Appleは米国時間4月30日、2019年第2四半期決算(2019年1~3月)を発表した。売上高の減少幅は予想よりも小さく、株価はいったん持ち直して時価総額1兆ドルを上回る場面もあった。だが、この決算にも関係する「別の要因」で、5月上旬の原稿執筆時点で株価は200ドル前後の水準まで下落した。

  • 松村氏が「別の要因」としているのは、5月上旬からトランプ大統領が再び仕掛けてきた米中貿易戦争。米国企業であるアップルも巻き込まれ、大きなダメージを負うとみられている

売上高は5%減にとどまり一時安堵するも……

2019年の年明け早々、Appleは当初見込みよりも売上高が大きく減少するとして「利益警告」を表明する事態となった。Apple自身も、2019年に入ってからの利益の減少は予測していたものの、これまで右肩上がりで売上高を拡大し続けてきたAppleにとっての「転換点」との見方が強まったのは事実だ。

2019年第2四半期の売上高は580億ドルで、前年同期比で5%減の水準となった。業績の見通しでは弱気の見方が継続していたが、いくぶん緩やかな減少に落ち着いた。

国別に見ると、北米市場が256億ドルで3.2%増、欧州市場は131億ドルで5.8%減、アジア太平洋地域は36億1500万ドルで8.7%減、日本市場は36億ドルで10%減、そして中国市場では21.5%減の102億ドルだった。米国は引き続き好調だったが、Appleの米国外売上高は61%を占めており、特に第3の市場である中国の落ち込みが激しかったことが分かる。

  • 北米市場は好調だったものの、それ以外の地域は売り上げが落ち込んでいる

Appleによると、中国市場では4月に物品税の減税があったほか、下取りなどのインセンティブを強化していた。さらに、いったんは米中貿易戦争への懸念が遠のいたことから、状況が最悪だった11~12月に比べて良好なパフォーマンスを示していると、決算発表の電話会議でTim Cook CEOが述べている。

ただし、トランプ大統領が5月上旬に「関税を25%に引き上げる」と突如ツイートしたことに端を発して、再び米中の貿易戦争の緊張が高まり、2,000億ドル分の輸入品に対する関税の引き上げが決まった。そのような状況のなかで、Tim Cook氏が決算発表の電話会議の時点で、あるいは米中問題について常に見せていた楽観的な見方とは、大きく状況が変わってしまったといえる。

厳しい状況のiPhone、サービス部門へも影響

2019年第2四半期、きわめて厳しい結果となったのがiPhoneだ。iPhoneは、Appleの売上高の6割を占める大きな存在だが、前年同期比で17.3%減の310億5100万ドルだった。Appleによると、iPhoneの不振によって製品全体の売上高は9%下落したという。

Apple自身はiPhoneの販売台数を公表しなくなったが、IDCの調査では該当する3カ月間の出荷台数は3,640万台で、前年同期比で30.2%減。7,190万台のSamsungや5,910万台のHuaweiと大きく差を付けられ、3位に沈んだ。

  • いまひとつ売り上げが冴えないiPhone

スマートフォンのビジネスから挙げる利益は依然としてトップだが、Appleはサブスクリプションなどサービス部門の拡大を目指している。その基盤となるiPhoneの販売が落ち込むことは、Appleとしては静観できない状況なのは間違いない。

そもそも、スマートフォンは市場の成熟を受け、世界全体で出荷台数が6%も減少している。そのなかで特に大きく数字を落としているのがAppleとなっている。中国市場での不振も大きな要因だが、高付加価値化を進めているだけでなく、「長持ち」を製品の特徴の一部に加えるなど、より長い買い換えサイクルへの許容にシフトしていることも影響していると考えてよいだろう。

完全復活のiPad、まだまだ伸びる理由

iPhoneを横目に好調に推移しているのがiPadだ。2019年第2四半期の売上高は、前年同期比で21.6%増の48億7200万ドルとなった。Tim Cook CEOは「過去6年間で最も強い成長を見せている」と、iPadの絶好調ぶりをアピールする。

第2四半期にあたる2019年1~3月は、ハイエンドの「iPad Pro」シリーズ、ローエンドの「iPad」「iPad mini 4」の3つのモデルで勝負してきた。3月末には、iPhone XSと同じA12チップを搭載しながらミドルレンジの価格に設定された「iPad Air」「iPad mini(第5世代)」を追加したが、登場のタイミングを考えると今回の21.6%の成長への貢献は大きくない。成長をけん引したのは、iPad Proと廉価版iPadの2製品だ。

iPad Proは、iPadシリーズとしては久しぶりの全面的なデザイン刷新を実施し、iPhone Xで登場したTrueDepthカメラによる顔認証と、全画面デザインのLiquid Retinaディスプレイを搭載。充電や収納に難儀していたApple Pencilも、磁石で側面に装着してワイヤレス充電できるスタイルへと進化した。

  • iPadの成長をけん引しているiPad Pro

圧倒的な処理性能の高さも相まって、モバイルノートPCをiPadに置き換える動きが、ビジネスやクリエイティブの分野で本格的に広がりつつある。特に、iPadでネイティブ動作するPhotoshopをAdobeが投入することもアナウンスされており、特にクリエイティブ用途では今後もiPadへの投資に期待できる。

決算の電話会議でTim Cook CEOは、廉価版iPadの好調さも示していた。紙のマニュアルの代わりにiPadを導入した航空会社では、マニュアルのメンテナンスを要因とした遅延が半減したという。ほかにも、大規模企業の従業員向けプラットホームとしてiOSが成長している点を挙げ、ビジネス市場でのiPadの拡がりが継続している点もアピールした。