレイ替わりにするのが効率的だという考えなのだろう。

また、ゲーム利用時のコントローラーとしてPlayStation 4やXbox OneのBluetoothコントローラーを正式にサポートすることも大きなニュースだ。Apple TV 4KはSoCにiPhone 7と同世代のA10X Fusionプロセッサーを搭載しており、ゲーム機としての性能は決して低くない。Appleが今秋開始するゲームのサブスクリプションサービス「Apple Arcade」推進の上でも、ゲーマーが使い慣れたコントローラーが使えるというのは一助になるだろう。

  • PlayStation 4のDualShock4コントローラーのサポートが発表されたときの喝采ぶりはWWDCでもトップクラスだった

Apple WatchとwatchOS

スマートウォッチのApple WatchとそのOS、watchOSについては、次期OS「watchOS 6」で、Apple Watch単独でのアプリインストールが可能になる旨が発表された。発売当初の「Watch側はインターフェースのみで処理はリンクしたiPhoneで実行する」という時代から比べると、OSの最適化が進み、ハードウェアの性能も格段に向上したということだろう。また、単独で通信機能を持つCellurarモデルが出ているのも大きい。

  • Apple Watch単独で動作するアプリが許可され、App Storeも完備。アプリ内購入も単独で行えるなど、ほぼiPhoneと同等になる

そもそも本格的な5G時代になれば、高速・低遅延の通信が常時利用できるようになる。スマートウォッチ単体で処理速度が足りない場合でも、エッジコンピューティングで複雑な処理の結果が素早く得られるようになる。こうなれば、もはやスマートフォンに縛られる必要もなくなるわけだ。単独でのアプリ対応は、こうした時代を見据えての準備のように感じられた。

また近年Appleが力を入れているヘルスケア分野では、女性の月経サイクルの管理機能が付くようだが、基本的に自己申告制のようだ。あるいは機能から逆算して、次期Apple Watchには体温計が搭載され、自動的に基礎体温を測ってくれる機能が付くのかもしれない。体温の計測は体調管理の基本だけに、個人的にはこの思いつきが実現することを期待したい。

  • 女性のユーザーにとっては心強い機能の追加となるだろう